ニュースレター bQ4
2001 May
土木学会地球環境委員会について
(社)土木学会地球環境委員会
委員長 玉井 信行 地球環境問題に対する土木工学、或いは社会基盤整備の関係者の悩みは、全地球的規模の環境問題と、地域の環境問題との関係をどう考えたらよいかと言う課題であろう。これは私自身の悩みでもあった。しかしながら、これらの二つの問題は相対立するものではなく、相補う問題である。したがって、地球環境委員会ではこれらの二つの課題を並行して扱いたい、というのが自分の問いに対する回答である。 全地球的課題に関わる活動 3月28日、アメリカ政府は1997年のCOP3において得られた京都議定書に反対の意志表示をし、これを批准しない姿勢を明確にした。日本における報道によれば、ヨーロッパは直ちにこれを非難する声を挙げた。例えば、米独首脳会談でも京都議定書に関する扱いについては、意見の一致を見なかった、ことが明快にうたわれている。さらに、欧州連合(EU) の環境相にあたるバルストレム欧州委員は4月4日、訪問先のオタワで「もし米国が議定書から離脱したいと思っているなら、議定書の運用ルールづくりや意思決定の過程からも離れてもらわなければならない」と記者団に語っている。説得を続けても米国の姿勢が硬いときには、米国抜きでも発効を目指して進む姿勢を見せている。 アメリカのブッシュ新政権は費用便益を表面に押し出し、経済優先策を取ることは間違いなさそうである。予算でも地球環境関連予算を削減した。日本は口では、「環境問題では我々が世界をリードしていかないといけない」と述べているが、飽くまで米国の新提案を待っており、独自の行動を取るだけの定見はないように見える。我々がどれだけ独自の意見を持つことが出来るかが試されている。 地球環境委員会としては、「気候変動に係る共同実施研究小委員会」を発足させている。この小委員会は、温室効果ガス排出抑止や吸収に有効な対策事業の共同実施がどの領域で展開されようとしているか、更に共同実施領域で土木がどのような役割を果たし得るか、参画できる可能性があるとすればどの様な形なのか、等について具体的な研究活動を開始している。 地域環境に関わる課題 この分野においては循環型社会の形成が最大の課題である。2000年度を「循環型社会元年」と位置付ける政策協議が行われ、また同年度には「循環型社会形成推進基本法」が成立している。それに基づき、今月からは資源有効利用法、家電リサイクル法、食品リサイクル法、グリーン購入法、改正廃棄物処理法、改正浄化槽法など主なものだけでも八つの法律が施行されている。産業廃棄物は一般ゴミの数倍の量に達しており、その他に建設残土が約4億5千万m3排出されている。したがって、建設業界においても廃棄物を巡るリデュース・リユース・リサイクルは大きな課題である。 地球環境委員会としては、環境マネジメントシステム情報交換会を設置している。そこでは国際規格ISO14001の認証実態や建設事業としての環境マネジメントシステムの効果的な運用について、継続的に研究をしている。さらに、人々の暮らしと密接に関連した環境情報システム研究小委員会が本年度から活動を始める予定である。 繰り返しになるが、全地球的規模の環境問題と地域環境問題は、車の両輪である。これらの問題が解決へ向かうためには何を為すべきか、を考えて活動して行きたいと考えている。皆様のご協力をお願いして、委員長就任の挨拶とします。 建設各主体(計画・設計・施工)のEMSへの取り組みと今後の相互連携
−地球環境委員会/建設分野EMS情報交換会活動報告− 事務局 小池勝則(鹿島建設)
土木学会は1994年3月に「土木学会地球環境行動計画−アジェンダ21/土木学会」を策定し、土木分野における地球環境保全に向けた行動計画を提示した。その理念の実現においては、特に直接的に建設事業に関与する組織の役割は重要であり、その第1歩として多くの組織が環境マネジメントシステム(EMS)の構築・運用を開始している。本情報交換会はEMSへの取り組みの進展を背景に、計画・設計・施工の各主体で実施されている環境マネジメント活動の相互理解とその有機的な結合により建設事業における環境保全の推進を目指すものである。山下委員長(国土交通省土木研究所)以下計画4名、設計3名、施工9名で構成され、以下の調査を実施してきた。 ■ 建設分野におけるEMSへの取組状況調査 建設事業で計画、設計、施工を担う各主体がその環境マネジメントシステムの中でどのような目的で何をしようとしているか(導入目的、環境方針、目的・目標等)ということについて相互理解を図るとともに、事業全体で大きなPDCAサイクルを回すことができるように、各主体間の要求伝達や、情報公開・フィードバックのあり方を検討・提案した。合わせて、27組織へのヒアリング等を通じて収集した公開可能な資料を整理し、システムの構築や活動の改善に活用に役立つ資料集として編集した。 ■ 自治体のEMSへの取組状況調査 土木学会地球環境委員会では自治体における環境条例の制定,環境行動への取り組み,ISO14001への取り組みなどの状況を把握するために,過去2回( 1994年11月,1996年12月)アンケ−ト調査を実施してきたが、自治体での認証取得の急速な普及という社会動向の中で、地方自治体の取り組みの変化を調査すべく2000年7月に都道府県および政令指を対象に第3回目のアンケート調査を実施した。 ■ 成果概要 計画者、設計者、施工者とも環境保全への取り組みは組織としての社会的な責務であるという認識でEMSに着手している。その導入目的は環境保全への組織的な取り組みを通じて社会の信頼を維持していこうということであり、より具体的には環境に関わるマーケットリスクやイメージリスクを回避し、組織の中長期的な成長を達成することにある。したがって、計画者は今後の社会基盤施設が備えるべき環境上の要件や調達・発注における環境上の要求事項をその環境方針や目的・目標においてより具体的に提示していく必要がある。また、設計者・施工者は計画者の取り組みを支援する立場で、LCA手法等を活用して環境保全への提案をより定量的に解かりやすく提示していく努力が求められる。一部の自治体においては、自らの発注者・調達者という立場を活用し、建設事業における環境保全への取り組みを促進していこうという取り組みが開始されており、今後このような取り組みが強化されることを期待したい。 ■ 今後の予定 今回の調査成果は第9回地球環境シンポジウムで報告するとともに、9月頃に建設各主体のEMSを効果的に運用していくための相互連携をテーマとした講演会を予定している。この講演会では計画者・設計者・施工者が自らのEMSについての紹介と連携方策への提案を行うとともに、当情報交換会より検討成果を報告する予定である。また、調査報告書とともに、調査段階で各組織からいただいた多くのEMS資料を資料集としてまとめ、参加者に還元すべく準備を進めている。 気候変動に関わる共同実施・CDM研究小委員会の活動報告
