2002年制定 コンクリート標準示方書発刊に伴う講習会 質問事項

 

質問事項

回答

回答担当者

「2002年版コンクリート標準示方書 改定資料」p.50の図6.1.3について、講習会では確かプレート定着が実線、半円形定着が破線、という説明がなされたと思いますが、資料の図の凡例は逆となっています。どちらが正しいのでしょうか。

 

設計資料(a)の図の表記は、「プレート定着が実線、半円形フックが点線」が正しいです。失礼しました。学会ホームページに正誤表を掲載いたしましたので,ご参照下さい。またタイトルは「鉄筋応力—抜け出し変位」が正解です。

今井

1.スタイルについて

「ダムコンクリート編」と他の編はスタイルが異なっています。これは統一する必要はないですか。

 「ダムコンクリート編」は第一部「性能規定」と第二部「実施標準」になっています。

 第二部はマニュアルに近いものと受け取りました。そして、第二部は従来の示方書を性能型になるように書き直したとも説明されました。しかし、第一部と第二部はリンクされていないので、第二部に従って実施しても、第一部を実施したことにはなりません。

 そして、第一部は大変難しい方法で、実施方法は見当も付きません。ここは、第一部と第二部の間に第一部のマニュアルの作成が必要と考えます。

 また、他の編も「ダムコンクリート編」と同様なスタイルが良いと思います。現状では、他の編は性能規定と実施標準(マニュアル)が混在しており、性能規定とは言っても仕様規定に極めて近いと考えます。

 

性能を前面に出した示方書には,いろいろなスタイルが考えられます.改訂資料で述べたように,ダムコンクリート編では,使い勝手を良くするため二部構成としています.コンクリート標準示方書の次回の改訂では,全体でスタイルを統一する予定です.

 

2.性能と物性

「ダムコンクリート編」の説明で、これはダムを構成するコンクリートの規定であるので、性能と言う語句はなじまないと言う説明があり、例えば、「要求性能」の代わりに「要求物性」とすると言う説明がありました。これは他の編でも同じではないですか。

 

コンクリート標準示方書の次回の改訂では,各編全体で再度,用語の統一を図るようにする予定です.

 

3.耐震性能

(1)レベル1の地震は50年に一度の地震にするとお話がありましたが、レベル2の地震強度のお話はありませんでした。どの程度の地震を考えられているのでしょうか。そして、現状の道路橋示方書のように全国一律の地震を考えられているのでしょうか。それとも、地域毎に、超過確率や付近の活断層の影響を考えられておられるのでしょうか。

 

レベル2地震動については、構造物の耐震機能と経済性のバランスの下で合理的な地震動強度を設定する必要があり、再現期間が200年程度の海洋プレート境界型地震と再現期間が1000年程度の内陸活断層型地震の2種類を考えています。一応、全国一律のものを提案し、必要に応じて、地域毎に低減してもよいようにしたいと思っています。本年末に耐震性能照査編を出版する予定です。

丸山

(2)常時の構造解析は線形解析、地震時は非線形解析というお話がありました。そして、地震時はFEMあるいはファイバーモデルによる時刻歴解析と言うお話がありました。これはレベル1も非線形解析することを意味しているのでしょうか。また、地震時の構造解析には応答変位法もあれば、時刻歴解析を含む動的解析の中には周波数応答解析もあります。この周波数解析法の手法の一つであるFLUSH系の解析法(この場合は地盤だけですが、等価線形で非線形を考慮することも可能です)を排除するものでしょうか。また、地盤との連成を言われていましたが、地盤解析に使うSHAKE(重複反射理論解析法)も周波数解析法であると言う理由で排除するのでしょうか。

 

原則として、レベル1、2とも非線形解析で時刻歴応答解析としています。解析モデルも、原則として工学的基盤面より上を有限要素でモデル化することにしていますが、構造物と地盤振動を別個に解析する手法も残してあります。後者においては、所定の深さでの入力地震加速度波形を求める際の解析手法として、時刻歴応答解析と周波数領域での応答解析の両方を認める予定でいます。

