第2回アジア土木技術国際会議(2nd CECAR)開催報告
主催:アジア土木学協会連合協議会(ACECC)

第2回アジア土木技術国際会議組織委員会


アジア土木学協会連合協議会(The Asian Civil Engineering Coordinating Council、略称ACECC)の主催による第2回アジア土木技術国際会議(The 2nd Civil Engineering Conference in the Asian Region, 略称2nd CECAR)が2001年4月16日〜19日に東京で開催され、アジア太平洋の14の国や地域から730名が参加した。

アジア土木学協会連合協議会、ACECC

アジア地域に共通する問題は、都市への高い人口集中と、社会資本整備の未成熟である。21世紀のアジア地域における持続可能な発展を実現するためには、土木技術や社会資本整備に関わる産、官、学が一堂に会し、知見を交換し合い、問題の検討や議論を行い、相互協力により解決の道を探ることが極めて重要である。こうしたニーズに答えるためにアメリカ土木学会(ASCE)、フィリピン土木学会(PICE)、日本土木学会(JSCE)の3学会は1998年にマニラで第1回アジア土木技術国際会議を共催した。この会議はフィリピンのラモス大統領(当時)をはじめ700名の参加者を得て、成功裏に閉幕した。この成功を踏まえ、ASCE,PICE, JSCEの3学会は引き続きアジア土木技術国際会議を3年に1度開催していくことに合意し、JSCEが第2回会議をホストすることとなった。この第2回アジア土木技術国際会議の開催準備と平行して、上記3学会はJSCEのイニシアティブのもと、The Asian Civil Engineering Coordinating Council (ACECC)と呼ばれる国際組織を設立する事にも合意した。

ACECCは、上記3学会に台湾の中国土木水利工程学会(CICHE)、韓国土木学会(KSCE)の2学会を加えた創設メンバー5学会で1999年9月正式に設立の運びとなり、前土木学会会長、海外鉄道技術協力協会理事長の岡田宏氏が初代会長に、日下部治東工大教授が初代事務総長に就任した。その後2000年4月にはベトナム建設協(VCA)が加盟した。そして、オーストラリア工学会The Institution of Engineers, Australia (IE-Aust)も2001年10月31日韓国ソウルで開催された第5回理事会において正式に加入し、現在メンバーは7学協会となっている。主としてアジア地域の土木学協会がACECCメンバーであるが、会員資格はアジア地域の持続可能な発展に関心を持つ世界中の土木学協会に開かれている。ACECCの目的はアジア地域の土木技術ならびに関連分野の技術者のフォーラムを計画・実施する事である。この運営の両輪の一方が3年毎に開催される国際会議CECARであり、他方がアジア地域諸国の共通してかかえる諸問題に取り組むTechnical Committee である。

第2回アジア土木技術国際会議、2nd CECAR

2nd CECAR組織委員会(住吉幸彦委員長、寺師昌明幹事長)は1999年5月に土木学会で活動を開始し、同年9月のACECC発足と同時にACECCの組織として正式に認められた。組織委員会は、ACECC理事会ならびに日本土木学会との密接な協力のもと、以下の7つの主テーマを選定した。それぞれのテーマが、21世紀のアジアの持続ある発展に密接に関連している。

1.革新的な技術と研究開発での協調
2.地域的フレームワーク(技術基準、教育、技術者資格)
3.建設マネージメントと資金調達
4.都市及び地域計画と建設
5.環境と災害
6.エネルギーと水資源
7.交通と都市開発システム

2001年4月16日〜19日、東京のメトロポリタンホテルで開催された2nd CECAR開会式には、各メンバー学協会の会長、国土建設省の泉信也副大臣、青山?東京都副知事にご出席頂いた。
テクニカルプログラムは、国際科学技術財団の近藤次郎博士による基調講演「環境に留意した国土計画」で始まり、全体会議で3つの特別講演が行われ参加者に大きな感銘を与えた。すなわち、国連事務総長特別顧問モーリス・ストロング氏による、「持続可能な将来のための技術」、フィリピンのフラッグシッププロジェクト大統領諮問委員会顧問R.N.Avendajado氏による「フィリピンにおけるフラッグシッププロジェクト」、そして武蔵工業大学中村英夫教授による「東アジアにおける輸送インフラの発展と問題」である。

パラレルセッションでは、各メンバー学協会によって推薦された約60人の著名な技術者の招待講演を踏まえて討論が行われた。革新技術の分野では、土木プロジェクトに与える情報技術とEコマースの影響、リニアモーターカーなどの新技術や研究開発事例の紹介・報告、工学教育と資格についてはメンバー3学会からの現状報告、また建設マネージメントの最近の動向と可能な将来のテーマには3セッションが割当てられた。鉄道、空港、高速道路、水力、パイプライン等さまざまな主要インフラストラクチャーのプロジェクトが報告された。最近発生した東京都三宅島の火山爆発を含むアジア地域における地震や自然災害、人災も紹介され議論された。2つのディスカッションセッションでは、「都市開発」と「水資源と総合河川流域管理」に焦点が当てられた。

