第4回 大蔵海岸陥没事故調査小委員会議事概要(案)
出席者:(敬称略)
委員長
酒井哲郎
委 員
泉宮尊司、宇多高明、島田広昭、関口秀雄、善功企、高橋重雄、辻本剛三、出口一郎、名合宏之、御船直人
審議概要
事故原因の分析
事故発生の原因について
4才の少女が転落し重体となった今回の事故をもたらした直接の原因は、砂浜地下に発生した大きな空洞が、上からの重みにより突然崩れたと考えられる。
空洞は、陸地側(砂浜側)の砂層に当初存在した砂が、海側に抜け出したことにより発生し成長したと考えられる。
主要な砂の抜け道は、防砂板の平均海面付近のU字型部分に発生した亀裂と考えられる。
防砂板の損傷について
防砂板に亀裂が発生した原因は、砂礫等の埋立土の動きによる防砂板の摩耗と考えられる。
亀裂は大きな波力のみにより瞬間的に生じたのではなく、波圧により繰り返されるケーソン隙間の防砂板の変動が、防砂板背後の砂礫粒子との摩擦を助長させた結果と考えられる。
事故箇所の防砂板の亀裂は平均海面付近に存在している。平均海面とほぼ高さの等しい砂層と雑石層の境界付近に緩みが生じ、砂礫が波圧により揺り動かされやすい状況が作られたためと考えられる。また、一般的に波圧は平均海面付近が最も高いことからも、平均海面付近に亀裂が発生しやすかったものと考えられる。
防砂板の亀裂は、砂層部分より雑石層部分に顕著に確認されている。これは、微粒子のみの砂層より粗粒子を多く含む雑石層の方が、摩耗の進行が速いためと考えられる。
防砂板の海側の表面は、製造時にゴムの強化のために混合されていたカーボンブラックが分離し、劣化状態を示していた。また、防砂板の陸地側(砂浜側)の海面上部の高さには、オゾンの影響と思われるクラックが多数確認された。このことから、主に大気中の、オゾン、酸素や紫外線による劣化が防砂板の摩耗を促進し、亀裂を発生させたものと考えられる。
空洞の発生・成長について
亀裂が生じた後は、波浪や潮汐により繰り返される海水の侵入と後退により陸地側(砂浜側)の砂層から砂粒子が流出し、防砂板背後に空洞が発生し、徐々に大きく広がっていったと考えられる。
空洞は、取り囲む砂が乾いた状態や完全に水で飽和した状態であれば崩れやすい。しかし、水面より上部の砂地盤には、砂に浸透する水の毛管現象により砂粒子間を引き寄せあう力(サクション)が発生し、併せてアーチ作用により空洞が崩れにくくなり、大きなものに成長したものと考えられる。
今後の進め方について
万一異常が発生しても事故への進展を抑制できるよう、1)防砂板の改良、2)裏込材の配置と防砂シートの敷設、3)フィルター材の敷設、4)砂層を薄くする、5)ケーソン間に目地材を充填などの対策が考えられる。
技術基準への反映、巡視点検の徹底等の観点から検討が進められることが必要と考える。
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