9月13日(木)13:00〜13:45広島大学サタケメモリアルホール
講 師 石井 弓夫(いしい ゆみお) 平成19年度土木学会長
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講演要旨
日本の土木技術者は、明治維新(1868)では日本の近代化、太平洋戦争敗戦(1945)後は戦災復興、平和国家建設、高度経済成長という国民の目標を実現して社会を発展させるために、百数十年に渉り、社会資本整備に協力してきた。社会資本の目的は、国民に安全、便利、良い環境を提供することにより社会の発展を支えることにある。国民の努力、土木技術者の努力により社会の発展という目標は達成されたが、それは同時に国民に社会資本に対する関心を低下させることにもなった。その結果、'90年代より、社会資本整備に投ずる資源は大きく制約されるに至っている。 現社会は膨大な社会資本によって支えられているのであるが、この社会資本は社会の発展に対応して新規の投資、維持管理の投資を行わなければ陳腐化、老朽化し社会の要求に応えられなくなるのは必然である。近年の阪神淡路大震災、能登半島震災を初め、毎年のように起こる洪水、渇水災害、減少したとはいえ年7000人を超える交通死者、連日の交通渋滞、大気や水の汚濁、景観の破壊などは、社会資本の不十分さが現れたものである。 我々土木技術者には、社会資本を整備し、維持・更新し、市民生活を支えていく責務がある。土木学会は、このような観点に立って、社会資本の現状を定期的に科学、技術の立場から評価し、その情報を国民に提供し、社会資本の重要性を国民に理解して頂くこととしたい。すでにこのテーマに取り組んでいる英土木学会ICEや米土木学会ASCEの例を参考としつつ、日本の実態に即した独自の方法論を確立するよう、検討を開始した。 2007年9月の土木学会全国大会(広島)の会長特別講演会では、この研究成果を生かし、日本の社会資本の現状の問題点、評価指標と基準の考え方について中間報告をすることとしたい。 |