JSCE
土木学会

企画委員会

土木技術の将来ビジョン
―土木・建築分野における新技術の開発・促進戦略に関する公開ワークショップ報告―


三木千寿

本ワークショップは日本学術会議、土木学会、建築学会の主催により、平成12年6月20日13時から15時まで、日本学術会議講堂で開催された。参加者は約350名であった。土木学会企画委員会がその企画運営を担当した。本稿はワークショップの速報である。なお、本ワークショップのバックグラウンドについては、本稿の前の「土木技術の将来ビジョン」を参照いただきたい。

ワークショップの参加者(発言順)

前田 又兵衛氏  前田建設 代表取締役会長 

森地  茂氏    東京大学教授、工学研究科、社会基盤工学専攻

國島 正彦氏    東京大学教授、新領域創生科学研究科、環境学専攻

友澤 史紀氏    北海道大学教授、工学研究科、社会基盤工学専攻

松尾  陽氏    明治大学教授、工学部建築学科

伊藤 喜栄氏    大成建設常務、土木本部副本部長

松川 圭輔氏    千代田化工建設環境土木プロジェクト部、東京工業大学客員助教授

吉田  正氏    鹿島建設  土木設計本部、企画設計部 次長

藤盛 紀明氏    清水建設執行役員、 技術研究所長

司会 三木 千寿 

本ワークショップの趣旨

21世紀にむけての社会資本整備の課題として、既存施設・ストックの利活用、自然や環境との調和、高度情報化の推進、高齢化社会への対応、安全で快適な生活空間の創生、未利用空間の高度利用、人文・社会科学に立脚した国土基盤整備、国際市場への対応などが挙げられている。これらの社会資本に関わる課題はいずれも緊急性が高く、遅延なく、しかも可能な限り費用を縮減して実現していくことが技術者の使命であり、そのための新たな研究・技術開発が必要となっている。わが国の21世紀の科学技術を担う第二次の科学技術基本計画策定が本格的に始まっており、社会資本分野においても、研究開発の明確なビジョンを示すことが求められている。

社会資本整備の特徴として、その多くは公共事業であること、単品生産的であること、計画から実施までの期間が長く、しかも供用期間が極めて長いことなどがあげられる。このため、この分野においては、マーケット原理が競争的な研究開発を生み出す他の産業分野とはその環境やインセンティブがかなり異なっており、これが研究開発の推進を難しいものとしている。しかし、社会資本整備は公共事業が中心であることは、長期的な展望に基づいた、偏りのない、総合的な戦略が立て易いと言える。たとえば実際のプロジェクト実施のなかで研究開発を進める、あるいは新たな研究開発成果を事業に積極的に取り入れていくなど、他の産業分野では困難な技術開発推進のための戦略も取れることを意味している。

本ワークショップでは、社会資本分野で研究や新技術の開発を阻害している要因を除去し、それらを促進する方法を検討することを目的として実施するものである。さらに、新技術を活用しやすい入札契約の方向、具体的なプロジェクト実施のスキーム、それを試行するにふさわしいパイロットプロジェクトなどについて検討することを目的としている。

2.各パネラーの発言要旨

前田又兵衛氏  :土木・建築分野での技術開発のはたす役割、

建設は新しい経済・社会・文化など生活に密着したものであり、未来への豊かさを国民が実感できるものでなければならない。いままで、土木分野では新幹線、長大橋など、建築分野では超高層建築、ドームなどの大空間建築など、いずれも革新的技術開発が裏付けている。「欧米に追いつき追い越せ」の夢を持ってやっていた時代は官民一体とナって押し上げてきた。

建設分野での企業独自の研究開発は世界でも稀有なスタイルであり、成果も上がっている。しかし一部の独自開発を除いては輸入した技術を咀嚼して現場に立脚し、かつ日本に適した加工技術を開発してきた。民間が研究所を有するという日本固有の建設業の長所を伸ばして、短所を補完する、建設技術を引き出す手法とは官主導の技術に対する価値観の変化である。建設技術を引き出す手法とは国家プロジェクトを5年ごとに実施することであり、知的所有権の認知しかない。

