札幌大橋・新石狩大橋・苗穂交差点JRボックスカルバート 工事現場
概要
札幌開発建設部発注の札幌大橋(橋梁上部工)と新石狩大橋(橋梁下部工等)の現場およびJR北海道発注の苗穂交差点JRボックスカルバートの現場を訪問し、札幌道路事務所の高田副所長をはじめとする皆様方、公務技術センターの横田主席に工事の説明をして頂きました。
道央都市圏である札幌は、全道の人口や商品販売額の約半数を占めており、経済・産業の中心となっています。しかしながら、全道の港湾・空港貨物の七割以上を占める等、物流が集中することから道央都市圏では渋滞が多発しています。そこで、札幌大橋ならびに新石狩大橋を建設することで札幌圏の安定した物資輸送ルートを確保するとともに、道央都市圏の物流および産業の拠点として重要な役割を担う石狩湾新港への利便性向上が期待されています。
札幌大橋
札幌大橋は、鋼コンクリート合成床版を採用しており、高い耐久性による維持管理の省力化に加え、床版の鋼部材が型枠・支保工の役割を果たすことで型枠・足場・支保工が不要となり短工期施工が可能となっています。また、この橋の施工はベント工法、トラベラークレーン工法という特徴的な施工方法をとっています。まず、河川を跨ぐ構造の橋であることから、陸上部に橋脚等を仮受けする支柱(ベント)を設置し、トラッククレーンにて陸上部を架設した後、その上へトラベラークレーンを組み立てます。次に、運搬台車にて架設橋を運搬し、トラベラークレーンにて逐次架設を行なっていきます。トラベラークレーンの前進に合わせて桁を架設していき、中央径間の架設を行う工法となっています。
新石狩大橋
新石狩大橋では、計画・設計段階において、3次元モデルCIM(Construction Information Modeling)を用いることで、設計や維持管理の容易化を図り、景観や環境のシミュレーションにより関係者間での迅速な合意形成に寄与しております。このモデル化は、構造が複雑になる部分において特に大きな効果が得られ、新石狩大橋では掛け違い部の上部・下部工接点部および隣接橋との構造取り合いの確認、ニューマチックケーソンの施工が予定される低水路部において実施されました。
苗穂交差点JRボックスカルバート
苗穂交差点のJRボックスカルバートでは、地下構造物であることから、メンテナンスの容易さや土被りを勘案してアール・アンド・シー工法が採用されています。この工法は、軌道や道路の防護工として矩形断面の鋼製リーフを用いており、設置するボックスカルバートの外縁に合致するように、あらかじめ横断区間の全長に貫通し、その端部に刃口を設備したボックスカルバートを据え付け、ボックスカルバート内で掘削しながら箱型リーフを押し出すと共にボックスカルバートを押し入れて、箱型リーフと痴漢設置する地下構造物の設置工法です。また、施工地域である北海道が寒冷地となっており、冬季において地盤が凍結、凍上して軌道を持ち上げてしまうことが考えられます。そこで、本ボックスカルバート施工では凍上防止対策工法がとられます。まず凍上現象というのは、土の間隙水の凍結圧力が逸散せず体積膨張を引き起こす粘性土の存在が前提となっており、設置したアンダーパスの道路空間を冷気が吹き抜けることにより冷却、同時に地下水循環が絶たれることや地熱供給の停止により土の凍結が促進されることで発生することが知られており、従来は開削工事による断熱材の敷設や凍上用タイプレート挿入等によって対処してきましたが高いコストが問題でした。これに対し、本施工で採用されたアール・アンド・シー工法では先行設置した箱型リーフとアンダーパス躯体となる函体とを設置置換する特徴から、予め立杭部にて上部に凍上防止を施した函体を使用することにより、断熱材の設置や良好な道床、路盤の設置が函体設置と同時に非開削で行えます。
おわりに
今回の現場見学は天候に恵まれなかったものの、多くの学生広報委員が見学に来られ、無事見学会が行われました。
見学会では、学校で学んだ専門知識を踏まえた上で、大橋やボックスカルバートの施工について工事現場を見学しながら説明して頂きましたが、橋実物の圧倒的ともいえるスケール、鉄筋やコンクリートの冷たく硬そうな質感・重量感、橋脚の頼もしさ等、座学だけでは絶対に得られない視覚的な刺激や感動を楽しむことができました。また、現場を見ることで生まれる、座学的な観点とは異なる実践的な疑問について、ご丁寧にご対応して下さり、本当に貴重な体験であることを実感することができました。この場をお借りして御礼申し上げます。