Civil Engineering Design Prize 2003, JSCE
Civil Engineering Design Grand Prize 2006, JSCE
The Kinoppu Coast Project - Wave-shaped constructions vitalize the people
所在地:青森県むつ市大畑町佐助川地先  地図
事業者:青森県下北地域県民局地域整備部
授賞対象者
氏名
所属(当時)
役割
角本孝夫
特定非営利活動法人サステイナブルコミュニティ総合研究所 理事長 ・懇話会での意見とりまとめ
・全体計画に対するコンセプト形成
清野聡子
東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学科 助手 ・デザインアドバイス
・コンセプト提案
七島純一
大畑振興建設株式会社 ・施工計画の提案
・施工及び施工管理
特定非営利活動法人サステイナブルコミュニティ総合研究所
・ワークショップによる住民意見取りまとめ
・基本コンセプト立案
青森県下北地域県民局地域整備部
・木野部懇話会の意見を取り入れた先進的な事業方針の決定と調整
講評
デザイン賞の審査の基本は実見にある。実際にものを見て審査員が感動するのかどうかは評価基準の一つである。
下北半島を北に車を走らせ大畑町中心部を通り、しばらく行くとやっと木野部海岸に到着する。初冬の早朝である。道路沿いに大きな看板がでている。それで概要を把握し、木野部海岸の置磯工を俯瞰する。大きな岩が点在し、磯と消波を兼ねた、構造物ともいえないような構造物が見える。「これか、こんな海浜構造物が成立するんだ」と衝撃が走った。大きな岩を海浜に並べ、抵抗を大きくし、消波や沿岸流の流速を抑え海岸浸食を防止する。あわせて磯としての機能を持たせサザエやアワビ、魚類などの生息場にしようという試みである。この地域では、伝統的に山から石を切り出し海に入れて漁場を育成するちく磯と呼ばれる取り組みがあった。それを参考に現代技術として置磯工を設置したのである。大きな岩をランダムに並べた区域は波が静かで、海岸には砂が堆積している。消波効果や海岸浸食の防止効果は確かに見られる。
近づいてみる。ウミネコが置磯工のまわりを飛び回り、初冬の青黒い海と、どんよりとした雲からもれる光の風景はなんとも美しい。
大畑町はイカで有名な町である。遠洋漁業にばかり頼っていてはだめだと、地域の人たちは磯に着目した。木野部海岸の取り組みも住民の人たちとの協働の取り組みである。竣工後も地域の人たちがモニタリングを続けている。
大きな外力を受けたときにどのようになるかという課題は残ろうが、最優秀賞として賞賛を受けた作品である。(島谷)

わが国はいうまでもなく周辺を海に囲まれた島国であり、海岸線はわが国の景観にとって重要な位置づけにあることはいうまでもない。しかし、治山事業による土砂流出量の減少などの要因による海岸線の浸食の顕在化や、海岸線までの都市開発などの影響により、どこの海岸にいっても、波から町を守る高潮堤や、浸食を防ぐ離岸堤をはじめとするさまざまな施設が存在し、美しいというには程遠い海岸景観を呈している場合が多い。木野部海岸のこの消波堤は知らない人が見るとただ砂のついている海岸のやや沖合いに岩が転がっているだけの普通の風景に見えるかもしれない。しかし、岩の見え隠れする海面の下には人工の構造物が存在し、海岸の浸食を防ぎ養浜するという機能、さらには様々な生態を復活させるといった機能を保障しているのである。聞くところによると必ずしもプロではない集団が試行錯誤を繰り返しながら、この場にかって存在していた磯場の風景を範とし河川における近自然工法などを参考に作り上げたそうである。今のところ波や潮流の影響の下安定してはいるが、きちんとした技術的な評価はまだ時間がかかるのかもしれない。風景としてもこれがすべての海岸に適用可能か否かは考えるべきである。しかし、昔の風景を範としたからこそ取り戻せた普通の風景が、現代の材料と技術で実現したことは評価されてしかるべきである。今回は厳冬の時期に現地を見たが、是非良い季節に再訪したい。(天野)

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