森地茂氏 :これからの社会資本整備における技術開発の役割

技術立国のための技術開発とは具体的には何をさすのであろうか。製品で外貨を稼ぐことや、技術そのものが産業になること、また、ITのように産業の効率化などが産業競争力である。もうひとつは社会的課題への対応であり、地域競争力すなわち個々の地域の競争力をどのように高めていくのかであり、それが日本全体の発展へとつながる。そのために重要な産業立地環境整備という視点が抜けているのではないだろうか。

これからの公共投資は、日本では政府投資額(政府固定資本形成Ig)の対GDP比は日本が7−8%であるのに対し、欧米では2−4%の水準になっている。自然災害多発国であることや密集した住まい方の日本では欧米なみにまで落とすことはできづ、この中間的なレベルに落ち着くのではないだろうか。より良い生活を求めるには社会資本整備が必要である。このお金がない状況でどのようにそれを達成するかが議論の原点となる。

国際競争力を高めることも重要な視点である。アジア市場で建設業で20%程度、コンサルタントで10%程度、しかもそのほとんどがODAが現実。日本の建設業界は国内志向で固まっている。

どうすれば良いのだろうか。技術開発がビジネスにつながるような社会の構築が重要である。この分野の研究開発の阻害要因を何とかしなければならない。公平性を優先するあまり、入札制度が研究開発にマッチしてない。マニュアル外設計への対応はどうするのか。工期・時間の短縮といったところに技術力が出てくることもある。社会的費用の削減に関わる工法開発など、このようなことにInentiveを与えるような入札制度・発注制度になっていない。

國島正彦氏 :新技術の開発や導入を阻害している制度上の問題と改善策、

わが国の建設業は国際競争力に欠けるといわれて久しいが、海外建設市場の実態を調べると、品質はすばらしい、工期は守られる、安全管理や品質管理の手法はお手本になるほどである、ただし、赤字でさっぱり儲からない。そのだめな原因を日本の公共工事のやり方の骨格を構成する特性の中にあることを発見した。

それは建設工事請負契約後の契約金額の30−40%という大きな比率の前渡金と、建設のプロセスにおいて毎月毎月の出来高払い精算をしないで、竣工時点で一括して精算するシステムです。この日本独自の支払い方法を技術開発の観点から考えると、社会資本整備に対して、良いものを安く安全につくるために技術開発を行い、優れた技術者が十分に腕を振るう場にかけていると認識すべきである。すなわち、建設プロジェクトの開始に先だって立案した、工事の設計書、仕様書、施工計画、安全管理計画、環境保全計画などの内容が、工事のプロセスに従って適切に実施されているかどうかを、検査し、検収し、査定する、設計変更する、精算する、技術評価すること、これを工事竣工時点の一回だけで、著しく膨大な数量と品質が集積された状態で行うという、じつにおおらかなシステムだったといえます。このようなあまりにおおらかな気風と文化では、コスト縮減・技術開発・知的所有権の尊重などをいくら唱えても絵空事になりかねません。

高度な技術開発の競争力を保有する優れた会社が、なにもしないで40%のお金を貰うこと、発注者と受注者の技術者が十分に腕を振るえる場を定常的に設けていないこと、これらを改善し、国際標準とすることが、日本の建設新技術の開発・促進戦略のだい1歩である。

友澤史紀氏:建築分野からの新しい技術を引き出していく方策の提案。

社会資本のうち、公共投資による社会資本整備を公共事業であり、社会資本整備のすべてが公共事業ではない。社会資本整備における新技術開発戦略については、公共事業においてのみ考えるべきではない。公共事業費の減少、公共事業のコスト削減、民間事業のコスト競争の激化により、研究開発費の調達はますます困難となる。

