公益社団法人土木学会


平成25年度認定
覆蓋付緩速ろ過池(春光台配水場)
旭川市 竣工年:1913(大正2)年(1968(昭和43)年配水池へ改修)
覆蓋付緩速ろ過池(春光台配水場)は、建設当時は日本最北の浄水施設であり、美しい煉瓦積アーチの覆蓋を設けたろ過池は、極寒地の水道施設の礎となった貴重な土木遺産であります。

 旭川市では1902(明治35)年に、現在でも気象庁の観測史上最も低い気温であるマイナス41度を記録しています。この寒さを避けるため、水道施設には美しいアーチを描くレンガの覆いが被されました。さらにその上に土を60cm盛り、零下の外気温をシャットアウトする仕組みです。建造当時は日本最北の水道施設であり、北を守る陸軍第七師団に衛生的な水を供給する緩速ろ過池でした。戦後に旭川市の管理となってから配水池に改修され、現在に至っています。設計者である井上二郎は東京帝国大学土木科出身で、千葉県松戸の柳原水閘(やなぎはらすいこう)をレンガ造りで設計しています。1908(明治41)年に陸軍技師になり、ここを担当しました。
 完成後100年を越えましたが、覆いの上に土が被さる地中構造物となっていることから、凍結融解による劣化が無く、構造解析結果からも、アーチ部が引張力を生じない安定した形状であり、外壁や覆いには現在でも、十分な耐力があることが確認されています。コンクリート部も所要の強度が発現しており、無筋コンクリートであるため鋼材の腐食に起因する耐力低下の懸念がありません。明治期の設計、施工能力の高さを現代に証明する土木遺産です。


2012(平成24)年 構造診断時写真


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北海道選奨土木遺産カード : No.31 覆蓋付緩速ろ過池(春光台配水場)

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