小委員長 三村信男(茨城大学)
平成13年度から、地球環境委員会に新しい研究小委員会が発足します。それが、「気候変動に関わる共同実施・CDM研究小委員会」ですが、興味をお持ちの方に参加のご案内をすべく、活動計画を紹介したいと思います。 (1)研究小委員会の背景 国際的な温暖化防止対策は、京都議定書の実施をめざして山場にさしかかっています。対策の中では、複数国間で排出削減事業を協力して実施する枠組みが志向されていますが、これが、共同実施とクリーン開発メカニズム(CDM)です。特に、CDMは先進工業国と途上国とが協力する仕掛けで、今後、途上国の温暖化対策への参入を促す上で手がかりとなるものとして期待されています。また、これらの活動を通じてプールされた資金は、途上国の温暖化に対する適応策(温暖化の悪影響に対する対策)にも支出されることになっており、土木分野とも強い関わりがあるものと考えられます。 地球環境委員会では、共同実施、CDMの重要性を認識して、昨年10月の土木学会全国大会で、研究討論会「気候変動に関わる共同実施活動における土木の役割と可能性」を開催しました。その成果を受けて、小委員会の設立を提案し、現在、公募によって25名のメンバーで活動を開始しているところです。 (2)目的と活動計画 この小委員会の目的は、以下の4点にまとめられます。 1)共同実施・CDMの枠組みに関する認識の整理 2)共同実施・CDMの実施領域と事例の集約 3)共同実施・CDMにおける土木の役割と日本の土木界の参画可能性の検討 4)具体的なプロジェクト領域の明確化 この小委員会は2年間の予定ですが、去る3月22日には、設立の準備会合を開いて、以下のように当面の活動計画を決めました。第1回だけは、日時、場所が確定しています。 第1回研究会 2001年5月15日14:00−17:00 弘済会館 共同実施・CDM事業の実例と実施領域 第2回研究会 2001年7月 共同実施・CDM事業における土木が担いえる領域、交通部門の対策 第3回研究会 2001年9月 温室効果気体削減効果の数量化の仕組み 第4回研究会 2001年11月 各分野・セクターの事業における土木との関わり 第5回研究会 2002年1月 土木が参画しうるプロジェクトの検討 第6回研究会 2002年3月 平成13年度の活動のまとめと平成14年度の活動計画 各回では、委員または外部の講師による報告を受けた後、参加者で議論し、認識を深めていきます。上記のテーマは現時点での予定であり、各回の研究会テーマは変更になる可能性があります。 (3)小委員会の運営 3月22日の会合で、三村が小委員長に指名され、青山俊介(エックス都市研究所)が副委員長、山田和人(パシフィックコンサルタンツ)が幹事長として運営を担うことになりました。この小委員会には、資金的な裏付けがありませんので、参加は自己負担でお願いする、また、メンバーは何らかの形(報告、議事録まとめなど)で小委員会の活動に参加する、ことを原則にしています。 正規のメンバーの他に、オブザーバーの参加も歓迎する意味で、各回の研究会は公開します。土木学会地球環境委員会のホームページなどで、案内をいたしますので、希望者はお集まりください。また、この小委員会に関する問い合わせは、以下の2名あるいは土木学会事務局地球環境委員会までお願いします。 青山俊介(エックス都市研究所) aoyama@exri.co.jp 山田和人(パシフィックコンサルタンツ) Kazuhito.Yamada@tk.pacific.co.jp 3月末に、米国のブッシュ新政権は、米国が京都議定書に同意できないという意向を公表しました。米国の後退は、京都議定書の発効、さらには温室効果気体の排出削減対策の前途に大きな障害をもたらすものになるため、国際的に非難の声があがっています。先行きはやや不透明になりましたが、米国の態度如何に関わらず、対策としての共同実施・CDM事業は推進される可能性が高いため、将来の土木界の参加、貢献のあり方を検討するこの小委員会の重要性が減ずることはないものと考えます。ご興味をお持ちの方のご参加をお願いします。 (社)土木学会地球環境委員会の活動
-- 平成11年度以降の活動を中心として -- 平成11/12年度 幹事長 森 澤 眞
輔
1.地球環境委員会の活動方針 (1)活動方針 地球環境問題に対して土木界・土木工学は何をなすべきか、土木技術者はどの様な責務を負い、具体的にどの様な行動を起こすべきか。委員会の創設(平成4年)以来、持続的にこの問題に取り組み、積極的に数々の事業を行ってきた。しかし、なお確たる支柱を立て得たわけではない。京都においてCOP3が開催されて以来、既にCOP6が開催されるに至る現在、国際的にも課題が山積みされており、土木界・土木学会が果たすべき役割はますます多くかつ重要になっている。 土木学会は、地球環境委員会の積極的な関与の下、平成6年に『地球環境行動計画(アジェンダ21/土木学会)』を策定する等、地球環境問題への取り組みを強めている。土木界の種々の場において環境憲章が定められ、環境行動計画が策定され、また環境管理の国際規格(ISO14001)の認証を取得して持続的な活動を行い、毎年環境報告書が公表される等、土木界の環境行動は確実に具体的な実績を積み重ねつつある。 地球環境委員会の活動の基本は、その策定に当委員会も積極的に関与した『地球環境行動計画(アジェンダ21/土木学会)』に定める「土木学会が取り組むべき課題」の実現に貢献することにある。