丸山

(3)地盤と構造物の相互作用の重要性を認められつつも、地盤と構造物の分離解析も可とする方向と受け取りました。水平振動については安全側になると考えます。しかし、鉛直振動については少し懸念があります。例えば、柱部材を考えた場合、曲げモーメントは安全側の値になると考えますが、軸力に関しては小さな値が計算されると考えます。

 

ご指摘の点を検討してみます。必要であれば、安全係数等で対処したいと思います。

丸山

(4)基盤は工学的基盤(N値≧50、Vs≧300m/s)を考えておられると受け取りました。しかし、地盤の解析をしてみますと、それより堅い地盤でも加速度の増幅が認められる場合もあります。それについてはどう考えられますか。現状は、工学的基盤とする場合もありますし、それより堅い地盤を基盤とする場合もあり、明確な基準はないと考えます。

 

一般に、工学的な基盤までの地盤の情報が得られていること、その位置で地震動を設定するための観測記録が蓄積されていることなどから、原則として、工学的基盤面としたいと思っております。当然のことながら、この位置で設定される地震動は、それより堅い地盤における加速度の増幅の影響を考慮したものとなります。

丸山

(5)人工地震波では位相も大きな要因の一つと考えます。また、幅の広い構造物であれば、位相差も大きな要因の一つと考えます。これらも規準に取り入れられる予定でしょうか。

 

どのような構造物の場合に、地震動の位相特性の影響がでてくるかを検討する予定です。

構造物に入力する地震動の位相差については、地盤構造に不整形性がある場合に生じることが多く、この影響は考慮するように考えています。この他に長大構造物では位相差の影響が考えられますが、一般的には、位相差の影響の出ない規模の構造物を考えています。

丸山

4.規準について

4点ほど規準が出来ていないものがあるとのお話でした。これについては、土木学会の規準ができるまでは、現時点において各機関等で行われている方法を規準に類するものと考えてよいのですか。なお、4点とは@フレッシュコンクリートの単位水量試験、A吹きつけコンクリートのはねかえり率、B定着性能試験、C引張軟化測定 と受け取りました。

 

2002年の示方書に引用されているのにまだ土木学会規準として試験方法が定められていないものの例を4点ほどあげました。これらはあくまで例であり、本年度は引張軟化曲線の試験方法、コンクリートの塩化物イオンに対する拡散係数の特性値Dkの試験方法について、土木学会規準として基準化することで活動が開始されました。土木学会規準以外に他の機関で基準類が作成されており、相当する試験方法がある場合はそれを使えばよいと思います。

 

梅原

構造性能照査編のご説明で、鉄筋の定着・継手の照査/定着構造例の紹介がありましたが、この時使用された資料が改訂資料の内容と違っていたように思いました。私の誤解かもしれませんがご確認ください。

 資料はコンクリートライブラリー改訂資料P50、図6.1.3コンクリート中に埋め込んだプレート定着の引抜き試験結果(a)定着プレートとコンクリートの歪のグラフです。半円形フックとプレート定着の表記が逆ではないでしょうか?

 

(1)に同じ

今井

構造性能照査編のp22(5)コンクリートの曲げひび割れ強度fbckの式が改定されたと説明がありましたが、式中の部材の高さhは、断面の形状が円形、I形等の矩形断面以外の場合はどのようにすればよいのでしょうか?

 

円形:断面の直径

I形:コンクリートの引張縁と圧縮縁の距離

で計算しても式3.2.4は成り立つのでしょうか?

 

