日時:2001年4月23日(金) 14:00-17:00
場所:東京大学 11号館 講堂
出席者(敬称略;○印が出席者):
○佐藤委員長(東大),青木(豊技大),○浅野(鹿大),泉宮(新潟大),○磯部(東大),伊福(愛媛大),喜岡(名工大),栗山(港研),○小島(九共大),○後藤(京大),○高木(INA),○田中(東北大),○鳥居(土研),○中山(水工研),灘岡(東工大),松原(鳥取大),三村(茨城大),○山下(北大),の各委員
一般参加者は約30名.
配付資料:
1.安倍川流域の土砂をめぐる現状について
2.海岸保全中長期展望検討小委員会資料『安倍川−静岡・清水海岸』
3.静岡河川工事事務所事業概要
回覧:H.10年の河川審議会 総合土砂管理小委員会の報告書
議事:
1. 前回までの経過説明と静岡・清水海岸の特徴
- 九十九里海岸
崖侵食対策と海岸侵食対策
費用対効果の観点を導入した評価,海岸保全の哲学
ヘッドランド 対 サンドリサイクル
漁港浚渫土砂と養浜
生態系との関連で底質粒径が重要
海浜変形モデルの精度
土砂の沖合いへの損失- 新潟海岸
崖侵食の3つの原因と対策
大河津分水,新潟西港,ガス採掘による地盤沈下
飛砂,沖合漂砂
養浜材の確保,大河津分水河口前面に堆積した土砂の利用
新川より西側の海岸 放置するかサンドバイパスか
一般市民への説明力,河川からの土砂供給の評価
所管省庁間の連携が重要
長期および広域の海浜のモニタリングが重要- 静岡・清水海岸の特徴
- 流域の土砂問題と海岸侵食
- 土砂崩壊地−急勾配河川−急な海岸
2.安倍川−静岡・清水海岸の特徴
- 安倍川−流域面積567km2,流路延長53 km2,高低差2000m以上の急勾配河川.
- 安倍川上流域−日本3大崩れの一つである「大谷崩」がある大規模な土砂崩壊地.
- 安倍川中下流域−網状流路,1/130〜1/250程度の急勾配,平均粒径20〜40mm.
- 静岡・清水沿岸への土砂は大部分が安倍川から供給(沿岸漂砂は北東方向).
(安倍川流出土砂で河口より西へ運ばれるものはほとんどない)- 三保の松原の砂嘴は安倍川からの供給土砂が多いため形成された.
- 焼津と三保の松原(羽衣ノ松)の沖には海底峡谷があり土砂が峡谷へ流出.
3.安倍川−静岡・清水海岸の土砂動態・管理の現状
- 安倍川上流域−
・土砂災害が多い.
・計画貯砂量1300万m3,現況整備率22%(計画基準点−玉機橋)
・透過性の砂防ダムも建設←本川の河床低下や海岸侵食問題- 安倍川中下流域−
・S.30〜S.42で許可量1400万m3の直轄区間(河口から22.7kmまで)での砂利採集.直轄区間で平均河床高が1.2m低下.
・S.47以降は直轄区間の砂利採集中止.下流域(河口から19kmまで)で16万m3/年で堆積し,河床低下は約半分回復.
・S.45〜H.4で直轄区間より上流で20万m3/年の土砂採集,H.6以降はこの県区間でも土砂採集はほぼゼロ.
・S.46〜H.4での上流から直轄区間へは,約30万m3/年の流入土砂量があると算定.
・現在の土砂供給能力は約50万m3/年- 河口からの流出土砂量−
・S.30〜42で4万m3/年
・S.43以降で14万m3/年- 静岡海岸−
・S.45より,河口部から静岡海岸の侵食が発生←砂利採集.侵食域は北東方向に約270m/年で拡大.
・現在は堆積が発生←砂利採集中止.堆積域は北東方向に約250m/年で拡大中であり,現在静岡・清水市境付近まで達している.
・沿岸漂砂量は10万m3/年程度(堆積量に相当)で北東向き.
・侵食時に建設された離岸堤群のところの砂浜幅がせまいため,砂浜幅40m(暫定,将来的には60m)を確保するため1万m3/年の養浜を現在実施.- 清水海岸−
・現在4万m3/年の侵食が続いている.ヘッドランド群が建設される前は13万m3/年の侵食.(離岸堤型ヘッドランド群で6万m3/年,羽衣ノ松の場所L字突堤型ヘッドランドで3万m3/年の漂砂制御効果)
・3号及び4号の離岸堤型ヘッドランド下手側は侵食され,砂浜幅が不足し越波の危険性があるため,4万m3/年の動的養浜を実施(ヘッドランド区間への安倍川からの漂砂供給時期が約30年先のため).
・現在の侵食区間清水海岸増地区(静岡海岸側)には,4年間(H.12〜15)で21万m3の養浜する計画.
・H.12〜15で安倍川(kp6.5〜kp13)から45万m3の土砂を採集し養浜する計画.
・将来的には4万m3/年×30年=120万m3の土砂の確保に努める.
・モニタリングを継続し,最適な養浜・海岸保全計画に修正していく予定.4.議論
- 砂防計画(整備土砂量)の考え方を整理しておく.
安倍川では600mm日雨量(1/100年確率)で1330万m3(玉機橋)の土砂流出を想定.
砂防ダムは満砂しても貯砂量の2〜3割は土砂制御効果がある.(洪水時に砂防ダムに土砂堆積,平水時に侵食)- 河川からの供給土砂量は変動するが,海岸の土砂管理をする際に何年程度の供給土砂量を対象とすればよいか.
- 静岡・清水海岸では安倍川の土砂採集の中止で砂浜が回復してきている.これ
は安倍川の土砂供給能力が50万m3/年と沿岸漂砂量10万m3/年に比較して大きく,海岸侵食対策を考える上では有利で特別なケースである.
砂利採集をしないと河床上昇が発生し,治水上問題も発生するので,適度に砂
利採集を実施し,骨材(3000円/m3),養浜材として活用する.(現在は緊急的に砂浜幅が少ないところに養浜している)- 養浜砂についての検討項目
費用低減−海外200〜2000円/m3
存在量調査−前通産省地質調査所で調査実施
リサイクル材の利用
サンドリサイクルの実施
漁業への影響−量だけでなく粒径や細粒土砂の挙動の把握が必要.- 養浜の費用低減
河口にトラップをほり,そこにたまった土砂をポンプ船で浚渫し,船で土砂を
運び投入するという方法は費用安い.
この海岸では,土砂が堆積している三保の砂嘴の先端部分から土砂採集して養浜した方が費用安い(河川から運ぶより半分程度の費用).当初,この方法を検討したが地元の反対があり,まずH.12〜15は45万m3の土砂を安倍川から採集し養浜する予定.それ以降の土砂については今後検討予定.- 養浜・海岸構造物建設の水産資源への影響を把握することが必要.
静岡・清水海岸では養浜については漁業者はOKで,L字突堤型ヘッドランドの
建設では観光地引に関連して保障を実施した.(養浜がOKなのは粒径が粗いため?)- 将来,砂浜幅が60mになれば離岸堤の撤去も考える?
→砂浜だけだと,許容越波量にするには120m必要.- 長期的に漂砂の外力となる流れをモニタリングする必要がある.(駿河湾内では3日程度の周期の強い流れが存在)
5.次回の予定
- 6月中旬に委員の人のみで開催予定
- 30分程度,海外の事例の説明のあと,これまでの3回の会議のまとめと今後の
方針を検討.(山下俊彦 記)