対応の方向としては先ず第一に、技術開発に対するインセンティブの付与であり、その具体策としては、性能発注による民間主体技術開発の促進や、発注における独占技術使用の容認が挙げられる。

また、公的研究投資の充実も必要であり、具体的には事業費と別建ての建設技術研究開発費の創設し、大学や民間企業などに研究開発の直接発注をすることである。さらに、政策研究開発費を創設し、提案課題に対する研究開発計画の募集とその費用負担を行う。建築分野では。たとえば発注者、設計者、受注者とも新しい技術を自ら使って見ようという、他者との差別を示したいとの欲求が見られる、コスト縮減のための技術開発により、受注機会を得ようとする、など、新技術開発のインセンティブが働いてきた。

新技術に対する信頼性を公的に認定する制度が利用できることもそのような新技術を使うことを支援している。しかし、最近のコスト縮減競争の激化は、研究開発費削減を余儀なくしている。公共事業における研究開発の促進方策としては、建築部門における状況を参考にする。すなわち、性能発注とし、設計施工発注方式、ターン・キー方式などを導入する。設計コンペ、設計施工コンペなどを行う。国際コンペも行う。設計・施工・運営まで含めた発注方式、PFI方式を積極的にすすめる、保険制度、新技術評価制度などのよりリスク低減を図る。

松尾陽氏:建築分野における新技術の開発戦略

ここで行われている技術開発戦略に関する議論は21世紀の状況に対する認識からは正攻法と言えよう。すなわち高度成長の時代から成熟した社会の体質に移行するときに、国家的に新しいやり方が必要というのは共通の認識である。ただし、具体的にどのようにするかについては疑問である。シ−ヅ的な戦略、すなわち種をまけば育つような戦略があればよい、あるべきなのであるが見つからない。それではニ−ヅに対応した戦略を取ればよいではないだろうか。環境保全、高齢化社会、情報インフラの整備、既存施設のロングライフ化、メンテナンスのための技術開発などがそれにあたる。

3年前、建築学会会長声明として、建築物の寿命を3倍伸ばし、CO2の排出量を30%削減というターゲットが建築学会の目標とされた。個人的には寿命100年でCO2排出量を半分と言いたいところであるが、このようにターゲットを決めて技術開発を行っていくのも今後の一つの方法ではないだろうか。

伊藤喜栄氏:土木分野の研究開発の官民の役割と建設会社の研究所の将来像

基本的には国は国、民間は民間、大学は大学でしかできない研究開発を行うべきである。工法など民間が得意とする実用的研究は国の効かんは行うべきではない。民間に任せたほうがモティベーションも高く、競争の中から優れた技術が生まれるから効率的であろう。国の研究機関では未来の国民の生活と産業発展を支えるのに不可欠な行政に反映される基礎的研究である。

民間の技術開発は費用対効果から厳しく評価されるようになるであろう。投資しただけのリターンがない研究活動は株主の満足を得られず、その存在理由を問われるようになる。建設企業の研究開発活動は次の2つに類型化されるであろう。

総合建設業者の技術開発は要素技術よりプロジェクト対応の総合技術の優劣がコスト競争力を生み出すようになる。換言すれば設計と施工法を合わせた優れたコンセプトの創造が重要であり、もし、そのコンセプトの実現に特殊な要素技術が要求されれば、はじめてそのための技術開発投資が正当化されるであろう。

専門工事業者の技術開発は自社の商品となる要素技術の投資開発投資は正当化される。とくに性能仕様になればリターンが期待されるから投資意欲はさらに強まるだろう。総合建設業者もいまはこの分野まで研究投資しているが、技術による市場独占はできず、自社の入手プロジェクトばかりを市場としているかぎりでは成り立たない。