矩形断面以外の部材において,係数k1bが意味するところの乾燥,水和熱等の影響を式(3.2.6)によらず別途適切に評価できるのであれば,式(3.2.5)を適用せずにその断面について3.2.4項に示された引張軟化特性を考慮した数値解析を行うことによって直接,曲げ強度を算定していただく必要があります.
 一方,式(3.2.6)をそのまま用いるのであれば,断面形状によらず式(3.2.5)中の高さhは,断面の引張縁と圧縮縁の距離としていただいて問題ありません.
 要は,環境条件等も含めて厳密に曲げ強度を求めるのであれば,断面形状を考慮した数値解析を実施していただく必要がありますが,そうでなければ断面形状の影響は考慮せずに,断面高さとしては引張縁と圧縮縁の距離を用いてください.
(補足)
 コンクリートの見かけの曲げ強度は部材高さだけではなく,断面形状にも依存することが数値解析によって示されています.式(3.2.5)式は矩形断面を仮定して導かれた式であり,厳密には断面形状に応じて式中の定数を修正する必要があります.しかしながら,単に円形断面と言っても中実と円筒で異なり,さらに円筒の場合でも外径と肉厚との比率によって値は異なります.同様にI形断面でも引張フランジの幅,高さ,ウェブ厚の比率によって値が異なります.これら断面形状の影響は引張軟化特性を考慮した数値解析(非線形解析になります)を行えば求めることは可能ですが,しかし通常の設計においてこのような非線形解析を行うことは必ずしも現実的ではありません.さらに,実際のひび割れ強度には,乾燥,温度応力,クリープ特性といったことが大きく影響するため,破壊力学的に説明される断面形状の影響のみを厳密に扱っても片手落ちとなります.したがって,今回の改定では破壊力学的に説明される部分は矩形断面の式で代表することとし,その他の影響については過去の実験結果を尊重して式(3.2.6)で表すこととしました.

内田

[施工編]

第5章 5.2 ワーカビリティ「表5.2.2スランプの標準値」には、構造物の種類として鉄筋コンクリートと無筋コンクリート、鉄筋コンクリートはさらに鋼材の配置が一般の場合と断面形状の密な場合に分けられている。

 

質問1:一般の場合と、密な場合とは、【解説】P56 下から5行目 には、「また、一般的な鋼材の配置とは、鋼材の最小あきが100〜200mmで鋼材量が100〜200kg/m3程度の状況のことである。」により区分するということでしょうか?

 

質問1および2は共通の質問ですのでまとめてお答えします。

 

 最大の変更点は,5.2ワーカビリティー(2)の条文に示すように,適切な試験によってワーカビリティーを確認すること(照査)を原則とした点です。

 

 最近の構造物の大型化・薄肉化や補強鋼材の過密化に対して,

1) 平成11年版までの“一般の場合”,“断面の大きい場合”の二つの区分でコンクリートのスランプを選定することにかなり無理がでてきていること,

2) 従来の標準的な構造の範囲(最小鋼材あき,鋼材量)がかなり大きく設定されているため,実際に施工が困難な構造条件に対してもスランプ12cm以下の通常のコンクリートでの施工が可能になり,結果的に加水問題やスランプの許容値上限で生コンクリートを発注するという問題につながっていること,

などから,構造条件としての“断面形状・寸法”と“鋼材の配置”から合理的にスランプを選定できるように変更しました。また,一般的な鋼材の配置状況を,ご指摘のように実情に合わせて変更しました。

 一般的な鋼材の配置条件よりも緩い条件(例えば鋼材の最小あき300mm)に対しては,“一般の場合”に準じてスランプを選定することになりますので,既往の施工実績を参考に8〜12cmの範囲で選定することになります。

 

松岡

質問2:平成8年版では、鉄筋コンクリートは一般の場合と断面の大きい場合に分けられていたが、考え方が変わったように見受けられますが、どう考えればいいのでしょうか?

例えば、鋼材の最小あきが300mmの場合(一般より大きい?場合)、採用すべき数値があるのでしょうか?

 

[施工編]  22章 水中コンクリート

1.示方書では水中コンクリートを、「一般の水中コンクリート」、「水中不分離性コンクリート」、「場所打ち杭および地下連続壁に用いる水中コンクリート」に分類しておりますが、このうち「一般の水中コンクリート」と「水中不分離性コンクリート」の適用 対象および施工条件の区分が明確に示されておりません。これは、水中コンクリートの要求品質、施工条件等分類の一般 化が困難であり、技術者の判断に委ねる自由度を持たせたものと理解いたします。「22.3.3 性能の照査」、「22.4.1 一般の水中コンクリートの施工方法」に示された内容より、充填性・セルフレベリング性が要求される打設面積が広く部材厚さの薄い対象構造物には、「一般の水中コンクリート」が適合しない材料と判断するところですが、ご見解をお聞かせいただきたい。