そこでは、「持続可能な開発」を実現するために、土木学会は地球環境問題に関わる以下の課題に取り組む必要があることが述べられている。すなわち、 @地球環境の改善に貢献する土木工学の形成 A人類と生物の共存を可能にする新しい土木工学の展開 B温暖化・気候変動の影響構造の解析と対応技術・システムの開発 C資源循環型国土、都市づくりの技術開発 D酸性雨、海洋汚染等、種々の地球環境問題の解決に貢献する土木工学の構築と技術開発 E国際的な土木建設事業実施の指針と技術の発展 F途上国土木工学の発展と人材育成の支援 G課題-B、-C、-Dに関わる途上国協力 の8課題である。 平成11・12年度の委員会では、平成9・10年度の活動を踏まえ、以下に述べる2つの基本方向を設定して、活動計画を策定し、実施した。すなわち第1は、京都議定書を受けた温暖化防止対策の具体化である。京都議定書の採択以降、国際的動向は急展開しているので、土木学会としても、研究、技術開発、行動計画等あらゆる面でさらに具体的な取り組みを展開している。この試みは、例えば、土木建設業における環境負荷評価(LCA)研究小委員会の活動、地球環境シンポジウムにおけるパネル展示の充実、優秀展示の表彰制度の創設、気候変動に係る共同実施研究小委員会の発足等として具体化されてきた。 第2は、中長期的な取り組み体制の検討である。地球環境問題の解決のためには、土木界全体で、長期的に取り組みを続ける必要がある。そのために、地球環境問題に関する学会内での情報の交流・発信を一層重視し、必要な情報を提供する役割を果たしたいと考えている。また、学会内での“リエゾン(協同)”の委員会として、関連常置委員会との協力を強め、地球環境問題の取り組みを土木学会全体へ広げることに努力している。さらに、土木教育の中での位置づけの明確化や他分野、アジア諸国の土木界との連携等も今後の活動の視野に入れている。この試みは、例えば、委員長候補者の公募制等を内容にする内規の改正、土木学会全国大会における研究討論会の積極的な企画、土木界に広く視野を設定した環境マネジメントシステム情報交換会の開始、既存の研究領域を越えた「土木森林環境学」研究小委員会や「土木海岸・海洋環境学」研究小委員会の発足、関連常置委員会と共同で提案した土木学会『環境賞』の創設実現、JGEE編集委員会のアジアへの拡充等として具体化されている。 こうした活動を支えるために、地球環境委員会自身の体制を強化することも必要である。若い世代をはじめ、多くの方々が地球環境問題への取り組みに参加されるような体制を整える努力を継続している。 (2)内規の改正、委員長・委員・幹事の公募制の開始 地球環境委員会では、委員会運営の透明化の促進や土木学会会員の委員会活動への参加の機会を増す等の理事会の要請を受け、内規改正の準備を進め、平成12年6月に改正を実現した。平成13年4月から始まる委員会は新内期に基づいて構成される最初の委員会になる。既に委員長候補者や委員及び幹事候補者を、地球環境委員会ニュースレター、土木学会ホームページにおいて公募し、平成12年度の最終委員会において公募応募者から2名の委員、4名の幹事が選任された。 委員会活動を広く会員に知って戴くため、ホームページの充実を図っており、改正された委員会内規は勿論、委員会や幹事会の議事録等を含め、活動内容を迅速に公開する体制を整え、公開した。 (3)地球環境委員会賞の創設 委員会では、地球環境問題に関連する優れた研究や活動を顕彰するため、委員会独自に表彰規定を定め、平成11年度から順次、表彰を実施している。その種類は、地球環境技術賞、地球環境貢献賞、地球環境論文賞(JGEE Award)および地球環境講演論文賞である。 地球環境技術賞は地球環境シンポジウムにおける展示の中で、地球環境問題の解決に貢献する土木・環境技術の開発及び普及の観点から特に優れていると認められた展示(3件程度)に、地球環境貢献賞は地球環境問題の解決に貢献する活動の観点から特に優れていると認められた展示(3件程度)にそれぞれ授与している。一方、研究論文を対象に、地球環境論文賞は、Journal of Global Environment Engineering (JGEE) に地球環境問題に関する論文を発表し、これが土木・環境工学における学術・技術の進歩発展に独創的な業績をあげ、顕著な貢献をしたと認められたもの(1件程度)に授与する。地球環境講演論文賞は、地球環境シンポジウム講演論文集に地球環境問題に関する論文を発表し、これが土木・環境工学における学術・技術の進歩発展に寄与し、独創性と将来性に富むと認められたもの(3件程度)に授与します。 平成11年度の地球環境技術賞に続いて、平成12年度の第8回地球環境シンポジウムから地球環境貢献賞は表彰を開始している。地球環境論文賞(JGEE Award)および地球環境講演論文賞は現在選考を終え、平成13年度の第9回地球環境シンポジウムにおいて最初の賞が授与される予定である。 (4)土木学会環境賞の創設提言 土木建設事業の多くは直接的かつ大規模に環境に働きかけることから、「美しい国土」、「安全にして安心できる生活」、「豊かな生活」をつくり、改善し維持するために、土木界、土木技術者が不断に自覚し実践すべき責務は大きいといえる。先端技術のみならず伝統技術の活用を図り、生態系の維持および美の構成、ならびに歴史的遺産の保存に留意する等、地味ではあっても人類社会の持続的発展を可能にする取り組みに光を当て、これを顕彰することは、これらの活動を土木界において定着させる大きな原動力になると期待される。地球環境委員会では、このような認識に基づき、海岸工学委員会、原子力土木委員会、環境工学委員会、環境システム委員会の賛同を得て、5委員会委員長の連名により土木学会「環境賞」の創設を要望しました。 岡村会長(当時)の強い支持を得て、「環境賞(仮称)」の創設は会長提案として理事会に発議され、平成11年度に創設が実現しました。既に既存の土木学会賞の公募が開始されていたにもかかわらず、急遽、環境賞の公募が会告された点に、この賞に対する大きな意気込みを感じることができます。記念すべき第1号が、第86回土木学会総会において授与されました。 環境賞は「環境への負荷を低減する土木技術・システムを開発・運用し、良好な環境を保全すると共により豊かな環境の創造に貢献した画期的な事業業績」に対し、会員資格を問わず授与されます。