概要  -口頭発表−



●口頭発表ID1-1-1

地域防災力向上を目的とした初等防災教育実践における一考察


原田 紹臣



柴田 貴司


中村 茂


三井共同建設コンサルタント株式会社
関西支社 防災室



三井共同建設コンサルタント株式会社
東京事業本部 防災室


京都市立陵ヶ岡小学校

三上 卓




井良沢 道也



群馬工業高等専門学校
環境都市工学科



岩手大学農学部 共生環境課程


 現在、土石流危険渓流等、地すべり危険箇所、急傾斜地崩壊危険箇所等を合わせた土砂災害危険個所は現在全国に約52 万箇所を超えるが、整備率(危険箇所数に対する砂防施設の概成箇所数の割合)は未だ2割程度と低い状況にある。そのため、施設整備による減災対策だけでは確実に人命を守りきることが難しく、ハード対策を着実に進める一方、それに並行して住民の「自分の命は自分で守る」といった自主的な意識が重要視されてきている。近年、防災意識の向上や危険時の的確な警戒避難活動を目標に防災教育が注目を浴びている。防災教育は1995 年の阪神・淡路大震災をきっかけに強く意識されるようになり、防災を所管する国土交通省をはじめ、文部科学省や日本の学術活動を代表する日本学術会議も防災教育の重要性をそれぞれ謳っており、様々な取り組みを始めている。

児童がしっかりと理解できるような効果的な進め方が必要だが、未だ学校教育における防災教育の体系化は進んでおらず、どのような教材を使って、どのように教育することが土砂災害についての科学的知識を養えるのかにおいては未だ手探りの状態である。それに加え、実施後の結果を考察する事例数が少ないため、今後さらなる研究が必要とされている。

このような背景より、本研究では、初等防災教育の実践により、災害や防災に関する小学生の知識、態度および行動の実態や経時的変化についてアンケート調査結果より分析(多変量解析による分析)し、今後の防災教育のための基礎資料を得ることを目的とする。

 

キーワード:防災教育、地域防災、土砂災害

 


●口頭発表ID1-1-2

小学校における交通環境学習の普及にむけた取り組み


岡本 英晃

加藤 信次

大藤 武彦

北川 真理


交通エコロジー・モビリティ財団

交通エコロジー・モビリティ財団

株式会社交通システム研究所

株式会社計画情報研究所

 環境に配慮した交通行動を推進する方策の一つとして環境学習がある。

しかしながら交通環境学習は、地域の交通事情により取り組みが異なるため、普及にあたっては地域の実情に合ったプログラムや教材が必要となる。

このような背景のもと、交通エコロジー・モビリティ財団では交通環境学習の普及を目指し、事例集の作成や交通環境学習に取り組む自治体への支援などを行い、全国への普及活動を行っている。

19 年度から支援を開始した金沢市では、将来の全小学校での実施を目指し、教材やカリキュラムの検討にあたり教員の方々との作業部会を設けて検討されており、わかりやすく活用しやすい教材の作成が進められている。また21 年度からは自転車安全教室と交通環境学習の連携など新たな取り組みが進められている。

また20 年度から支援している岐阜県御嵩町では教育委員会が中心となり、将来は全小学校での実施だけでなく、中学校への拡大などを目指して取組みが進められている。21 年度は1 校で、1 年生から6 年生まで、それぞれの学年ごとに適した教材を作成し、交通環境学習に取り組まれている。

本報告ではこれら2 自治体の取り組みについて紹介するとともに、当財団での取り組みについても報告を行う。

キーワード:モビリティ・マネジメント、教育委員会、交通安全教室

 


●口頭発表ID1-1-3

「土木の絵本」を通した学校教育へのアプローチ


高梨 弘久

緒方 英樹


財団法人全国建設研修センター 広報室


財団法人全国建設研修センター 広報室

()全国建設研修センターでは、土木の仕事や役割について、次代を担う子どもたちに興味関心と理解を深めてもらうため、1997年〜2002年にかけて、土木の絵本シリーズ全5巻(「水とたたかった戦国の武将たち」「人をたすけ国をつくったお坊さんたち」「おやとい外国人とよばれた人たち」「近代土木の夜明け」「海をわたり夢をかなえた土木技術者たち」)を企画・刊行、全国の公立小学校約2万4000校に無償で配布した。さらに、副読本や調べ学習等で活用を希望する小学校には、各巻40冊(一クラス分)を限度に追加配布している。

これらの絵本は、土木分野ですぐれた仕事をした人物に焦点をあて、国づくりの歴史や人と自然が共存することの意味などを考えながら、社会資本の重要性や土木の役割に気づかせる内容となっている。