 

「質問6−1に対する回答」

 「一般の水中コンクリート」と「水中不分離性コンクリート」の適用区分については、示方書では「22.1.2一般 水質汚濁防止のように施工条件が厳しい場合あるいは鉄筋コンクリートの場合には水中不分離性コンクリートを用いる必要がある・・・」と記述しています。また、その[解説]で「広い面積に施工した一般の水中コンクリートは、その品質の均一性、打継目の信頼性等を確認する方法がない。また、水中コンクリートの品質は、特に施工の良否に左右されるので・・・・・適切な施工方法の選定が必要である。」と記述しています。したがって、充てん性、セルフレベリング性が要求される打込み面積画広く部材厚さの薄い対象構造物では、要求性能のレベルが低い場合に、一般の水中コンクリートでも対応可能な場合があると判断されますが、同条件であっても要求性能のレベルが高い場合には,水中不分離性コンクリートが推奨されるものと判断してよいと考えられます。

 

河井

2.上記1.質問の適用対象条件は抽象的な表現となっております。具体的な対象構造物として、比較的面積の広いオープン ケーソン(5002)の底版コンクリート(厚さ1m)の施工に例をとることとします。その要求品質としては、本設底版施工のためのドライアップに耐えうる(耐圧50100kN/2)止水性(ケーソン刃口部への充填性、各トレミー管が受け持つコンクリート継ぎ目の止水性)、セルフレベリング性(天端平滑度±5cm程度)と、地下水の揚圧力に抗する部材強度の確保が想定されます。このような対象に対して「一般の水中コンクリート」を採用する場合、トレミー管計画本数は原則17本以上(5002/302)ということとなり、「22.4.1一班の水中コンクリートの施工方法」を守ることは現実的には困難であり、水中コンクリートに求められる性能の照査が成立しません。従ってその性能を照明するためには、実物規模の打設試験を実施し、性能の良否を判定する必要があろうかと思われます。しかし、経済性、工程の面から、このような大掛かりな試験を実施するのはロスが多く、既往の施工実績調査により性能照査を実施すべきかと考えますが、不具合の実績は表面化されないのが実情です。

 不分離性コンクリートのそもそもの開発の発端は、上記のような悪条件下での不具合改善であったと伝え聞くところですが、その点についてはどうなのでしょうか。

 また、本例の対象構造物に対しては「水中不分離コンクリートを採用すべき」との明確な判断は示せるものでしょうか。ご見解をお聞かせいただければ幸いです。

「質問6−2に対する回答」

 具体例では、トレミー管計画本数が原則17本以上となり、「22.4.1一般の水中コンクリートの施工方法」を守ることが不可能とのことです。したがって、性能照査は実物規模の試験が必要になってしまいます。この場合、水中不分離性コンクリートを用いれば,照査が非常に楽になり、

品質の確保も確実になります。したがって、対象とした構造物では水中不分離性コンクリートを使用することが、工程的にも、経済的にもさらに、品質確保面からも有利になると判断するのが妥当と考えられます。

 

河井

県の生コンクリート工業組合から県で使用している施工管理基準についての意見書がきておりまして、その回答としてコンクリート標準示方書の記述を参考とさせていただこうと考えております。つきましては下記について回答願います。

 

組合からの意見:骨材中の粘土塊量の試験・骨材中の比重1.95の液体に浮く粒子の試験を細骨材、粗骨材に対して求めているが、セメント・コンクリートの骨材に砕石、砕砂を使用する場合、骨材中の粘土塊量の試験・骨材中の比重1.95の液体に浮く粒子の試験は、JISA5005(コンクリート用砕石及び砕砂)やJISA5308(レディーミクストコンクリート)にも規定がないため、「砕石及び砕砂には適用しない」旨を追加して欲しい。

 

県としては、「コンクリート標準示方書(2002年)舗装編 P.151 13.3.4 骨材」には、標準的な検査項目として”粘土塊”“骨材中の比重1.95の液体に浮く粒子の試験”があげられていますが、この検査項目は全ての骨材に関して適用されているものであり、砕石および砕砂にも必要となると考えるのですが、いかがでしょうか。