次世代を担う若者達を奨励するため、会議に先立って各メンバー学会で学生エッセイコンテストが行われ、各学会の優勝者が招待された。4月18日のランチタイムに5人の学生がそれぞれの考えや意見を発表し、参加者から喝采を浴びた。

閉会式はJSCE会員の弦楽オーケストラ「アンサンブル・シビル」の演奏で始められ、ACECC理事会報告、学協会長会議報告と進み、ACECC旗と会議鐘の次回会議主催国である韓国(KSCE)への受け渡しをもって会議は終了した。バンケットでは,加盟、未加盟の各国の代表団が相次いで登壇してお国自慢の歌を披露しあう場と化し,CECARが学術技術の情報交換にとどまらず,アジア太平洋地域の技術者の交歓の場としても機能していることが実感された。

4月19日には2つのテクニカルツアーが用意された。ツアーAは,外径13メートルの首都高速シールドトンネル建設現場、ならびに,東京湾央を横切る15.1キロメートルの有料高速道路である東京湾アクアラインのシールドトンネル、橋梁部、人工島を見学した。ツアーBは、超電導リニアモーターカーの実験現場を訪れ、未来の輸送システムを試乗体験した後、ETC(Electric Toll Collection)による新料金収集システムを見学した。

会議論文集は残部数わずかながらACECC事務局で入手可能であり、各セッションの議論要旨は、2nd CECAR て閲覧可能である。

ACECCの活動
新会長、新事務総長選任される
2nd CECAR開会式に先立ちACECC理事会が開催され、韓国土木学会(KSCE)が第3回会議、3rd CECARの開催地に立候補し、全員の賛同をへて承認された。この決定に伴い、KSCE会長のDr. Kwang-Il Kimが次期ACECC理事会の会長に選出され、Dr. Chun-Su Chonが事務総長に就任した。また、ACECC活動の継続性を維持するため、日下部治教授が特別相談役(Executive Advisor)に指名された。

学協会会長会議 (Presidential Meeting)
2nd CECAR会期中の4月17日夕刻、ACECCのメンバー学協会会長、IE-Australia土木部門の会長、そして ACECC理事会メンバーが一同に会し、社会資本整備のさまざまな問題、環境や持続力ある発展というグローバルな問題について意見を交換した。出席者は、アジアに共通する諸問題に取り組む上で、ACECC/CECAR が果たしている役割の重要性を再確認した。また、ACECCの将来的役割は、APECの閣僚級レベルのフォーラムのような多国間組織と密接に協調し合うことであるとの認識で一致した。学協会会長会議の詳細については、土木学会誌 Vol.86、9月号2001 pp.82−84を参照されたい。

技術委員会発足 ACECC TC

2001年10月、2つの技術委員会の発足が日本土木学会によって提案され、了承された。

TC-1:アジア太平洋地域海岸ネットワークに関する技術委員会

主催学会:日本土木学会
委員長:名古屋工業大学 喜岡 渉 教授
幹 事;横浜国立大学 岡安章夫 助教授
活動計画:
(1) アジア太平洋地域の海岸工学研究者のネットワークを地域のキーパーソンの連携によって確立する。
(2) 主要な協同研究課題を洗い出すため、海岸工学の分野における知識と研究活動の収集と交換をはかる。
(3) 3rd CECARにおけるdiscussion sessionの計画に積極的に参加する。

TC-2:総合河川流域管理に関する技術委員会
主催学会:日本土木学会
委員長:山梨大学 砂田憲吾 教授
幹 事:東北大学 風間 聡 助教授
活動計画
(1) 水資源開発、防災、環境の分野における東南アジアの河川工学研究者のネットワークを地域のキーパーソンの連携によって確立する。
(2) 主要な協同研究課題を洗い出すため、総合河川流域管理の分野における知識と研究活動の収集と交換を図る
(3) 3rd CECARにおけるdiscussion sessionの計画に積極的に参加する。

第3回アジア土木技術国際会議、3rd CECAR

第3回アジア土木技術国際会議 (3rd CECAR)は、2004年夏に韓国ソウルで開催されることに決定され、KSCEを中心にした組織委員会が準備活動を開始している。第3回会議の情報は http://www.ksce.or.kr/acecc/cecar/ に逐次紹介される予定である。問合せ先は、KSCEの3rd CECAR組織委員会委員長のDr. Sung-Wang Hongである。

文責:第2回アジア土木技術国際会議組織委員会幹事長

寺師昌明(日建設計)




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