建設会社の技術研究所の将来像、シナリオを想定してみた。

ステップ1:研究テーマを実用的に絞り、経費を削減する。

ステップ2:技術研究所どうしでの共同研究。研究のための研究との批判も出てくる。

ステップ3:技術研究所を独立させ、市場にまかす。外部需要があるかどうかが問題。

ステップ4:コアになれる技術者のみを残し、プロジェクト毎に採算を見て外部リソースを使う。独立した、実力のある民間の研究機関、専門コンサルタント、市場に開かれた大学など、技術を調達する市場の整備が前提となる。

松川圭輔氏:海外プロジェクトにおける技術開発と技術調達の実態

プラント工事などの海外民間プロジェクトではコントラクター間で熾烈なコスト競争を行っており、プロジェクト毎の予算での研究開発費を計上することは不可能に近い。むしろ、最適な技術を世界から調達することができるのだから、自社開発にこだわる必要もない。いずれにしても最も必要とされるのがコスト削減のための技術である。システム全体で一定の性能を出せばよいのであって、その中で可能な限りコストを削減していくことになる。すなわち、性能規定型やVE方式などがプロジェクトに導入されているため、高付加価値ではあるが高価な技術が必ずしも使われるとは限らない。また、そのような環境下ではシンプルな工法などのアイデアが生み出される。

たとえば高温多湿の環境にあるアラビアでの最近のプラントの建設プロジェクトでは設計寿命30年というRCにとって厳しい性能要求が明確に要求されており、それに対する代替案としてシリカヒュームコンクリートとエポキシ系コーティングの組み合わせや高炉セメントとエポキシ鉄筋の使用、あるいは通常のRCと電気防食の組み合わせなどさまざまな技術提案がなされる方向に変化してきている。

技術提案型のプロジェクトでコストを削減する欧米の方法と比較すると、国内の公共プロジェクトにおいては、技術開発、コンサルティングは無償のサービスであり、ソフト業務への対価がないこと、また、オーバースペックや建設コストに対して無関心である。また、実証・実績のある技術への固執が強く、新技術を認めようとする素地が極めて低いことなどが問題と考えられる。海外での基礎研究・技術開発は公共が主導しており、コントラクターは技術研究所を持たない。大学が研究プロジェクトの主体となっている。また、特許、オリジナルアイデアを重視する風土があり、研究成果の国際的PRや国際標準化についても熱心である。

吉田正氏:ソフト技術の価値認識と対価向上による新技術の研究・開発促進

技術開発はハードとソフトの融合で成り立っていると言われている。ソフト技術の定義は曖昧ではあるが、「ソフトとはハードの利用方法、もしくは利用の仕組み。」と表現されている。ハード技術が重要であるのは言うまでも無く、これからも同分野の研究開発は不可欠であるが、現在特に土木分野で求められているものはソフト技術では無いだろうか?それは効率化、合理化、高度化の技術であり、価値創造型の技術でもある。さらに、ソフト技術における高価値とは創造性と独創性であり、技術開発において最も必要とされている要素でもある。

ソフトはプロジェクトの構想、計画、設計、施工、供用から維持管理に至る全ての段階で効果を発揮する。コストダウンについて考えれば計画・設計段階が最も効率的であると言われているにもかかわらず、現実にはソフト技術の活用が遅れている。ソフト技術、特に重要といわれている創造性、独創性が育成されない原因としては、公共事業においては相当品の概念が主流であること、新技術・新工法に対する積算基準が無いこと、前例が無いものに対して否定的な風土があること、評価基準・判断基準が曖昧なこと、単なるアイデアとしての扱いとされ価値が軽視されていること、特許などソフトの権利保護システム・制度の不整備などが考えられる。

そのため、新技術の開発や促進のためのキーポイントとしては、第一にソフトに対する対価の明確化が挙げられるのではないだろうか。さらにフィー(報酬)システムの導入は、エンジニア−の地位向上にもつながる重要な点であり、我が国においても早急にその整備が期待される。