 

 

まず、誤解がないように施工編の11章「検査」、舗装編の13章「検査」の全体の考え方を説明します。

 第1節と第2節では本来の検査のあり方を記述しております。

主旨は、状況に応じた適切な検査体系を計画して実施することが基本であると言うことです。すなわち、今回の示方書では、どのような検査を実施するべきかを工事や現場の特徴を良く考慮して事前に考え、そして、現場現場で最適な検査計画を立案することを新しくうたっています。したがって、標準示方書に書いてあるからではなく、現場の実情を良く把握して検査を考えてほしいと思います。さらに、第3節以降の検査の標準はあくまで標準として示しています。といいますのは、小さな現場などでは多少は無駄があっても、個別に検査計画を立てるよりは一律に標準的な検査を行った方が合理的な場合もあるためです。これは、構造物の設計を性能規定的に行うのが主になっても、小規模な工事では標準設計を採択した方が安上がりになるのと同様の考え方です。従って、「検査」の章の3節以降は、日本の標準的な状況を想定して、あくまで標準的な方法を示しています。

 この標準を箱書きの中に入れるかどうかは、若干の議論がありました。箱書きの中に入れると従来のように金科玉条のごとく、これを守らないといけないと誤解される可能性があるためです。今回のご提案の運用は、まさに恐れていた事態です。すなわち、コンクリート標準示方書に書いてあるから、実施しなければならないというご提案だからです。

 骨材の種類は多く、その種類ごとのベストの検査体系を網羅するようなことを行うと、検査の章だけで膨大なページ数になることは容易にご想像いただけると思います。このため、あくまで標準的なものを示しているとご理解いただきたいと存じます。

 さて、砕石、砕砂を使用する場合、骨材中の粘土塊量の試験・骨材中の比重1.95の液体に浮く粒子の試験が必要かどうかですが、きちんと製造、品質管理がされ、輸送や貯蔵もしっかりしていれば、本来はほとんど必要ない試験です。

 粘土塊については、砕砂及び砕石の製造工程(粉砕、ふるい分け、洗浄)において自動的に排除されます。また、密度1.95g/cm3以下のものは亜炭などを想定していて、砕石に含まれる確率は極めて低いものです。有機物の試験なども同様です。そのため、JIS A 5005(コンクリート用砕石及び砕砂)に示されている品質基準には、これらの項目は入っていません。

 しかし、最近は砕石と言っても実際にはいろいろなものが混ぜられていたり、貯蔵に問題があったりする場合があるようです。そうした実態の把握がないままに試験項目を削るもの問題ですし、逆に製造・品質管理がしっかりしているのに無用な試験をただただ標準の試験項目にあるからという理由で続けるのも問題です。

 ここ数年の実態を調査され(あるいは生コンクリート工業組合からデータを提出いただき)、試験項目として存続させた方がよいかどうかを検討されるのが良いと思われます。

 

河野

次に、示方書の数値の丸めの考え方について、示方書に”2.5以上”とある場合は、数字のもつ意味から、安全側をとり、2.500・・・以上をさしているものと考えますが、協会の方は、”2.451”は2.5と考えています。示方書の考え方をお教え願います。

有効数字の考え方から言えば、協会の言い方が正しいです。

 ただし、例えば、試験結果が2.446のものを四捨五入して

2.45とし、それでOKとするのは×です。2.446は二桁なら

2.4です。

 

8

面部材の設計押抜きせん断耐力の式でf'pcdが平成8年設計偏では0.20√f'cdが今回3乗根になっていますがなぜですか?

ミスプリントです。失礼しました。正誤表を学会のホームページに掲載しております。平成8年設計編のとおりfpcd=0.20√f'cdです。

増井

9

2002年制定コンクリート標準示方書を施工者が使用する場合、4月以降発注される工事すべてに適用されますか?