この賞は、技術賞と並んで、土木学会賞の双璧として位置付けられる重要な賞であるといえます。受賞対象は技術賞と同じく、個人・団体の業績を対象にする部門(第Tグループ)とプロジェクトの成果を対象にする部門(第Uグループ)とに区分されていますが、技術賞と異なり応募に対する制約が極めて緩やかです。自ら応募することができる他、会員であれば誰でも候補者を推薦することができます。環境に関連する業績やプロジェクトの社会的定着を配慮する必要から、過去5年以内に修了したものが受賞対象とされることも大きな特色です。賞状と共に授与される賞牌は、著名な金属造形家であられる青木秀憲氏の創作です。 地球環境委員会が、幸いにしてその創設に大きく貢献することができた「環境賞」が土木界に定着し、土木界の環境保全・創造活動を支える力になることが期待される。 2.地球温暖化に対する当委員会の最近の動向 (1) COP3に関連して COP3京都会議を間近にひかえた平成9年11月14・15日に地球環境委員会の特別企画としてシンポジウム「温暖化防止に向けた技術の可能性」を開催しました。ロバート・ディクソン(米国)、アチャ・スガンディ(インドネシア)の2専門家による国際状況が直接聴けたほか、産業界各企業の分野別取り組みの情報を得た。建設業は二酸化炭素の直接排出量は少ないものの、建設資材生産関連を含めると1/3以上のシェアになる。土木界がとるべき行動の方向が明確になったといえる。 (2)一般公開シンポジウム 本委員会の定期事業である第6回地球環境シンポジウムの開催期に、一般公開シンポジウムを併催(平成10年7月9日)した。天野明弘(関学)、松岡 譲(京大)、浅岡美穂(気候ネットワーク)の講演を中心にCOP3後の土木界の取り組みを一層明確にするためのもので、一般社会人を含む開催地大阪の参加者に新たな視点が投げられた。 以後、一般を対象にした活動は、毎年7月に開催される地球環境シンポジウムにおけるパネル展示等を介して持続的に継続されている。第9回地球環境シンポジウム(平成13年7月、北九州市)では、再び一般公開を盛り込んだ企画を検討中である。 地球温暖化防止については、京都議定書の採択をはじめ国際的に急展開をしており、土木学会としても、研究、技術開発、行動計画等あらゆる面でさらに具体的な取り組みを展開することが求められている。 3.土木学会全国大会における活動 平成10年度には、本委員会主催で研究討論会を開催した。テーマは「地球温暖化防止のための土木技術の新展開 ---CO2排出を削減するまち創り・くに創り---」で、6%削減目標に土木技術からどこまで迫ることができるかを論じた。建設資材の生産・利用、エネルギー供給、物流・交通体系、国土計画・都市計画などの分野から、西岡秀三(国環研)、増永元彦(三菱マテリアル)、花木啓祐(東大)、中村英樹(名大)、鹿島茂(中央大)の話題提供を受け、座長を太田幸雄(北大)が務めた。 平成11年度には、環境工学委員会、環境システム委員会と「リスク概念に基づいた環境評価・対策とは--環境・衛生リスクの評価と対策--」と題する研究討論会を共催した。地球温暖化問題をひとまず離れ、リスク概念に基づいた環境管理のあり方を模索しようとする試みであり、上田博三(環境庁)、東海明宏(北大)、大垣眞一郎(東大)、畠山成久(国環研)の話題提供を受け、座長を森澤眞輔(京大)が務めた。 平成12年度には、3つの研究討論会を開催した。第1は本委員会が主催した「気候変動に係る共同実施活動における土木の役割と可能性」である。地球規模気候変動に対する対応手法の中で重要な位置づけが与えられている共同実施に注目し、その取り組みの現状、土木界における実施事例等を紹介すると共に、土木界の役割と具体的な参画の可能性等について意見を交換した。松尾直樹(地球環境戦略研究機関)、山田和人(パシコン)、青山俊介(エックス都市研究所)の話題提供を受け、座長を三村信男(茨城大)が務めた。 第2は水理委員会と共催した「東南アジアの河川域・都市域における地域開発と環境」である。政治的不安から解放された東南アジア地域における河川域の総合的な活用を、わが国における経験に照らして、いかに達成するか、わが国の役割や協力・参画等の可能性について意見を交換した。浅枝隆(埼玉大)、中北英一(京大)、北田敏廣(豊橋技科大)、白岩弘行(パシコン)の話題提供を受け、座長を中辻啓二(大阪大)が務めた。 第3は環境システム委員会および環境工学委員会と共催した「社会の環境変化の本質を探る」である。地球環境の持続を可能にするために、持続に向けて社会の舵を切れるように、今何が起こりつつあるか、何が起こりそうであるかを理解し、行き先を見定めることをめざして意見を交換した。内藤正明(京大)、巖佐庸(九大)、山地憲治(東大)の話題提供を受け、座長を楠田哲也(九大)が務めた。 平成13年度の全国大会では、環境工学委員会および環境システム委員会との協力の下「環境技術と国際化への対応」を共催する予定である。 4.地球環境シンポジウム 本委員会では、毎年7月に「地球環境シンポジウム」を開催している。このシンポジウムは、土木界における地球環境問題に関連する活動の実態や内容を取りまとめて土木学会会員に紹介し、広く議論を起こすことを意図して企画され運営されている。 平成11年度は、北田敏廣実行委員長の下、第7回シンポジウムを東京において開催し、特別セッション「森林の環境保全機能を生かした土木の新たな展開をめざして」、47件の研究報告の他、民間企業の地球環境関連技術を紹介する18件の技術展示、NPO、役所・研究所・大学等の地球環境関連の取り組みを紹介する17件のパネル展示を行った。民間企業の技術展示の内、地球環境技術の開発に貢献が大きいと認めた3件(鹿島建設(株)、キャノン(株)、荏原製作所(株))の技術に当委員会の表彰規定に基づき「地球環境技術賞」を授与した。 平成12年度は、加藤正進実行委員長の下、第8回シンポジウムを東京において開催し、特別セッション「建設業の環境マネジメントの新たな展開、環境パフォーマンス評価の現状と課題」、46件の研究報告の他、民間企業の地球環境関連技術を紹介する技術展示、NPO、役所・研究所・大学等の地球環境関連の取り組みを紹介する一般パネル、合計37件を展示した。