新技術の技術開発体制改革のステップとして、

フェーズ@新しい研究開発体制の検討を官・学・民・学会で検討してシステムを整備し、

フェーズAパイロットプロジェクトを実施して課題抽出とその検討を図り、

フェーズB新評価基準、制度を策定し、

フェーズC新制度による実プロジェクトへの業務展開を図る

というプロセスが考えられる。特に、パイロットプロジェクトはこのような新しいシステムの導入の際には不可欠であり、今後一層の具体的な議論が望まれる。

藤盛紀明氏:建設分野の今後の展開と研究開発の方向、建設分野が採るべき戦略。

環境、情報、エネルギー、性能保証、安全で安心で暮らせる社会は国家的・国民的課題であり、世界人類的課題といえる。環境保全・創造産業としての建設業を志向しなければならない。

そのためには先ず「ゼネコン」の響きに代表される建設業へのマイナスイメージを早急に払拭する必要がある。その唯一の武器は世界をリードする技術の開発による社会貢献である。建設産業は環境を保全し創造していく産業であり、建設産業が地球を守るというコンセプトであり、建設産業は「土建ビジネス」から「環境保全・創造ビジネス」に脱却する必要がある。米国のA/E/C産業はブローカーであるのに対して日本のそれはライフサイクルパートナーと言える。米国のR&D戦略にはCERFが有名であるが、それは産官学結集のR&D費要求ロビー活動機関であり、CIIは民間発注者を巻き込んだR&D組織と、日本とそもそも発想が異なっている。

日本の建設業は極めてドメスティックである。国際企業へ脱却するには世界の人々に感謝される企業であらねばならない。情報は発信するところに集まる。そのために世界の頭脳を結集できる「国際環境技術研究所」を設立し、世界の頭脳を招聘するのが良い。そのために米国CERFやヨーロッパ、アジアなどの関連機関と連携するのがよい。それはバーチャルなものでもよく、研究開発から始め、国際マーケットを見つけていく。日本のODA予算の30%程度が環境関係と言われている。この費用の一部を国際環境研究所に注入する方法もある。地球の環境を守り、育てる産業への国家的R&D費の投入は国民の理解の得られるところである。