されません。

 各工事は契約書の特記仕様書および共通仕様書等によって施工されなければなりません。従って、発注者が2002年制定コンクリート標準示方書の内容を、それらの契約図書に盛り込んだ場合にのみ、適用されます。

 土木工事の場合、工事に際し、どのような技術基準を適用するかは、一般に各発注者が各工事の発注の際に示す仕様書(特記仕様書および共通(標準)仕様書)に示されます。例えば、国土交通省発注の工事では、土木学会コンクリート標準示方書は、これらの仕様書の記述の中で参照されたり、設計図書において特に定めの無い場合の適用すべき諸基準のひとつとして引用されています。したがって、各発注者が

2002年制定のコンクリート標準示方書を参照または適用すべき基準として契約図書に取りこんだ場合にのみ一般に適用されることになる。ただし、施工者が発注者に対し技術提案を行う場合には、最新の示方書は有効な参考書のひとつとなるものと思われる。

 土木学会コンクリート委員会としては、各発注者の一般の仕様書に2002年制定のコンクリート標準示方書の内容が迅速に反映されることを期待しています。

 

河野

10

骨材のアルカリシリカ反応性の照査においてJSCE−C511でなくJIS法の方が規定されています。なぜJSCEが採択されないのでしょか?

耐アルカリ骨材反応性の照査を省略できる場合として

(1)  骨材が無害と判定された場合(区分A)

(2)  骨材が無害と判定されない(区分B)が、反応抑制対策を行う場合

としています。これらは、JIS A 5308-1998(レディーミクストコンクリート)の枠組みに従ったものです。

 一方、土木学会規準には、 JSCE-C 511-2001(コンクリート用骨材のアルカリシリカ反応性評価試験方法(改良化学法)(案))があります。この規準は、コンクリートとして有害な膨張を生じない限界のアルカリ量を化学的に推定する試験方法を規定していますが、これを耐アルカリ骨材反応性の照査を省略するための指標とするには現状では難しいと判断しています。この規準による十分なデータが蓄積され、(案)がとれましたら、JISに代わる方法あるいはもう一つの方法として示方書に採用される可能性はあると考えます。

 

11

@使用したパワーポイントのレポート用紙(ファイル)をいただけないでしょうか。内容が濃く、ゆっくり確認したいと思います。

 講習会で使用したスライドは,学会のhome pageから自由閲覧できるようにするべく,準備中です。

 

A発注者の立場として、性能を規定した場合、仕様書等への具体的な記述方法、事例を参考にしたいのですが何かあるのでしょうか?

示方書の条文・解説等を参考にしていただければ幸いです。性能発注(性能規定に基づく発注)を行う方式としては、設計施工一括または入札時VEで発注を行う方式が考えられます。性能発注を行うためには、まず求める性能を最初に明確にすることが重要です。次ぎに、提案された方法がこの性能を確保できているかどうかを確認する必要があります。示方書に示される内容は、事前にその性能を照査する方法を示しており、これを用いて確認することができます。ただし、その適用範囲に注意する必要はあります。

事前に照査する方法を持っていない場合は、提案者にその性能を保証してもらう方法を採用することも可能です。国土交通省発注の舗装工事で行われている性能発注では、ある供用期間後に残存している性能を測定する方法が採用されています。

B性能規定に伴い請負契約上、今までは仕様で示された品の単価契約となっていましたが、材料が変わること等により、契約上制約(変更手続き等)が必要なのでしょうか?

発注者にとって必要な性能とその条件を仕様書において事前に明確に示すことが極めて重要です。これに対して、受注者は、技術提案を行いますので、その採否を行うためには、その条件に基づき、採否の理由を明確に示すことが必要だからです。単価契約を行う場合は、提案された方法、材料に基づき契約することになります。

C60N/mm2程度の高強度コンクリートを普通コンクリートの上部へ打ちたす場合の注意点、性能上(仕様上?)で規定すべき点がありましたら情報をいただけますでしょうか。目的はダム排砂路の耐磨耗対策としてt=300mm程度表層を高強度コンクリートを使用したい。

特に追加情報としてありません。施工編に従ってください。

12

耐震性能照査編について

道路橋示方書との相違点について教えてください。

土木学会コンクリート標準示方書[耐震性能照査編]の基本的考え方を総則等で示す予定です。他の示方書との比較は、使用者にお任せしたいと思います。

丸山

13

JSCE−F531「PCグラウトの流動性試験方法について」について

1999年にJ14ロートからJPロートに改訂されましたが、これによる流下時間の相対的な増減は無いものと考えてよろしいのでしょうか?(端的に言うと、管理基準として扱っている流下時間、[例えば5〜12秒]を変更する必要があるかどうか?)

