川崎ミューザデッキ

所在地:神奈川県川崎市JR 川崎駅西口 地図
事業者:都市基盤整備公団 神奈川地域支社(当時)

 

受賞者

氏名
所属(当時)
役割
松井幹雄 大日本コンサルタント株式会社 景観デザイン室 室長 ・デザイン統括・デザインコンセプト立案
大野美代子 株式会社エムアンドエムデザイン事務所 代表 ・デザインコンセプト立案・橋梁デザイン
池上和子 株式会社エムアンドエムデザイン事務所 ・橋梁デザイン
松村浩司 大日本コンサルタント株式会社 景観デザイン室 ・橋梁予備設計および詳細設計
原隆士 大日本コンサルタント株式会社 東京支社横浜事務所 ・橋梁詳細設計
松本淳一 株式会社 都市整備プランニング ・設計コーディネート
鵜飼幸雄(故人) 都市基盤整備公団 神奈川地域支社 居住環境整備・再開発部土木課長 ・事業計画および実施主体
中島龍興照明デザイン研究所 ・照明デザイン
都市基盤整備公団 神奈川地域支社(現:都市再生機構 神奈川地域支社) ・プロジェクトの基本構想立案
・関係者とりまとめ
川崎市 まちづくり局 市街地開発部 市街地整備推進課 ・橋梁の維持管理
・市街地開発事業主体

 

講評
 都市の再開発事業は、駅前広場などの公共施設や駐車場の整備を行い、地域の新しい活力拠点の形成に寄与することが出来る。川崎ミューザデッキは、JR川崎駅西口地区の市街地再開発事業に伴い、駅に直結している既存の東西自由通路と、新設される再開発ビル(ミューザ川崎)を連結するデッキとして建設されたもので、完成後、7年が経過している。川崎駅の西口では、ミューザ川崎の後に、ラゾーナ川崎プラザもオープンしており、都市の再開発の活気を実感できるエリアである。
 ミューザのデッキ上は、川崎駅側の自由通路からミューザ川崎に向かってゆるい右カーブを描いており、カーブの外側から内側に向かって、外側に傾けられた支柱から片持ち構造の半透明のシェルターが設けられている。橋上の照明は、シェルターの横梁と高欄支柱に、排水管とともに組み込まれている。
 デッキ上からバス停が並ぶ桁下に下りると、箱桁下フランジを曲面加工した連続鋼箱桁 が美しい曲面形状をなしている。桁のフェイシアラインは、シャープにエッジがきいている。また、桁下には照明を組み込んだ2種類の化粧板が使い分けられている。さらに、橋脚は丸柱で、アルミスパンドルで外装されている。
 デッキの上と下とでは、異なる趣を楽しめる都市内の構造物である。(猪熊)

 

 当然のことであるが、丹念にデザインされたものが、きちんと施工されているかどうかは現場に大きな差を表す。このデッキは見た瞬間に「ああ良く出来ているな」と直感できる。それは特にカーブを描くアルミパネルやガラス面の仕上がり、また箱桁下のフランジのアール加工、二種類の天井版と照明の収まりなど、かなり難しいディティールにも拘わらず、精度はなかなかのものである。しかもその苦労を感じさせないさりげなさがまた気持ちが良い。
 7mというかなり広いデッキの幅員に対し、約半分近くを占めるキャンチレバーの軽快なシェルターがこのデッキの一番の見せ場である。細かく見ると箇々の断面や部材などは決して華奢では無く、柱の構造もダイナミックのだが、全体として重さを感じさせない、とても軽快で綺麗なシルエットである。これもやはりデザイン力である。ペデストリアンデッキとしては構造、デザイン、施工、三拍子揃った力作である。少し残念だったのはこんな良い見本がありながら、同じ広場にその後つくられた、オーバーな吊り構造のバスシェルターであった。(南雲)