序文 (合田良実,平成3年11月) わが国の海岸工学は,1954年に神戸市で開催された研究発表会を端緒として, このたび第38回海岸工学講演会を金沢市で開催することとなった.初めの頃 は「海岸工学」の言葉も十分に理解されず,諸先輩各位が新聞や雑誌などに 海岸侵食や高潮災害への対策の重要性を力説し,新しい工学の分野としての 海岸工学の必要性を訴えてこられたと伺っている.諸先輩ならびに関係各位 のご努力と,各方面のご理解やご助力により,わが国の海岸工学は質・量と もにめざましい発展を遂げることができた.わが国の先端技術と同様に,し ばらく前から,欧米の海岸工学の研究者・実務家の間で,“日木語はInvisible Barrierである”との声が冗談めかしくあげられるほどである. 今回の論文集はご覧のように2分冊形式である.登載に値する優れた論文が多 いために,これまでのように1冊に製本することができなかった.海岸工学委 員会としては嬉しい悲鳴である.序文としては異例であるが,こ参考までに これまでの講演会における論文の応募数と講演数を下に掲げる.このような 発展の趨勢を阻害することなく,講演会をどのように円滑に運営していくか が目下の最大の間題であって,委員会や幹事会などても甲論乙駁の議論を重 ねている.しかし,海岸工学の一層の発展のためには,調査・設計・施工等 を担当される実務家を含めたさらに広範囲の方々のご参画が不可欠であり, ご高見をお聞かせ下さるようお願いする次第である. 回 応募数 講演数 1 16 16 2 19 19 3 26 26 4 23 23 5 25 25 6 22 22 7 34 34 8 35 35 9 31 31 10 32 32 11 42 42 12 39 39 13 32 32 14 51 51 15 57 57 16 55 55 17 65 65 18 73 73 19 73 73 20 93 93 21 83 83 22 97 97 23 113 113 24 132 132 25 130 130 26 145 145 27 156 156 28 148* 126 29 178* 130 30 189 133 31 202 144 32 214 157 33 217 130 34 224 140 35 251 171 36 242 178 37 238 179 38 299 199 注:第27回以降は2,000字の概要に基づいて登載論文を内定し,第36回からは 論文原稿で第2段審査を行っているが,講演論文数は内定数をやや下回ること がある.また,第28,29回の応募数は概数である. 海岸工学委員会では,前年度来,地球規模環境問題と研究現況レビューのた めの海岸工学研究小委員会の設置を企画していたが,このたび関係諸機関の ご支援によって本年度から2ヶ年計画で活動を開始することとなった.この調 査・研究の成果はしかるべぎ機会にご報告したいと考えている. 海岸工学講演会を金沢市で開催するのは初めてであり,金沢大学工学部を始 め石川県,金沢市等地元の方々には絶大なご尺力を賜わった.また,論文集 の刊行にあたっては,論文査読者,海岸工学編集小委員会,ならびに土木学 会事務局各位の献身的なこ努力に負うところが大きい.さらに例年,業界案 内を通して各種法人・民間各社からご支援を頂戴している.こうして海岸工 学講演会を支えて下さっている関係各位に対し,ここに心からお礼申し上げ る次第である.