JSCE
土木学会

教育企画・人材育成委員会 男女共同参画小委員会

◇研究討論会「考えよう!土木技術者のワークライフバランス」を開催

〜土木業界における「Work」と「Life」の新しいバランスを求めて〜


当委員会では、去る9月に行われた土木学会平成19年度全国大会において、「考えよう!土木技術者のワークライフバランス」と題して、研究討論会を開催いたしました。

研究討論会の様子     


   日   時  平成19年9月12日(水)16:40〜18:10
   場   所  広島大学 東広島キャンパス 総合科学部 K108
   座   長  岡村 美好 山梨大学大学院
   話題提供者  矢島 洋子 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
          畠中 真一 川田工業株式会社
          堀越 研一 大成建設株式会社
   参 加 者  約30名


1)開会
座長による開会宣言の後、男女共同参画小委員会の委員長である小松登志子教授(埼玉大学)から、開会挨拶として、当研究討論会の狙いなどについての説明が行われ、あわせて、2件の男女共同参画関連アンケートについての紹介・協力依頼がありました。

2)話題提供
3名の話題提供者から、テーマに沿ってそれぞれお話をいただきました。

話題1 矢島洋子氏/仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)

・現在、ワーク・ライフ・バランスが注目されている背景について紹介。
・課題の一つとして、子育て中の父親・母親ともに、仕事と家事・育児等の生活時間をバランスさせたいと多くの人が考えているが、現実にはそうなっていないこと、この傾向は未婚者や子供がいない既婚者でも同様であることがあげられる。
・ワーク・ライフ・バランスに関する諸外国における先進的な例として、イギリスの取り組みを紹介。
・ワーク・ライフ・バランスの取り組みの効果としては、日本では、両立支援に関する管理職の評価として、仕事の配分や引継ぎ能力の向上等プラス面がある一方、育児をする女性に偏った支援による不公平感などのマイナス面も指摘されている。
・今後の推進課題として、ワーク・ライフ・バランスについては、個人や企業等組織のそれぞれの視点から取り組みが必要である、という認識に立ち、その上で、安定性や多様性のバランスを考えるべきであり、推進方策については、国によって内容が異なる。

【質疑応答】
Q:ワークライフバランス確保への取り組みができるのは、いわゆる「余裕のある企業」ではないか? 取り組みの結果として、その企業の満足度が向上していると言えるのか?
A:業績による影響がないとはいえないが、必ずしもリンクするものではないのではないか。逆に、業績の厳しい環境の中で、これらの問題に取り組み、そのことによって、業績が回復したところもある。

話題2 畠中真一氏/育休親父の思うところ
――遠慮するなよ、その気があれば育児休業はとれる――
・話題提供者自身が育児休業を取得した状況となぜ取得しようと考えたか、について紹介。
・育児休業に関する所属する会社内の仕組みや状況を概説した上で、自身の経験を踏まえ、育児休業が取得するためのポイントについて指摘。
・男性の育児休業取得の普及と定着のために、自身が考えている点を紹介。
(男性の育児休業については、取得によるネガティブな面を考えがちであるので、女性が職場で活躍できる環境・意識を実現することと同様に、男性が家庭で活躍できる環境・意識を実現するというように、発想を転換して推進するのが良いと考える)

⇒畠中氏の説明用資料はこちら(pdfファイル)


話題提供者     



話題3 堀越研一氏/土木技術者からみた現状と課題に関して
・土木技術者のワーク・ライフ・バランスに対する認識と土木技術者の特性についての概略を紹介。(「現場勤務」が多いのが特徴)
・土木業界を取り巻く現状について、関連する調査結果などを交えながら紹介。
(受注競争、発注方式の変化等により、労働時間へのしわ寄せが大きく、「Life」どころではない状況が見られる)
・今後の方向性について意見提示。
(・現場技術者とのチームワークに基づく働き方〔土木特有〕を取り込める柔軟なバランスを各人が理解する必要あり。
 ・「Work+Life」の時代への意識変化について、経営層も含めて認識する必要あり)


3)討論
主に「土木の現状と問題点」及び「土木で進めるワーク・ライフ・バランス」という観点から討論が行われました。

親子   【意見】
・受注側も発注側も長時間労働が常態化しており、ワーク・ライフ・バランスが確保されているとは言えず、産官学一体となった取り組みが必要である。
・ワーク・ライフ・バランスは、企業に余裕があるから取り組むのではなく、無理・無駄を減らすために実施することにつながる。そのためには、多様な働き方をする人たちを多様な状況に対してアサインするなど、現場のマネージが重要となる。

    【質疑の中からの意見】
・業界が抱える問題として、労働時間の増加だけでなく、対価としての報酬が得られない状況があると思う。
⇒⇒ 大きな問題であり、産官学一体となって取り組むことが出来る土木学会の役割が重要であると考える。

・両立している女性に対して、昇進などを優遇する制度についてどう考えるか。
⇒⇒ 必要なのは、特定の人を優遇することではなく、誰もが公平に競争できる土俵を作ることであると考える。 業界全体としてのルールを作り、そのもとで競争が行われるようにしなければならないと思う。 


4)閉会
教育企画・人材育成委員会の川島一彦委員長から、閉会挨拶として、本研究討論会及び男女共同参画推進についての有意性に言及するとともに、この問題については男女で、そしてファミリーで共に考えることが重要であるとの認識が示されました。
また、土木における男女共同参画に対し、高い関心を持つ人には新たに委員として加わってもらいたいなど、さらなる協力を求めるお話がありました。

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