序文 (尾崎 晃,昭和49年11月)

本年度の第21回海岸工学講演会に発表を申し込まれた論文数は昨年同様多数
に上り,最終的には83編に達した.これらの論文において取り上げられてい
る研究内容ほ例年と同じく海岸工学分野の基礎的問題に関する理論的研究か
ら現地観測結果についての学術的報告に至まできわめて広汎多数にわたって
いる.これはとりもなおさず海岸工学の分野においてはまことに多方面から
さまざまな有形無形の要求があって,研究者がそれぞれに対して真剣に対応
している実態を映し出している姿であるといえよう.

過去20年という年月をかけて,蓄積されてきた膨大な研究成果は種々様々な
現実の問題に応用され,社会の進歩に貢献している.我が国の海岸工学は学
問としてもようやく確立され,国際的にも評価されるに至っているが,それ
だけに自己の生み出した成果に関する社会的責任も増大してきたというべき
である.工学はその性格上大なり小なりに一般の人々の日常身近な問題にか
かわりを持つ機会が多いだけに,過度の信頼とか反対に正当を欠いた批判を
受けやすい嫌がある。海岸工学の分野における問題も同様に,その学問の本
質が研究クループ以外の範囲にまで本当に理解されているとはいい難い.

そのような意味からも毎年の海岸工学講演会に,大学,官公庁,民間の会杜
その他の研究機関や現場などそれぞれ立場,目的,性絡を少しずつ異にする
広い領域から多数の研究者や技術者が一堂に会して研究発表し,討論に参加
することは大そう重要なことである.これら多数の人々がおのおのの立場に
おける持ち味を十分に生かしながら,工学上の学術的生産から始まり現実問
題の解決という最終的な成果に至る複雑で長い道程を円滑に橋渡しするのが,
この講演会の他に見られない特色であると思う.

今回海岸工学委員会編集小委員会の努力によって,はじめて第1回から第20回
までの858編上にる論文のテーマ別分類が別冊として作成された.いま述べた
ような意味においてこの別冊が有効に活用されることを期待してやまない.

おわりに今回の仙台市における講演会は,当委員会と土木学会東北支部との
共催によって行なわれるもので,3日間にわたる会場の設営,懇親会,シンポ
ジウムの計画など大変手数のかかる準備の仕事を引き受けて下さった東北支
部ならびに地元の関係諸官公庁の後緩に深謝するとともに,毎年数多くの論
文と取組んで編集に当られた当委員会編集小委員会および土木学会事務局の
方々に心から御礼を申しあげる.

委員会トップページへ戻る

海岸工学論文集と講演会へ戻る

海岸工学講演会の歩みへ戻る