民間企業の技術展示の内、地球環境技術の開発に貢献が大きいと認めた3件((財)電力中央研究所、神鋼パンテック(株)、ニューソイル研究会)の技術に「地球環境技術賞」を、一般展示の内3件(建設省国土地理院調査部、よこはま水辺環境研究会、東京ガス(株))に「地球環境貢献賞」を授与した。研究発表論文を対象に「地球環境講演論文賞」の受賞候補論文の選考作業を終えている。 平成13年度は、楠田哲也実行委員長の下、北九州市との共催、一般公開セッションの設置等、新たな工夫の下で来る7月18・19日の両日北九州市において第9回シンポジウムを開催する予定である。現時点で56件の発表論文、46件のパネル展示の申し込みがあり、近くプログラムが確定する予定である。 5.研究小委員会の活動 (1) 土木自然学懇談会と「土木自然学講演集」の発刊 「自然との共生に根ざした土木技術の確立」に向けて、著名な専門家の話題を中心に論議を重ねる懇談会(青山俊介座長)を6回にわたって催した。講師には安田喜憲(国際日文センター)、吉良竜夫(琵琶湖研)、只木良也(名大)、徳江倫明(日本リサイクル市民会)、鯖田豊之(京都府立医大)、藤原秀一(海中公園センター)をお願いした。土木工学は他の工学より一層自然環境との共生を求められる工学で、扱う技術の多くはより直接に地球環境に関係することから、幅広い理解力と評価力が必要であることが認識された。4年間にわたるこの委託研究(委託元:竹内良夫事務所)の成果は「土木自然学講演集」としてとりまとめられている。 (2)土木建設業環境管理・監査研究小委員会と「建設業と環境マネジメントシステム」の発刊 本小委員会(光家康夫小委員長)は平成6?8年度において、環境マネジメントシステム(ISO14001)を建設業に導入する方策についての調査研究を実施し、講習会を開催して研究成果を土木学会会員に広く還元すると共に1998年3月にその成果を『建設業と環境マネジメントシステム』(鹿島出版会)として発刊した。ISO14001は1996年に制定されたが、地球環境委員会では「アジェンダ21/土木学会」で掲げられたわが国土木界の環境理念を具体化するツールとして、規格作成段階から注目してきた。地球環境問題への取組みにおいて、社会基盤整備を担う建設産業の果たすべき役割はきわめて重要である。建設業者のみならず、発注者や設計コンサルタント、建設資材業者を含む全ての建設産業に従事する組織が環境マネジメントシステムを構築し、継続的な環境保全活動の向上を目指すことにより環境負荷削減に大きく貢献できると考えるものであり、一般読者を想定した発刊もその啓発・普及を目的としている。 (3)土木建設業における環境負荷評価(LCA)研究小委員会と調査研究報告書の発行 本小委員会(盛岡 通小委員長)は平成6?8年度において、環境マネジメントシステムにおいて規格化が準備されている環境負荷評価(LCA)を建設業に導入する方策とその具体的な方策についての調査研究を実施し、講習会等を開催して研究成果を土木学会会員に広く還元すると共にその成果を成果報告書として取りまとめている。 土木建設業において使われる材料や建設作業そのものを要素に分類し、各々によって発生する二酸化炭素原単位を積み上げ方式により算定した。また、代表的な土木建設事業として、道路舗装、ダム建設、トンネル建設、橋梁上部構建設、下水処理場建設の5例を取り上げ、その共用時を含めて、二酸化炭素発生量のケーススタディを実施した。その成果は地球環境シンポジウムにおいても紹介され、土木建設業における温暖化防止活動の量的管理の基盤を与えている。 小委員会の成果は、環境パフォーマンス研究小委員会に引き継がれた。 (4)環境パフォーマンス研究小委員会と「建設業の環境パフォーマンス評価とライフサイクルアセスメント」の発刊 本小委員会(盛岡 通小委員長)では、事業者が環境に与える影響を継続的かつ実質的に改善していくためのツールとして、 ISO14030-40で規格化が検討されている「環境パフォーマンス評価(EPE: Environmental Performance Evaluation)」を視野に置き、土木建設業における環境パフォーマンスを評価する方法論と環境マネジメントシステムにおけるその位置づけ、活用方法等について、平成9年度から2カ年にわたり調査研究を進めた。本研究は竹内良夫事務所からの受託研究として実施された。 平成9年度には、 ISOの環境パフォーマンス評価ガイドライン案を和訳し、これを手がかりとして、土木建設活動へのガイドライン適用の考え方及び評価方法等について検討した。この成果を踏まえ、平成10・11年度には、実際の土木建設業の現場で行われている具体的な評価事例の収集・整理を行うとともに、土木建設業の環境パフォーマンスの継続的な改善に資する評価方法の望ましいあり方について研究した。その成果が、平成12年10月『建設業の環境パフォーマンス評価とライフサイクルアセスメント』として鹿島出版会から刊行された。 (5)土木森林環境学研究小委員会と「森林の国土・環境保全機能に関する研究」の発刊 本小委員会(太田幸雄小委員長)は平成10年度に設立され、流域の総合的土砂管理・健全な水循環創りに果たす森林の役割を総合的に理解し、その再評価を通して森林の国土保全機能を明らかにする研究を行った。地球規模の森林問題を視野に入れ、わが国の森林を対象に課題を洗い出すことをめざした。 砂防、河川管理や海岸の護岸対策等の土砂管理・水循環管理において、流域の森林の果たす役割について再評価し、それを活用することにより、流域の総合的な土砂管理と健全な水循環創り等の新たな国土保全計画への展開を目的とし、竹内良夫事務所からの委託研究として研究を推進した。 その成果は、広く土木学会会員に公開された2回の研究会の他、第7回地球環境シンポジウムの特別セッションで報告した他、平成12年6月にその成果報告書「森林の国土・環境保全機能に関する研究」を刊行した。 (6)環境マネジメントシステム情報交換会 土木界の多くで環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の認証を受け、本格的な環境活動が開始されている土木建設業は自然環境との関わりが特に深い産業であり、環境保全や環境創造に対してはより慎重な対応が要求されている。