戦後進められた海岸保全の努力により沿岸域の治水安全度は,飛躍的に向上したものの,防護が必要な海岸も多く残されている.また,沿岸・海岸施設の設置により人工海岸が増加するとともに海岸侵食により砂礫浜は減少している.砂礫海岸の変形は,さまざまな自然・社会条件のもとで数年から数十年の長期にわたって進行する現象であるため,その対策には中長期的な展望を持って取り組むことが重要である.学会の主導のもとに今後戦略的に取り組むべき主要課題は以下の通りである.
沿岸の利用・環境保全との調和の実現
ある範囲で侵食を許容する海岸も必要 広域の土砂収支に基づく海岸保全基本計画の重要性 海岸区分ごとの連携
費用便益分析に基づく保全計画 環境便益の定量化
治山治水と海岸保全 余剰土砂の有効利用 河川と海岸の接続
構造物との組み合わせ 分留まりと地形変化 骨材資源 リサイクル材料 沖合土砂の利用 バイパス・リサイクルにおける採取投入技術 自然エネルギーの利用 運搬方法 異粒径材料の利用
100年スケールの海浜過程 海面上昇への対応 汀線変化モデルの検証 堆積物の質の調査 沖合の土砂輸送 地形・地理学的視点の導入
侵食・堆積と底質特性の変化 泥質含有量 希少種の減少 海岸施設と水質・生態系・植生 漂着ゴミ
簡便な測量技術の開発 国土管理としての測量方針 底質調査・深浅測量データ・空中写真・衛星写真の集中管理 学会のイニシアチブ