3.議論の集約

(1)現状の認識

・ これからの公共投資は現在の60%程度のレベルになり、そのような状況下で社会資本整備を行う必要があり、そのキーとなるのが技術開発である。

・ 現状は建設産業分野では研究開発はビジネスにつながらないことから、他産業分野に比べて低調であり、企業経営への貢献を疑問視する声が高まっている。

・ 建設産業は「土建ビジネス」から「環境保全・創造ビジネス」に変る必要がある。

(2)技術開発がビジネスになるような環境、体制つくり

・ 民間のインセンティブを高めるような入札制度、発注制度に変えていく。

・ 性能発注とし、デザイン−ビルド方式、ターンキー方式、VE方式、PFI方式など。

・ 性能発注ではシステム全体で所要の性能を出せば良いのであり、コスト縮減の技術開発を導く。

・ コスト縮減を可能とする術開発により発注機会が高まること、そのような技術開発が利益につながることは民間技術開発のインセンティブを高める。

・ 発注における独占技術使用の容認や、プロジェクトの一社独占もありうる環境作りも重要である。

・ 時間をキーにした評価が必要である。工期など時間短縮や社会的費用の削減に関わる工法などに技術力がでることもある。

・ 国や自治体も「節約して得をする」体制にする必要がある。

・ 現在の前渡金制度と工事竣工時点のみでの検査検収制度をやめる。このような制度は優れた技術者がその腕を振るう場をなくする。

(3)新技術導入に対するインセンティブ

・ 新技術に対する信頼性を公的に認定するシステムが必要である。

・ 技術開発に対して正当な対価を支払う制度、特にソフト業務については無償の単なるサービスといった扱い。

・ 前例が無いものに対して否定的な風土の改善をはかる。

・ 特許などのソフトの権利保護システムや制度を整備する。

(4)いま建設業に必要とされている技術は

・ 総合建設業者の技術開発はコスト競争力を生み出す技術開発である。

・ それはペイするかどうか、すなわち要求性能を満たした上でのコスト削減が目標となる。

・ コスト競争力を高める技術とは要素技術よりもプロジェクト対応の総合技術やソフト技術であり、効率化、合理化、高度化の技術。

(5)研究・技術開発における産官学の役割分担の方向

・ 工法など民間が得意な分野は国機関は行うべきで無い。競争の中から優れた技術が生まれる。民間の技術開発は今後費用対効果で厳しく評価され、ペイしないものは成り立たなくなる。

・ 国の研究機関は行政に反映される基礎的研究を担当する。

・ 大学は基礎的な、汎用性のある、また、先端的な研究のコアとなるべき存在である。しかし現状ではそれは極めて困難である。大学の研究は当てにされていない。

・ 大学を中心とした研究を活性化するには米国のNSFによる研究プロジェクトのような予算措置や体制づくりが必要である。

・ 今後大学はもっと実用的なことを民間と共同でやる、またそのような期待にこたえられるような実力が求められる。

・ 民間はソフト技術志向であるが、ハード面の研究もきちんと実施していく必要がある。研究設備からみると、国機関が大規模、民間が中規模、大学が小規模となっているが、人材まで含めて研究リゾースの最適配置を考える必要がある。

・ 官は決して相撲を取ってはいけない。官の役割は土俵を作る事と、行司役に徹するべきである。

(6)基礎的な研究、先端的な研究・技術開発を推進するには

・ 「欧米に追いつき追い越せ」の時代は官民一体となって押し上げてきた。しかしもはや、民間で実施する理由は見つからない。

・ 公的機関、大学等が主導していく必要がある。

・ 公的研究投資を充実することが不可欠である。具体的には事業費と別建ての建設技術研究開発費を設立し、大学や民間企業などの研究開発を直接発注をすることである。

・ ただし、大学の研究設備は貧困かつ老朽化しており、また研究支援体制も整っていない。

(7)具体的な研究開発実施の戦略

・ 建築分野では学会長声明として建築物の寿命3倍、CO2の排出量30%削減というターゲットが示された。そのようなターゲットを決めての技術開発も一つの方法である。

・ 現行制度のままでは前に進めることは極めて困難である。パイロットプロジェクトを実施し、そのプロセスや機関などのシステム整備を計る。

・ 大規模、重点的技術開発プロジェクトとして、重点投資型基礎研究プロジェクトの企画と、その基礎研究を実用化する実証プロジェクトへの継続が考えられる。その実証プロジェクトの遂行体制としては、一研究機関と建設会社をアドバイザーとコントラクターとして組み合わせた分業型を採用すべきである。

・ 大学および大学から派生した企業との共同研究機関などのよる小規模、ベンチャー型プロジェクトの支援ファンドや支援体制も必要である。

(8)国際化と国際競争力

・国際競争力を高めるには、開発技術の国際的PR,国際標準化の支援も重要。

・ 先進国・開発途上国の両者のために、国際環境技術研究所の設立を提案する。これは日本が世界に貢献し、世界のリーダーになるために、また、日本の建設業が国際マーケットで勝つために必要である。

おわりに

進行のまずさと時間が2時間と短かったことのため、ワークショップとしてのきちんとした成果を導くことができなかった。しかし、いままではほとんど表に出てこなかったような、いってみれば本音の議論がある程度は出来たのではと考えている。本ワークショップはこのテーマについての取り組みの第一歩と捉えていただきたい。

ワークショップの終了後、

72名の方からご意見を頂いた。今後、その内容も十分反映させながら、土木分野における新技術の開発・促進戦略の方向を探って生きたいと考えている。


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