海岸域は,古くから自然公物としてさまざまな目的で利用されてきた.近年では,レジャーやスポーツ,環境学習の場としての利用も急激に増加し,今後は海岸域でさらに高度かつ多様な活動が展開されるものと予想される.このような背景のもとで平成11年に海岸法が改正され,「防護」に加えて「環境保全」と「公衆の利用」が海岸整備の目的に加えられた.このような状況のなかで,平成13年12月には兵庫県明石市大蔵海岸で,父親と散策中の女児が砂浜に隠れて形成されていた侵食穴に落ちるという事故が発生した.同事故に関して海岸工学委員会では,大蔵海岸陥没事故調査小委員会を設け,事故の原因究明を実施したところであるが,同事故を機に,海岸施設の安全性について一般的に議論する必要があると考え,小委員会を設置することとした.
小委員会活動は,6回の会合を経て平成16年1月に終了し,議論の結果を海岸施設の利用者の安全性に関する提言書(公開中)に整理した.「提言」では海岸施設を,「利用を前提としない施設」,「利用を前提としないが利用に配慮すべき施設」,「利用を前提とする施設」に分類し,より多くの人々が海岸の豊かさや海岸利用の楽しさを亨受できるよう施設分類に応じた施設の管理を行うことが重要であること,および,その実現には情報提供などのソフト面での対応や関係諸機関の協働体制を確立することが必要であることが謳われている.
河田恵昭(京都大学防災研究所,小委員長)
佐藤愼司(東京大学,幹事長)
磯部雅彦(東京大学)
伊藤 真 ((株)法学館/伊藤塾)
井上雅夫(関西大学)
今村 努 (文部科学省)
内山幸男(朝日新聞社)
小峰 力 (日本ライフセービング協会)
清水琢三(五洋建設(株))
高山知司(京都大学防災研究所)
山本善明(航空評論家)
- 平成15年1月7日(火) 第1回海岸施設の利用者の安全性に関する研究特別小委員会
- 小委員会の趣旨説明について
- 大蔵海岸砂浜陥没事故の説明
- 新潟海岸の事例紹介
- 今後の小委員会の進め方について意見交換
- 平成15年4月3日(木) 第2回海岸施設の利用者の安全性に関する研究特別小委員会
- 新聞記事抽出した海岸の事故事例の紹介
- 海水浴場で起きた溺水事故事例の紹介
- 事故事例についての意見交換
- 平成15年7月3日(木) 第3回海岸施設の利用者の安全性に関する研究特別小委員会
- 河川における安全管理の取り組みの紹介
- 鶴見川の安全対策事例の紹介
- ライフセービング活動の紹介
- 海岸施設の利用者の安全性に関する提言書のとりまとめ方向性の審議
- 平成15年9月10日(水)第4回海岸施設の利用者の安全性に関する研究特別小委員会
- 港湾における利用者等安全対策の紹介
- 防波堤の利用実態の事例紹介と利用者の安全性に関する論点整理
- 海岸施設の利用者の安全性に関する提言書の一次試案についての審議
- 平成15年11月21日(金)第5回海岸施設の利用者の安全性に関する研究特別小委員会
- 海岸施設の利用者の安全性に関する提言書の二次案についての審議
- 平成16年1月13日(金)第6回海岸施設の利用者の安全性に関する研究特別小委員会
- 海岸施設の利用者の安全性に関する提言書の最終案についての審議
問い合わせ先
本ページで公開している「提言書」および小委員会活動に関する問い合わせは佐藤愼司(東京大学社会基盤工学専攻,同小委員会幹事長)までお願いします.
Safety on Public Use of Coastal Structures, Coastal Engineering Committee, JSCE, 2004-2-14