※追記:施工編13章の解説によれば、PCグラウトの流下時間は用いるグラウト材によって適宜定めるものととれますが、そうなると発注者の仕様書で定量的に示すのは適さないでしょうか?

 

ご質問のとおり、J14ロートからJPロートに改訂されたことにより、流下時間に差が生じます。したがって、J14ロートで設定した流下時間はそのままJPロートでは使用できません。JPロートを用いた場合の流下時間の管理基準はそれぞれの機関で改めて設定する必要があります。

なお、JPロートの流下時間とJ14ロートの流下時間の関係については、例えば、文献1)に示されています。それによると、両者の関係は次式で表されており、JPロートの流下時間はJ14ロートの流下時間の2倍弱程度となっています。試験に供したJ14ロートの流下時間の範囲は約5秒から約15秒となっています。

         y=2.01x-2.46

      ただし、y:JPロートによる流下時間

          x:J14ロートによる流下時間

 

文献1)池田正志・辻 幸和・山口光俊・金田和男:PCグラウトの流動性評価試験

    方法、プレストレストコンクリート技術協会 第9回シンポジウム論文集、

    pp.497-502, 1999.10

 

追記に関してですが、グラウトの流下時間はグラウトの性能をあらわします。したがって、PCグラウトの流下時間は、使用するPCグラウト材の性能によって変化するので使用するPCグラウト材ごとに適宜定めることが必要となります。また、示方書[施工編]では、PCグラウトの流下時間は「性能照査」の一環として「設定する性能」の一つとしていますので、定量的に示すことが必要となります。つまり、質問にある「発注者の仕様書で定量的に示す」ことが基本となります

 

梅原

14

コンクリートのポアソン比が、施工編耐久性照査型では0.167、設計編、構造性能照査編では0.2となっているようであるが、異なった数値となっている理由は?(記憶ちがいかもしれませんが)

コンクリートのポアソン比が設計計算等で支配的となる場合は一般的ではありませんが,短期荷重に対しては0.167が普通コンクリート単体の実際に近いと言えます。ひび割れを含むRC部材等では,数値を丸めて0.2と簡略化することで特に問題となることはありません。

 

15

ストラット−タイモデルについて

上記表題の適用方法について参考に文献等について教えてください。また、今後の展開についてスケジュール(案)を教えてください。

参考となるものとしては, Structural Concrete -Textbook on behavior, designand performance -Vol.1-2 fib発刊 19997,  [Design Examples] Bulletin 16号,fib発刊などがあります。その他,FIBから関連の出版物が複数出ています。ストラットタイモデルは今回の改訂で新設したもので,必要最小限の規定に留めてあります。本件の示方書条項のレベルアップもさることながら,設計資料を充実させることが,13章について重要と認識しております。2005-6年ごろに次の改訂が予定されています。

前川

16

コンクリートの水セメント比の規定については、国土交通省では無筋コンクリート60%、鉄筋コンクリート55%以下としていますが、コンクリート標準示方書の中で明確な規定を行わないのは、性能規定の考え方に沿わないからでしょうか?

おっしゃる通りです。

コンクリート標準示方書の中では、使用するコンクリートの水セメント比は、建設される構造物の荷重・環境条件等に応じて、コンクリートに求められる性能を満足するよう決定すれば良いことになります。

 

小澤

17

先日の17~18日、札幌会場で「2002年制定コンクリート標準示方書発刊に伴う講習会」を聴講させて頂きました。大変有益な講習会で示方書の理解を深めた次第です。

   以下、コンクリート標準示方書「施工編」の内容確認を含め、コンクリートの性能照査を、施工する業者側が行なうと仮定した場合の質問をさせて頂きます。

 

(質問の主旨)

