序文 (尾崎 晃,昭和48年11月)

本年度の第20回海岸工学講演会は,昭和29年11月に神戸市においてわが国最
初の海岸工学研究集会が開催されてより,ちょうど20年目に当り,人にたと
えるならばまさに成人に達したというところである.成人式に臨む若人は来
し方をふり返って感懐を新たにすると同時に,これからの将来に向って抱負
や希望で胸を弾ませる.今回で20冊に達した海岸工学論文集(第16回以前は同
講演集)を全部合わせると,論文数858編,頁数にして約5830頁にもなる膨大
なものである.

取り上げられている問題の範囲も,波浪,波圧,津波,高潮,潮流,漂砂,
河口の諸現象,混合,拡散,海岸港湾構造物などあらゆる分野に及び,それ
らの基礎的研究のみならず,現場における実際の問題と深いかかわりを持っ
た研究の面でも大きな成果をあげ,非常に貴重な文献の一大集成となってい
る.この20年間の成果をふまえて,海岸工学はますます隆盛発展を予想され,
まことに心強い限りである.しかしその反面,論文数の急増は,頁数の増加
に伴う経済的負担,編集事務量の増大,講演会場のやりくりなど種々の面に
圧迫を増していることも事実であり,当委員会としてもこの問題に真剣に取
り組みつつあり,成人に達した海岸工学講演会は,いまこれからの新しいあ
り方を模索しているところである.

おわりに,この名古屋での講演会は当委員会と,土木学会中部支部との共催
で行なわれるもので,3日間にわたる会場の設営,見学会,シンボジウムなど
面倒な準備に当られた中部地区委員や関係諸官庁の後援に心から感謝すると
共に,論文集の編集に苦労されだ当委員会編集小委員会および学会事務局の
方々に厚く御礼を申し上げる.

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