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宮内原用水の二穴式隧道群 |
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評価情報 |
薩摩藩の国分平野では1711(正徳元)年から宮内原用水の建設が始まり、約430haの灌漑が実現した(現在は約340ha)。総延長約12km(現在は延長され20.29km)の水路には11の隧道が通されたが、このうち9つが、二つの隧道を併置する二穴式となっている。この構造は今のところ本用水のほか鹿児島県出水市で確認されているのみで、農業用水路の隧道としては珍しい構造である。 これは強度が不十分な地山において、土被り厚とトンネル幅(水路幅)を同時に確保するという両立困難な条件を満たすためのアイデアであると言える。また、当時日本屈指の産金量を記録した山ケ野金山の坑道にも同様の構造が見られることから、近世の地域開発における創意工夫や技術転用の様子を今に伝える貴重な土木遺産である。 現在、9つの隧道のうち7つはコンクリート補強、1つは吹付補強がなされているが、本遺産の技術的価値である二穴式構造は保たれている。また、角之下川(すみのしたがわ)隧道上流側は建設当時のままで、隧道内にはノミの跡も残っている。したがって一連の隧道は、江戸期以来の隧道維持管理技術の推移も示している。 本土木遺産は地域住民の日常生活と密着しており、水路全体は土地改良区、受益者、周辺地域の自治会など多様な組織によって維持管理活動が展開されている。さらに、県内小学生の地域学習教材としても活用されている。 所有者・管理者:霧島市、宮内原土地改良区 参考文献:『大隅国桑原郡西國分郷溝崇水神記』、『国分宮内御新田溝壹流見賦并見立覚』、宮内原土地改良区:『宮内原用水300年のあゆみ』 |
(写真) |
角之下川隧道 |
角之下川隧道の内部の様子 |
内山田の隧道(霧島市文化財) |
「第五號」隧道 |