新潟県中越地震被害調査特別委員会
委員長 濱田政則(早稲田大学教授)
- 災害速報 平成16年新潟県中越地震災害緊急調査団
平成16年新潟県中越地震被害調査報告書
ISBN 4-8106-0545-0
発行年月 2006/3
版型 CD-ROM
[目次]
新潟県中越地震被害調査報告書刊行にあたって
2004年10月23日に新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。死者46名(2005年6月2日現在)、全壊家屋約3200棟に達するなど、我国としては1995年の兵庫県南部地震以来の甚大な地震災害となった。
土木学会は直ちに災害対策本部を設置し、地震工学委員会委員を中心に小長井一男東京大学教授を団長とする第一次調査団を被災地域に派遣して、土木構造物の被害状況と被害原因の解明等の調査を行った。
土木学会関東支部も本部調査団と調整を図りつつ、山田正中央大学教授を団長とする調査団を派遣、堤防被害など河川の被害を中心とした調査を行った。さらに、中越地震による災害が、地方都市と山間地を含む地域の直下型地震災害であり、加えて新幹線の脱線などの新しい形の災害形態を含むものであることに鑑み、社会的側面や防災のための総合的提言のため、家田仁東京大学教授を団長とする第2次調査団を派遣した。
それぞれの調査団は独自に調査報告書をまとめ、既にこれを公表している。本報告書は、これら土木学会が現地に派遣した3次にわたる調査団の調査結果を総合化したものである。
新潟県中越地震は、活褶曲地帯に発生した直下型地震であり、活断層の評価や長期間にわたって発生した多くの余震とそれらによる強い地震動などの地震学的課題、地すべり地帯における多数の自然斜面の崩壊や河道閉塞などの地質学・地盤工学的課題、および震災後の困難な避難生活によるストレス死、さらには新幹線の走行安全性など社会的課題等多くの今後取り組むべき課題を提起した。
一方で、兵庫県南部地震の教訓をもとに見直されて来た各種の対策、すなわち鉄道橋梁をはじめとする構造物の耐震補強、ライフライン事業体間における相互援助体制、高密度に配置された地震計による震度情報などの有効性が示された地震でもあったと考えられる。
東海地震、東南海・南海地震の逼迫性は以前より指摘されている。また、中央防災会議の専門調査会議は首都圏直下地震の危険性が高まりつつあることを指摘している。これら将来の地震による人命と財産の損失を軽減するために万全の準備を進めることが土木技術者に課せられた喫緊の責務であると考えられる。本報告書が我国さらには世界の地震災害軽減のために資することを祈念している。