地球環境委員会では、平成6年度から建設業への環境マネジメントシステムの導入について研究を進めてきた。建設業でも150を越える事業所においてISO14001の認証を取得する状況に達したのを機会に、公益事業体、コンサル、大学、ゼネコン、等を中心に「環境マネジメントシステム情報交換会」(山下武宣小委員長)を設置し、建設事業としての環境マネジメントシステムの効果的な運用について研究している。 土木建設工事の発注者側の自治体や公益事業体、コンサル、ゼネコン等による環境マネジメントシステムの運用実態の調査等、活発な調査研究活動を進めている。 (7)気候変動に係る共同実施研究小委員会の発足 温暖化に伴う気候変動は国際社会の最重要の懸案の一つとなっており、また、気候変動要因の制御、変動に伴う治水・利水・海面上昇問題への対応など土木界にとっても多くの関わりを持つ問題であるが、この気候変動への対応手法のなかで温室効果ガス排出抑止や吸収に有効な対策事業の共同実施が注目を集めている。 平成12年度の土木学会年次学術総会において、地球環境委員会が研究討論会を主催し、共同実施の枠組みが現状でどこまで固まってきたか、共同実施事業がどのような領域で展開されようとしているかについての共通認識の形成、更に共同実施領域で土木がどのような役割を果たし得るか、どのような形で参画できる可能性を有しているか等について意見を交換した。 委員会では三村信男小委員長、青山俊介世話役の下に、COP6の結果も踏まえて、小委員会を立ち上げ、具体的な研究活動を開始している。 (8)土木海岸・海洋環境学研究小委員会の発足 近年、温暖化等の地球規模の気候変化によって生じる諸問題への適応対策の具体化が急がれるにつれ、海岸・海洋の管理に関する種々の課題が顕在化しつつあり、大きな社会問題になりつつある。海面上昇によって海水面下に没する国土面積の増加と市街地や港湾施設等の資産・資源の保全対策、減少する自然海岸の保全と管理、沿岸地下水や河川における塩水の遡上等の従来から土木工学が対象にしてきた海岸に関連する諸問題に加えて、沿岸開発に伴うミティゲーション、人工島や大型浮体構造物建設と環境保全、河川水系と沿岸水域とを統合した水域管理等、土木工学の各分野が横断的に対処すべき諸問題の重要性が益々増加している。併せて、海砂採取の制限、沿岸における養殖漁業と環境保全、深層海水の利用や海洋温度差発電、東アジア海域における広域海洋汚染とその対策、地球温暖化に果たす海洋の役割等々、国際的な展開を展望しつつ、水産学や海洋学等、土木工学の枠組みを超えた取り組みが大きなテーマになりつつある。 以上のような状況から、竹内良夫事務所からの委託を得て「土木海岸・海洋環境学研究小委員会」(中辻啓二小委員長)を設立し、地球環境委員会の土木海岸・海洋環境学研究小委員会を中心に、海岸工学委員会の対外連携小委員会と水理委員会の環境水理部会と連携し、地球環境委員会が中心となる講演会シリーズと海岸工学委員会が中心となるジョイントシンポジウム(土木学会をはじめ、沿岸環境関連の4学会との連携シンポジウム)を軸に調査研究活動を展開している。 (9)くらしと環境情報研究小委員会(仮称)の発足準備 幹事会において、人々の暮らしと密接に関連した環境情報システムの研究開発を進める必要性と目的、具体的な研究課題について検討しており、研究小委員会を地球環境委員会に平成13年度から設置する準備が進められている。 6.情報発信 (1)ホームページの開設 本委員会では平成10年6月にホームページを開設し、「お知らせ(トピックス)」と「地球環境委員会の概要」、「研究小委員会の活動」、「刊行物の一覧」、「地球環境研究の現状」、「地球環境シンポジウム・プログラム」等の行事の広報の他、委員会や幹事会の議事録等、委員会活動の全般に関する情報を、インターネット上のホームページにより学会以外の人達も含めて幅広く、タイムリーに発信している。 (2)ニュース・レター(Earth & Forest) 年3回の発刊で、毎回本委員会の動きを伝えると共に活動経過や活動成果を報告している。平成12年度のNo.22号から電子媒体による発行に切り替えており、ホームページにも登載されている。次回 No.24 は平成13年4月末に発刊の予定である。 (3) JGEE : Journal of Global Environmental Engineering 委員会が発行する査読付きの研究論文を登載する英文の論文集である。年1回の頻度で発行しており、既に第6巻を発刊し、現在第7巻の編集査読作業を進めている。 編集委員会(北田敏廣委員長)では、発行回数を年4回に増加させることを目標にした検討を進めている。このため、学会内の他の英文論文誌発行委員会とも連絡を取りつつ、先ずJGEEの読者層および投稿者層を拡大するため、編集委員を広くアジア諸国に求める等の準備を整えつつある。 7.その他 現在では地球温暖化問題が国際的に注目されており、本委員会でも常にその動向と合わせて活動を展開している。一方、温暖化以外の地球環境問題についても着実な活動を続ける必要がある。環境パフォーマンス、土木森林環境学に続く、土木海岸・海洋環境学はもとより、本委員会に関連する土木学会の他の委員会との連携による課題の追求は欠かせず、その具体的な組織作りを進める検討を行っている。 また学会の枠組みを越え、関連する学・協会との間での情報の交換と共有を推進したい。 地球環境論文賞(JGEE Award)、地球環境講演論文賞の決定
地球環境委員会
表彰小委員会
