網走港帽子岩ケーソンドックおよび網走港湾見学
網走港湾帽子岩ケーソンドック
北海道東部に位置する網走に存在する網走港湾帽子岩ケーソンドックは、天然の岩盤を掘削し、それを壁面に利用しているケーソン製作専用のドライドックであり、寒冷地海洋環境下のコンクリートケーソンによる築港技術を確立したこと、完成から80年以上たった現在も現役として機能していることなどが選奨理由となり、平成18年度土木学会選奨土木遺産に認定されている(図−1、図−2)。帽子岩ケーソンドックは、網走港西防波堤と北防波堤の間の平坦部に位置しており、構造は長さ70m、幅19.5m、深さ7.2m、開口部は16mで、ドック内でケーソンを作り完成すると海水を入れて浮かせ、開口部からえい航して設置場所まで移動させる仕組みとなっている。大型バス約100台分の水を注水でき、一辺15.0m喫水7.8mまでのケーソンが製作可能である。また、帽子岩ケーソンドックは大正12年11月頃に建造された。主に大型のケーソン製作に利用され、これまで500函余りのケーソンが製作されている。
図−1 網走港帽子岩ケーソンドック
図−2 土木遺産認定プレート
網走港
網走港は、北海道北東部、オホーツク海に面し、網走川の河口部に位置する港湾である(図−3)。網走港は、大正時代から避難港として整備が行われ、昭和53年に重要港湾に指定されたことで商港としての整備が進められてきた。現在は、北見市、網走市を核とした北網地域の産業・生活に係わる物流を支える港湾として重要な役割を果たしている。また、冬季には流氷観光砕氷船「おーろら」が就航するなど冬期の流氷観光拠点としても活躍されている。
図−3 網走港(橙丸:観測船乗船場、矢印:現場見学会における航路)
現場見学
2011年10月28日、北海道網走市の網走港帽子岩ケーソンドックおよび網走港を国土交通省 北海道開発局 網走開発建設部の方のご厚意で観測船に乗船し、見学をさせていただいた。こちらの2カ所は国土交通省 北海道開発局 網走開発建設部が管理しており、今回いろいろな話を伺うことができた。
@網走港湾帽子岩ケーソンドック
実際に西防波堤を渡り帽子岩、ケーソンドックを間近で見学することができた。しかし見学した期間には、すでに今年度のケーソンドックの製作が終了しており、残念ながらドック内は海水で満たされており、製作している様子を見学することは出来なかった(図−4)。
ケーソン製作の様子を実際に見学することは出来なかったが、ケーソン製作の工程について資料を利用し、説明をしていただいた(図−5)。
図−4 左:海水で満たされたケーソンドック、右:見学している様子
図−5 ケーソンドック作成の様子(北海道開発局 網走開発建設部作成資料参考)
ケーソンを製作するには、まず始めにケーソンドックゲートが取り付けられ、外からの海水が浸入しないようにされ、完全にゲートが取り付けられた後、ドック内から海水が排水され、ケーソンの製作が始められる。余談ではあるがケーソンの製作には、トラックなどの大きな車両が利用されるため、幅の狭い西防波堤の通行は、実際に通行してみた感想として、通路の横から波しぶきを受けるなど、危険が伴う中での作業であるため、非常に大変だなと感じた。ケーソンが完成した後、ドック内に海水が注水され、浮力によりケーソンが浮上する。その後、ドックゲートを取り外し浮上しているケーソンを引き出され、実際に利用する現場に運ばれる。また、ここで製作されたケーソンは知床のウトロなどで利用されている。
A網走港
国土交通省 北海道開発局 網走開発建設部のご厚意により、網走港湾を観測船に乗船し、見学させていただいた(図−6)。
図−6 観測船
網走港湾内の見学は図−3で示す航路である。観測船に乗船させていただいたことで、普段見ることの出来ない、海上からの帽子岩やケーソンドック、風景を見ることができ、非常に良い経験をさせていただいた(図−7)。
図−7 左:船から見た帽子岩、右:船から見たケーソンドック
その後、見学日当日は凪いてはいなかったが、大時化ではなかったため、ご厚意で防波堤の外まで見学をさせていただいた。防波堤には消波ブロックが新しいものと古いものとが重ねられていた(図−8)。これは現在、気候変動の影響であるかは明確ではないが、波高が以前よりも高くなっているため、港を保護するために大きな消波ブロックを新たに追加されたためである。
その後、河口付近の網走川を見学させていただいた。網走川の右岸側のコンクリートブロックが老朽化しており、コンクリートの中の鉄筋がむき出しとなっていた(図−9)。
これに対する補修工事は財政的な問題などがあるために一度に行うことが出来ず、数年をかけて行われるようである。
図−8 防波堤に存在する消波ブロック
図−9 老朽化が進んだコンクリートブロック
見学時は、時期が遅くケーソンの製作や工事の様子を見学することが出来なかったのは残念であったが、観測船に乗船させていただき、自分たちが学んできたことが実際にどのように利用されているのかを学ぶことができたことや、工事などの計画や管理を行っている開発局の方とお話し出来たことは非常に良い経験となり、勉強になった。
終わりに
今回私たちは、帽子岩ケーソンドックおよび網走港を見学させていただいた。見学には観測船に乗船させていただいたことで、普段見ることの出来ない視点から港湾を見ることが出来、非常に貴重な体験を行うことが出来た。しかし、見学しに行った時期が遅く、帽子岩ケーソンドックで実際のケーソン製作を見学することが出来なかったのは残念である。私たちが住んでいる北海道に土木遺産が存在するので、機会があれば皆さんもぜひ見学しに行かれてはいかがだろうか。
図−10 現場見学会終了後の集合写真
<謝辞>
今回の執筆にあたり、現場見学会や資料の提供など、ご協力いただいた国土交通省 北海道開発局 網走開発建設部 網走港湾事務所の方々、ならびにVISITに参加していただいた方々にはここに感謝の意を表する。