序文 (渡辺 晃,平成8年11月) 今年は海岸工学の歴史にとって,1つのmilestoneといえる年となった.9月初 めに米国Florida州Orlandoにおいて,The Silver Conference Celebrating Coastal Engineering Heritageとして第25回海岸工学国際会議(ICCE)が開催 されたのである.応募論文数がこれ迄より数割も多かったために,組織委員 会は嬉しい悲鳴をあげながらも頭を悩ませ,採択率は落としたくないし平行 session数も増やしたくないという訳で,1編当たりの発表・討議時間を従来 の30分から20分に減らすという措置をとって,800余の応募論文から433編が 採択され,約800名の参加者を得て丸5日間にわたる会議は成功裡に終了した. 日本からの参加は,論文数で全体の約2割,出席者数で1割を占めた. さて,一方,初めて和歌山県で開催されることとなった第43回海岸工学講演 会には,これ迄の最高であった前回の371編をまたも更新する403編もの論文 応募があった.応募論文が多いこと自体はよろこばしいことであり,当委員 会論文査読小委員会としても7割程度の採択率を確保したいのは山々であった が,諸々の事情を勘案すると3日問4会場,発表討議時間20分は維持していき たいということで,265偏の論文の採択に留めざるを得なかった.単に会場の 確保や参加者の便宜のみならず,現状の仕組みでは採択論文数の増加が論文 集の定価に直接はねかえるという制約もあってのことである.著者負担金の 値上,会議参加費の徴収,abstractに替えて全文査読への移行などの案も出 されているが,それぞれ一長一短ありで,委員会としても結論を出しかねて いる.この間題については,本講演会の間にも,参加者同士でいろいろ議論 して戴きたいし,小生や水口幹事長にも忌悼のない御意見をお聞かせ願いた い.このように当講演会への論文の応募が大変に多く,またICCEでの日本か らの発表論文数も増加の一途を辿っているにも拘らず,当委員会が発行して いる英文誌Coastal Engineering in Japanへの投稿数が相変わらず低迷して いるのは誠に残念である.CEJへの投稿のメリットが余り大きくない現状は認 めざるを得ないが,本誌が日本の海岸工学の海外への情報提供の重要な一端 を担っていることを再認識して戴き,もっともっと投稿して戴ければ有り難 い.率直に言わせてもらえば,英文が相当にまずくとも内容が良ければCEJ編 集小委員会の尽力を得てどんどん登載していく方針なので,特に現場サイド からの積極的な御投稿を戴ければ幸いである. 前巻の序文で紹介した「海岸工学公式集(仮称)」については,「海岸工学マ ニュアル」として来春の発刊に向けて着々と作業が進んでいる.執筆者なら びにレビューアの方々の並々ならぬ御努力で,皆様にとっての座右の書とし て必ずや大いに役に立つものができあがると確信しているので,御期待願い たい. この講演会の開催にあたっては,和歌山県土木部港湾課・河川課には一方な らぬ御協力を戴いた.また関西地区の関係大学や地元の方々に大変お世話に なった.ここに厚く御礼を申し述べたい.なお末尾ながら,論文集の刊行に 欠かせない論文査読者各位,海岸工学論文集編集小委負会,土木学会事務局 の御尽力,ならびに業界案内を通しての民間各社・各種法人からの変わらぬ 御支援に対し,深尽なる謝意を表したい.