      6章の「6.4   コンクリートの性能照査」における「@強度」「A中性化速度係数」および「B塩化物イオンに対する拡散係数」それぞれの予測値を算出する方法についてお伺いします。

 

@強度の照査(本文77ページ)のコンクリート圧縮強度予測値:f’cpの算出方法について

コンクリートライブラリー99(平成11年度版コンクリート標準示方書[施工編] 改訂資料)に「耐

久設計に関する設計例」が書かれています。その中で88ページ、92ページ、96ページそれぞれに、圧縮強度予測値を算出する為の予測式が示されていますが[f’cp=-14.6+24.5*(C/W)]、一般の場合、実際の現場で配合設定を行なった(C/W)をこの予測式に代入し、算出した値を予測値f’cpとして良いのでしょうか。またこの予測値を使用するにあたりセメントの種類などに制限などあるのでしょうか。設計例に使われたこの予測式はどちらからの式でしょうか。

  やはり基本的に、試験によって定数a,bを求めて予測式を算出しなければならないのでしょう

か。

  また別の方法として、生コンクリート工場には、それぞれ普通コンクリート7日圧縮強度試験結果から28日強度を予測する推定式を持っておられますが、その推定式から求められた予測28日強度をf’cpとし照査式に代入して照査して良いでしょうか。

@平成11年示方書改訂資料の計算例で用いられたコンクリートの圧縮強度予測値は、あくまで一つの例として用いられたものであり、特別な意味はありません。強度の予測式は、実績や試験に基づくものである必要があります。従いまして、生コンクリート工場において、信頼できる強度推定が行えるものであれば、どのようなものであれそれを利用することは問題ありません。

 

A中性化速度係数の照査(本文79ページ)について

  解説には、ポルトランドセメントの速度係数の予測値を算出する回帰式が示されています。また2.2「中性化の照査」(本文22ページ)に、普通ポルトランドセメントを使用する場合、W/Cを50%以下で30oのかぶりがある時は照査を行わなくてよいとあります。共に、ポルトランドセメントについてのみのようですが、速度係数の照査をする時、他のセメント例えば混合セメント(高炉セメントなど)の場合の回帰式などはないのでしょうか?高炉セメントなどを使用する場合の予測速度係数を求める手法を実験も含めお教え下さい。

Aコンクリートの中性化速度係数の予測値は、有効水結合材比W/Bの関数として表しております。高炉スラグ微粉末を用いる場合(つまり、セメントの一部を高炉スラグ微粉末で置き換える高炉セメントの場合)、Bが小さくなる仕掛けにしております。(p79参照)

 

B 塩化物イオンに対する拡散係数の照査(本文80ページ)の コンクリート拡散係数の予測値:Dp算出方法について

   解説には、普通ポルトランドセメントと高炉セメントを使用する場合の拡散係数の予測値:Dpを算出する回帰式が示されています。通常の現場で使用する普通コンクリートのW/Cは、55〜50%の範囲が殆どだと思われます。ポルトランドセメントの場合では、この現場W/Cを用い、この回帰式で拡散係数の予測値Dpを計算した場合、コンクリート拡散係数の特性値によって異なりますが、ほとんどが照査式による計算結果が1.0を満足しないのではないでしょうか。もちろん満足しない場合は、使用セメントを高炉にするとか、W/Cを小さくするなどの変更が必要だと考えますが、このポルトランドセメントの場合の考え方は間違っているでしょうか。理解不足の点はお許し下さい。

B塩化物イオンの侵入によって鉄筋の腐食が問題となる場合の対処の方法として、コンクリートのかぶりを増加させたり、コンクリートの水セメント比を小さくすることが考えられます。これでも、難しい場合には、エポキシ鉄筋を用いたり、コンクリート表面に塗装を施すことになります。さて、ご質問の意味を、普通セメントを用いて50〜55の水セメントのコンクリートを用いるという考え方に問題があるのかということと理解しました。塩化物の侵入は、コンクリートの性能、かぶり、環境条件に依存しますので一概には言えませんが、全体として相当厳しい結果となることは、平成11年示方書改訂資料の計算例が示す通りです。