序文 (西村仁嗣,平成10年11月) 第45回の海岸工学講演会は予定通り秋田市で開催される運びとなった.御尽 力頂いた東北地区の方々,運輸省第一港湾建設局,建設省東北地方建設局, (財)秋田観光コンベンション協会ならびに査読小委員会,編集小委員会の委 員諸兄に先ず謝意を呈する. 今回の応募論文数は435編であり,不景気の世相にもかかわらず,その経年的 な増加傾向に衰えは見えない.波と流れ・海浜地形・海岸構造物等の伝統的 な研究課題から海洋構造物・海岸環境さらにはアメニティ・計画論といった 新たな課題への展開も定着し,あるいは着実に進行中である.必要とあれば 自然・社会・人文科学のあらゆる分野に学び,技術に資する心組みは,次代 の海岸工学を切り拓くであろう.編集小委員会の努力になる討議集も好評で ある.斯界を支える研究者・技術者の皆様には変わらぬ敬意を表したい.応 募論文数の増加は,主として査読・講演会運営の容量の制限から,一方で採 択率の低下をもたらし,この度はついに60%を割り込んでしまった.研究討論 会その他の企画を考える余地もない状況である.これを承けて海岸工学委員 会および同幹事会では,またしても論文集・講演会の運営方針に関する議諭 が盛んである.併行会場を増す,日数を増す,紙数や講演時問の制限を強め る,年毎に論文のテーマを制限する,ボスターセッションを設ける等々の意 見が出されている.こうした採択論文数増の要望に対し,論文の質,ひいて は論文集の評価の維持向上が肝要である,他の発表機会もあるではないかと いった反論も根強い.海岸工学論文集および講演会の果たすべき役割につい て広く議論を進め,今後の在り方を考えて行く必要がある. 本年6月には,デンマークのコペンハーゲンで第26回海岸工学国際会議が開催 された.日本からの参加者数は,同伴者を除き,アメリカ,開催国のテンマ ーク,および近隣のオランダとほぼ並ぶ約80名であった.これもまたわが国 の海岸工学研究の活発さと氷準の高さを物語るものであろう.しかしながら, われわれの今一つの国際発信拠点"Coastal Engineering Journal"について見 ると,こちらは残念ながら投稿論文数の面でも,また販売数の面でも未だひ 弱である.土木学会の先端を行くこの英文誌の地歩は学会国際化のバロメー タとも言える.このほど装いを改めた同誌のさらなる飛躍を期待して止まな い. 次世紀の研究立国を標榜し,「科学技術基本計画」を策定したわが国にあっ て,関係各界の責任は重い.さまざまな課題を抱える当委員会としても,ホ ームペーシを充実させ議事内容を速報するなど,より多くの方々の運営参加 に向けて努力を続けている.各位の一層のご理解とご支援をお願いする次第 である.