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所在地:横浜市中区新港町 地図 | |||||||||||||||||||
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・汽車道は、横浜が総力をあげて再開発している「みなとみらい21」計画のほぼ中心部に位置し、ドッグヤードガーデン・日本丸メモリアルパークなどと、赤レンガパーク・山下公園などを結ぶ歩行者空間であり、その設計・デザインの良否が歩行者動線を決定付ける位置にあるといえる。本設計では、臨港鉄道のレールやトラス橋、石積み護岸などの歴史的資産を巧みに保全・活用し、低ポール式照明、透過性の高い防護柵、季節感のある植栽、一時的に滞留可能な芝生広場などによって、優れた歩行者空間が創出されており、その期待に十分応えていると感じられた。事実、多くの人々が、単に通過するというより、楽しんで回遊しており、そのことは実証されているといえよう。特に、「ナビオス横浜」のホテルビルト部に開口部を設け、汽車道から赤レンガ倉庫への見通し景観を確保したことは、「動線設計」という意味において、優れた手法であり、最優秀賞に値すると考えた。(大熊) ・港の産業景観がかくのごときヒューマンな都市風景へと変貌しても、世界各地のウォーターフロント(再)開発を見れば、異なことではない。近代遺産の鉄路をプロムナードとして残す手法もトロントなどに見られる。したがって、最優秀作としての評価は、かくのごとき眺望と気持ちのよい空間を見出し、造り出した、そのことに対してなされる。そして、赤煉瓦倉庫群への通景を確保するナビオス横浜の開口部である。エッフェル塔やグランダルシュを思えば、都市軸、視軸を通すべく建築にボイドをつくることは当たり前のはずだが、わが国ではそのよき例を見ない。たとえば大阪の梅田スカイビルのボイドは、壮大であるが、都市デザインとは関わりをもたない。それに対してこの空洞の何と実のあることか。汽車道自体のデザインは、海面上に確かな姿で浮き彫りにされている堤と鉄橋をよく生かしている.しかし、移設の港三号橋は疑問である。門司港レトロ地区のコメントで述べた”引用のデザイン”の面でも、一号橋、二号橋とのデザイン的連続性の面でも問題がある。(榊原) ・横浜は確かにアーバンデザインが上手い。完成した汽車道を通って改めて思う。持てる資源をきちんと活かして嫌味のない意匠に仕立てるのは、アーバンデザインの基本である。しかし基本を常にはずさないことは容易ではない。私事だが、関内から石川町、山手あたりまでが高校、大学時代の遊び場だった。横浜の正統派のアーバンデザインが次々と実現していった頃である。その延長線上に現在のMM21も汽車道もある。20年以上に及ぶその着実な歩みは、何がアーバンデザインにとって重要かを正確に見極める眼力と、それを形にする柔軟な手法、そして仕上げの意匠のセンス、このいずれが欠けても実現しなかったであろう。運がよかっただけではない、この間の無数の関係者の努力に対しての敬意が、今回の最優秀賞の意味だと私は考えている。一方で、汽車道がただの廃線であった頃にはあったあの街の詩情が時とともに失われ、やけに明るく子供っぽくなったことにはさびしさをもおぼえている。(佐々木) |
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