序文 (井島 武士,昭和52年11月)

海岸工学講演会は発足以来今回で第24回目を迎えることになり,発表論文数
の増加と共に内容は広範にわたり,ますます充実されて参りましたことは誠
に同慶にたえない次第であります.

わが国の海岸工学の発逮の経過は,この海岸工学講演会論文集に集約されて
おります.すなわち,太平洋戦争中に放置された海岸の荒廃と異常気象の頻
発による災害対策を主要な課題として取り組んだ初期の段階から,経済復興,
産業基盤の整備と急速な開発,建設を中心とする段階に移り,今日では早急
にすぎた産業活動により再び荒廃し,また汚染された海岸の自然環境を回復
しつつ調和を保った開発のための高度な,かつ多様な問題の対応に迫られる
ことになりました.

比較的限られた単純な問題を対象とした初期の時代と異なり,今日では電子
計算機を始めとする近代機器の強カな援助があるとはいっても,複雑多様な
問題に長期にわたって対応せねばならぬ現代の第一線研究者の労苦がこの論
文集に集約されているように思います.

幸いにしてわが国は,国際的に見ても海岸工学の研究に関する論文の数にお
いてはアメリカに次いで多くの発表がなされており,研究内容においては,
世界の何れの国にも比肩し,または凌驚するほどの業績をあげており,今日
では世界の指導的位置に在ることは疑いありません.このことはわが国の特
殊な国土事情によることもありますが,何といっても本講演会に参加された
方々の熱心な研究の賜であり,その成果はわが国にはもちろん,世界に大き
な貢献をなすものであります.

ここに,これ等の方々の成果に対して深く敬意を表すると共に,今後の一層
の御努力を期待するものであります.

今回の講演会は土木学会中国・四国支部との共催により,徳島大学,本州四
国連絡橋公団第1建設局ならびに徳島県その他関係の方々の熟心な御支援によ
って,この地徳島市において盛大に開催されることになりました.本文をか
りて,厚くお礼申しあげます.

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