高規格幹線道路 函館・江差自動車道現場見学
函館・江差自動車とは
函館・江差自動車道は、北海道縦貫自動車道、函館新道等と一体となって高速ネットワークを形成する一般国道の自動車専用道路である。
近隣主要都市間の交流を促し、重要港湾函館港、函館空港への物流の効率化と生活の利便性を向上させる。また、交通の安全性が促進され、
防災代替路としても有効に機能する。
函館・江差自動車道は、図―1に示すように函館ICから茂辺地IC(仮称)までの延長18.0kmの函館茂辺地道路と
茂辺地IC(仮称)から木古内IC(仮称)までの延長16.0kmの茂辺地木古内道路で現在事業が行われている。
平成15年3月に函館ICから北斗中央IC間の約8kmが、
平成21年11月に北斗中央ICから北斗富川IC間の約5kmがそれぞれ2車線での供用となった。
図−1 函館・江差自動車道
現場見学へ
今回の現場見学では、茂辺地木古内道路区間内に位置する新当別大橋上部工事の見学を行った(図―1)。 現場では、地形や自然の環境等に留意し、地山を傷めない「片持ち張出し工法」を採用している。 見学先では、図―2に示す橋長220mの2径間PCTラーメン橋を建設中であり、その張出し長は、日本最大級のものである。 また、このような可橈性の高いケーブルシステムを使用した片持ち張出し工法による架設方式の総称を FCC(Free Cantilever-erection with Cables)工法といい、 この工法では、地上からの支保工を必要とせず、移動式の架設作業車(トラベラー)を用い左右にバランスをとりながら場所打ち施工を行う。 この工法の汎用性は高く、長大スパンのPC桁橋のほか、斜張橋、アーチ橋にも応用されている。
図−2 IC周辺図
新当別大橋での環境配慮
今回の新当別大橋がなぜ日本最大級の張出し長を誇る橋梁となったのか、その答えの一つが『環境配慮』である。 新当別大橋は、経済的な径間割りだけを考えた場合図―2のような2径間ではなく、3径間の橋梁とするのが経済的であった。 しかし、図―2のように橋梁架設位置には地すべり地形があり、その対策が必要であった。 また、現地の樹木を大量に伐採することになる。 さらに、建設現場を流下する当別川下流では、川から水を取水し、生活用水として使用している施設等が存在している。 橋梁を3径間割りにした場合、当別川により多くの負荷が及ぶものと考えられた。 これらの問題に対する解決を図るための検討を行った結果図―2のような2径間のPCTラーメン橋の採用が決定されたのである。
北斗富川ICの技術
北斗富川ICは、今回の見学現場である新当別大橋へ向かう最中に通過したICである。 このICランプは高規格道路本線と接続する国道228号との距離が短いことなどから、 営業中のJR在来線(津軽海峡線)の軌道直下を極めて薄い土被りで交差させる必要があり(図―3赤丸印)、 軌道の精緻な変位管理が求められたため、高度な技術が導入された。 ここでその施工方法であるHEP&JES工法について紹介したいと思う。
図−3 IC周辺図
HEP&JES工法という工法は、非開削で地下構造物を構築する新しい路線下横断工法で、
エレメントけん引工法(HEP工法)と鋼製エレメントの継手工法(JES工法)を組み合わせた施工法の名称である。
ここで、HEP&JES工法のうちのHEP工法とは、到着側から、掘削装置に定着したPC鋼より線を引張ることにより、
掘削装置に直結されたエレメントを発進側から引き込む工法である。
一方、JES工法とは、エレメントを継手相互で嵌合させることにより、路線下に非開削で箱型ラーメン形式等の構造物を容易に構築する工法である。
また、このHEP&JES工法の簡単な施工手順を図―4に示す。
図−4 HEP & JES工法施工手順