地球環境委員会では、地球環境問題に関連する優れた研究や活動を顕彰するため、委員会独自に表彰規定を定め、平成11年度から順次、表彰を実施している。その種類は、地球環境論文賞(JGEE Award)、地球環境講演論文賞、地球環境技術賞および地球環境貢献賞である。 平成12年度の地球環境技術賞は地球環境シンポジウムにおける展示の中で、地球環境問題の解決に貢献する土木・環境技術の開発及び普及の観点から特に優れていると認められた展示(3件)に、地球環境貢献賞は地球環境問題の解決に貢献する活動の観点から特に優れていると認められた展示(3件)に、それぞれ第8回地球環境シンポジウムにおいて表彰された。一方、研究論文を対象に、地球環境論文賞は、Journal of Global Environment Engineering (JGEE) に地球環境問題に関する論文を発表し、これが土木・環境工学における学術・技術の進歩発展に独創的な業績をあげ、顕著な貢献をしたと認められたもの(1件程度)が授賞の対象である。地球環境講演論文賞は、地球環境シンポジウム講演論文集に地球環境問題に関する論文を発表し、これが土木・環境工学における学術・技術の進歩発展に寄与し、独創性と将来性に富むと認められたもの(3件程度)に授与される。 今回、表彰小委員会(中西委員長)により平成12年度地球環境論文賞(JGEE Award)および地球環境講演論文賞が以下の通り選考された。第9回地球環境シンポジウムにおいて表彰される予定である。 ○地球環境論文賞(JGEE Award) ・ An empirical analysis and forecasting of grain production in China (JGEE Vol.5登載論文) 著者:H.Imura, T.Toyoda and J.Chen ・ Contribution of bacterial production to sinking carbon flux in a Japanese coastal area: A marine mesocosm study (JGEE Vol.6登載論文) 著者:S.Harda, H.Koshikawa, M.Watanabe, K.Kohata, T.Ioriya and J.Hiromi ○地球環境講演論文賞 ・ 日本海沿岸の海辺埋没物・漂着物の分布 著者:楠井隆史、野田理男、野沢理哉、中川秀幸 ・ ガソリンの無鉛化による健康リスク低減効果の評価 著者:森澤眞輔、日高大彰、米田 稔 ・ バングラデッシュにおける地下水砒素汚染の機構解明と汚染対策の実践 著者:横田 漠、田辺公子、瀬崎満弘、工藤周一、末永和幸、フェローゼ・アーメッド、ハミドール・ラーマン、バングラデシュ国立予防社会医学研究所、応用地質研究会、アジア砒素ネットワーク H.Imura等による論文「An empirical analysis and forecasting of grain production In China」は、世界の食糧需給に大きな影響を及ぼす中国の穀物生産の将来を予測・評価している。西暦2015年迄は農耕面積の減少を農耕技術の進歩が補うものの、2015年以降には次第に穀物生産量が減少し供給が需要を下回ることを示している。、気候変動や農耕技術の変化を考慮して、中国全土における食糧需給を緻密なモデルを構築して予測・評価した成果が特に高く評価された。S.Harda等による論文「Contribution of bacterial production to sinking carbon flux In a Japanese coastal area: A marine mesocosm study」は、現地に設置したメソコスム実験装置を用い、粒子状有機炭素の微生物による生産、沈降や分解、光化学反応による生成等の機構を考慮して河口沿岸域における炭素の動態を緻密に評価している。トータルな炭素の沈降が、微生物による有機炭素生成等の機構によって、水深と共に変化する態様を定量的に評価した成果が特に高く評価された。 楠井隆史等による論文「日本海沿岸の海辺埋没物・漂着物の分布」は、日本海沿岸海辺のプラスティック汚染の実態を把握するために実施された国際共同研究の成果であり、海域での漂流物の状況を明確にしている。日本海での流動研究との連携により、なお一層の研究の展開が期待される。森澤眞輔等による論文「ガソリンの無鉛化による健康リスク低減効果の評価」は、ガソリンの無鉛化政策によって日本人の鉛への曝露がどのように減少したかを歴史的に評価し、鉛の体内動態を踏まえて健康リスクを定量的に評価している。途上国におけるガソリン政策や他の微量環境汚染物質の評価への展開が期待される。横田 漠等による論文「バングラデッシュにおける地下水砒素汚染の機構解明と汚染対策の実践」は、国際的な連携の下、現地における地下水砒素調査や緻密な聞き取り調査により汚染の実態を把握し、現地の農耕に関連したモデルを提案することにより現象の解明に貢献している。国際的な拡がりを見せる広域地下水の砒素汚染対策への一層の貢献が期待される。 土木海岸・海洋学研究小委員会の活動中間報告
土木海岸・海洋学研究小委員会委員長
大阪大学 中辻 啓二 地球環境委員会では「土木海岸・海洋環境学」研究小委員会を平成12年度に新たに設立し、既存の学問分野の枠組みを超えたより広い視点から海岸・沿岸域・海洋の利用と環境保全の調査研究を実施することになりました。 この研究小委員会は、先の土木森林環境学研究小委員会(委員長:北大・太田幸雄教授:平成10年度)と同じく、元土木学会会長の竹内良夫先生からの土木学会への受託研究費で賄われるものです。先生からの要請の一つに、土木学会にあっては水圏に関係する海岸工学委員会や水理委員会との連携、土木学会外にあっては沿岸域に関連する他学会との連携という要望があります。海岸工学委員会では、対外連携小委員会(委員長:東工大・灘岡和夫教授)を既に設けられ、他学会との連携を志向されております。2000年7月に沿岸環境関連学会連絡協議会(仮称)の合同シンポジウムを開催されております。 時を同じくして、同じ方向のベクトルをもった組織が、土木が従来対象としてきた海岸環境にとらわれることなく、また物理環境、生物環境,生態環境、人間社会環境、経済環境、等既存の学問分野の枠組みを超えたより広い視点から、海岸・海洋環境の持続的利用とその保全・管理を討論する場として委員会活動を行いたいと考えております. 具体的な活動方針としては、下記のように講演会シリーズ(地球環境委員会担当)とシンポジウムシリーズ(海岸工学委員会担当)との二本立てで進めていく予定です。興味のある方の積極的な参加を呼びかけます. A.講演会シリーズ 第1回講演会 ・日時:2月5日(月)14:00〜16:30 ・会場:土木会館2階大会議室 ・全体テーマ:「人工藻場・干潟の創造」 1.