白川第3送水管新設工事見学レポート
毎日の生活を支える水道事業
阪神淡路大震災、東日本大震災などの大地震による水道施設への被害が相次いでいるなかで,水道施設は地震対策への対応が求められている。札幌市では,地域水道ビジョンである「札幌水道長期構想」から各政策の実現に向けた取り組みを行っている。その内容として,将来の需要増に伴う送水能力の確保と、災害時及び老朽化に伴う更新時においてバックアップ機能、安全性向上を目的とした送水施設の二重化を図ることを目標としている。また送水管路を耐震性の向上による事故リスクの回避、災害時における応急・運搬給水拠点として信頼性・機能性の高い送水システムの確立を目指している。その取り組みの一つに,今回見学させて頂いた白川第3送水管新設工事がある。
写真−1 工事概要説明時
工事目的と工法
札幌市の白川浄水場と各配水池を結ぶ白川第1、第2送水管は札幌市水道の給水約80%を送水する大動脈となっている。これらの送水管は劣化による更新を控えるとともに、災害・事故による折損事故があった場合に代替する送水施設が存在しないのが現状である。白川第3送水管新設工事は、安全かつ安定した送水システムとして機能させるため,白川第3送水管を整備することで、既設の送水管の代替機能を確保し,緊急時の給水に対応できる災害に強い送水システムを確立する目的がある。
写真−2 交換後のカッターウィング
建設にあたってはシールド工法を採用している。この工法は、カッターウィングによって掘削された土砂を不透水性と、流動性を持たせた泥土に変換し排出する。この時は坑内に発生する土圧と水圧に注意し、掘進量と排土量のバランスを図りながら掘進する。特徴としては、土質に対する広い適応性があることや、発生土処理に大規模処理設備を必要としない、不透水性の泥土と山留作用により湧水を防止することなどが挙げられる。
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本工事では、玉石混じりの土質を含む小口径の長距離シールドは実績が少ないこと、また工期の延伸につながるため両端発進・地中接合の方法を採用している。
縁の下の力持ち
白川第3送水管新設工事現場は周囲には住宅や公園、学校などが建つ場所にあった。現場近くはとても静かで、工事現場自体も地上に出ている部分は少なく、現場外からではこの地下でシールド工事が行われているとは想像がつかなかった。この現場を見学し、改めて土木分野は「社会の縁の下の力持ち」という言葉そのものだと感じた。送水管は完成しても人の目に触れることはないのだと思う。しかし、この送水管は私たちの生活を常に支え、災害時や緊急時の支えとなっていくものである。社会を支えていると思えることが土木技術者の誇りとなっていくのだろうと思った。私たちもまた、このように社会を目立たないところで支える土木に関わっていけることを嬉しく感じた。
写真−5 記念撮影