閉鎖性海域の海藻植生と藻場創出による生物多様性の回復 川井浩史 教授(神戸大学内海域機能教育研究センター) 2.内湾における干潟域の役割と修復方法について 鈴木輝明 室長(愛知県水産試験場漁場環境研究部) 第2回講演会 ・日時:4月26日(木)14:00〜16:30 ・会場:弘済会館4階「梅」 ・全体テーマ:「環境問題における合意形成」 1.環境アセスメントと合意形成 原科幸彦 教授(東京工業大学大学院) 2.(仮題)環境経済学からのアプローチ 鷲田豊明 教授(神戸大学経済学部) 第3回講演会 ・日時:6月12日(火)14:00〜16:30 ・会場:土木会館2階大会議室 ・全体テーマ:「グローバルな環境問題と沿岸環境」 1.黒潮モデル研究と〜日本沿海予報を目指して〜 鍵本 崇 先生(地球フロンティア・システム) 2.閉鎖海域におけるEcho-Dynamicsと衛星リモートセンシング 杉森康宏 教授(千葉大学環境リモートセンシング研究センター) 第4回講演会(予定) ・日時:8月 B シンポジウム・シリーズ 第1回ジョイント・シンポジウム(第2回四学会ジョイント・シンポジウム) ・日時:3月 14日(水) 9:30〜17:50 ・会場:東京工業大学 ・全体テーマ: 「沿岸環境の総合的評価と管理」 ―沿岸環境研究の多角化と総合化に向けてー 第2回ミニ・ジョイント・シンポジウム ・日時:5月26日(土)9:00〜17:30 ・会場:東京水産大学 ・全体テーマ: 「(仮題)有明・諫早湾」 第3回ミニ・ジョイント・シンポジウム(予定) ・日時:6月下旬 ・会場:現地 ・全体テーマ: 「宍道湖・中海現地シンポ」 第9回地球環境シンポジウムの準備状況
北九州市立大学 松本 亨
(実行委員会 副委員長) 第9回の地球環境シンポジウムは、7月18日(水)、19日(木)に北九州市で開催されます。今年は一般セッション(論文発表)53件、パネル展示50件と多数の応募をいただいており、地球環境問題に関する幅広い分野からの発表が予定されています。パネル展示に対しては、昨年同様、地球環境問題の解決に貢献する土木・環境技術と活動に関する展示に対して、それぞれ『地球環境技術賞』と『地球環境貢献賞』が授与されます。また、論文発表に対しては、独創性と将来性に富むと認められたものに『地球環境講演論文賞』が授与されます。 18日には、市民公開特別セッションとして「水環境と都市づくり」を企画しています。さらに、テクニカルツアーとして、北九州エコタウンの見学を17日に予定していますので、ふるってご参加いただきますようご案内いたします。 シンポジウムの概要(予定) 1.主 催 :(社)土木学会(担当:地球環境委員会) 2.後 援 :北九州市 3.日 時 : 2001年7月18(水)9:40〜17:30 (展示は11:00〜14:00) 7月19日(木)9:10〜16:50 (展示は 9:00〜15:00)
(『地球環境技術賞・貢献賞』の授与式は、閉会式に行います)4.場 所 :北九州国際会議場(北九州市小倉北区浅野3-9-30) JR「小倉駅」北口 徒歩7分
会場へのアクセスは北九州国際会議場のホームページをご覧下さい。http://www.iijnet.or.jp/kitakyu-cb/index.html
5.プログラム:プログラムの詳細は決まり次第、地球環境委員会ホームページに掲載いたします。その他、シンポジウムに関する最新情報についてもそちらをご覧下さい。http://www.jsce.or.jp/committee/global/
6.参加費 :
一般7,000円、学生4,000円(講演論文集代を含む、事前申し込み制)7.定 員 : 250名 8.申込方法 : 詳細は、学会誌6月号、または地球環境委員会ホームページをご覧ください。 問合先:土木学会事務局研究事業課
9.市民公開特別セッション「水環境と都市づくり」:TEL:03-3355-3559(直通) @日時:7月18日(水)14:00〜17:15 A場所:北九州国際会議場メインホール B参加費:無料 C定員:500名(事前登録の必要なし) D問合先:北九州市建設局下水道河川部水環境課(担当:上田) TEL:093-582-2491/FAX:093-561-5758
10.テクニカルツアー:@日時:7月17日(火)13:00〜17:00 A場所:北九州エコタウン視察(自動車、家電等のリサイクル工場、実証研究施設など) ※集合場所 北九州国際会議場玄関前 13:00 B参加費:2,000円(当日支払) ※締切日以降のキャンセルの場合は、参加費を徴収させていただきます。 C最少催行人員:25人 D申込締切:6月25日(月) E申込及び問合先:北九州市建設局下水道河川部水環境課(担当:上田) TEL:093-582-2491/FAX:093-561-5758
11.懇 親 会
:@日時:7月18日(水)17:30〜19:00 A場所:北九州国際会議場1F「ラプラージュ」 B会費:5,000円を予定 C申込先:当日、受付にてお申し込み下さい。 12.宿泊などの申込み :宿泊・航空券・観光などの申込みがありましたら、下記までご相談ください。 @申込及び問合先:JTB北九州支店「土木学会」係(担当:後藤・池田) TEL:093-521-2887/FAX:093-531-8486/E-mail:taikai_kitakyu@kys.jtb.co.jp
A申込締切:7月6日(金)13.その他:北九州市周辺では同時期に、「アジア」や「環境」が重要なキーワードとなる下記のような行事の開催が予定されています。あわせて参加を計画されるのも良いかと思いますので、ご紹介いたします。 ・北九州博覧祭 2001.7.4-11.4 http://www.city.kitakyushu.jp/~k0401050/index.html
・北九州学術・研究都市産学連携フェア 2001.7.23-26http://www.city.kitakyushu.jp/~k0407010/gakken/fair/gaiyo/index.html
・山口きらら博 2001.7.14-9.30http://www.pref.yamaguchi.jp/2001expo.htm
|