本発表では、土木の絵本シリーズの小学校での活用状況を紹介するとともに、土木と学校教育をつなぐ可能性と課題について考察する。

キーワード:土木の絵本、国づくりの歴史と人物、土木と教育

 


●口頭発表ID1-1-4

ともにかかわりあいながら、自分づくりをすすめる社会科学習―「横浜の入り海を新田に!〜吉田勘兵衛の挑戦と現在のわたしたちのくらし〜」の実践を通して


野間 義晴


神奈川県横浜市立立野小学校

 本実践では、社会的事象にどうかかわっていったらよいかを考えるなど、先人の開発を自分のこととして身近に引き寄せ、学習を充実させようと考えた。具体的な体験活動を取り入れるとともに、「吉田新田」について、横浜市歴史博物館の学芸員の方に教えていただき授業を協働して行った。そして、先人の苦難へ挑戦する生き方にふれ、身近な過去の出来事が遠い存在ではなく、身近に引き寄せることができるようにした。

 

キーワード:先人の開発、吉田新田、かかわり合い

 


●口頭発表ID1-2-1

「土木の絵本」の土木技術者を授業に活かす〜第4巻「近代土木の夜明け」より〜


桝山 清人


()全国建設研修センター 試験業務局 造園・区画試験部 造園 試験課

「土木の絵本」は、(財)全国建設研修センターが土木の仕事とは何か、またその社会的な役割と価値を子供たちに理解・認識して欲しいという目的から、絵本として企画・発行したもので、以下の全5巻シリーズからなっている。

第1巻 「水とたたかった戦国の武将たち」(19972

第2巻 「人をたすけ国をつくった坊さんたち」(199710

第3巻 「おやとい外国人とよばれたひとたち」(1998.11)

第4巻 「近代土木の夜明け」(1999.9

第5巻 「海をわたり夢をかなえた土木技術者たち」(2002.3

「土木の絵本」は、全国公立小学校に配布され、副読本や調べ学習など様々な形で活用された(いる)。

しかし、「土木の絵本」を使用する小・中学校の教員はすべて土木系の教育を受けてきたわけではないので、絵本に登場してくる人物を知らないケースも少なくないと考えられる。

現在、筆者は教育現場に従事していないので詳細はわからないが、授業中教員の何気に話す人物のエピ

ソードなどに興味を持ったもので、未だに頭に残っているものもある。そこで、明治時代に活躍した人物

に焦点を当てた第4巻を例にして、歴史的に有名な人物との関係などを雑学的に紹介し、ひとつでも授業

の役にたてば幸いである。

 

 キーワード:土木の絵本、明治時代

 


●口頭発表ID1-2-2

実験河川を活用した環境学習プログラムの実践〜環境保全への取り組みに向け

て〜

真田 誠至

吉冨 友恭

萱場 祐一

独立行政法人土木研究所自然共生研究センター

東京学芸大学環境教育実践施設

独立行政法人土木研究所自然共生研究センター

 河川は身近な存在であることから,教育現場では環境の保全を学ぶための題材として取り上げられることが多い.河川での活動の多くは,魚や植物を観察する,水質を簡易検査器で調べる等,様々な学習が展開されている.しかし,環境保全を進める上で必要な河川のメカニズムと生物との関係についての理解は,生態学や土木工学など学問の境界領域にあり研究としての蓄積が不十分であること,また,得られている知見の共有も進んでいないことから,各自の先入観に基づき議論されることが多い.そのため,河川を題材にした学習プログラムには,科学的かつ具体的でわかりやすいな知見を取り入れ,河川の現象を正しく伝えることが重要となる.自然共生研究センターでは,全長800m の実験河川を活用し,河川を流れる水の量や空間を変化させ,河川に生息する生物の反応を検証することが可能であることから,河川の現象を,体験を通じて理解することができる.そこで,本報告では,河川における現象の理解を促進するため,河川特有の自然環境の特徴を整理し,当センターでこれまで行なってきた学習プログラムの実践事例を紹介する.例えば,河川特有の現象である流量変化による影響を理解するため,実験河川で洪水をおこし氾濫原が冠水する過程を観察する学習プログラムを行った.また,水辺の環境と生物の関係を理解するため,河岸が植生で覆われている河川とコンクリートで被覆されている河川とで魚類の生息状況を比較する学習プログラムを行った.本実践によって,研究施設を教育資源として活用する可能性が示されたこと,施設の特性を活かすことで自然河川では捉えにくい現象を効果的に伝えることができたこと,研究で確認された最新の科学的な知見を学習プログラムに反映できることが示された.

 

キーワード:河川環境、環境保全、学習プログラム

 


●口頭発表ID1-2-3

高大連携教育プログラム事例報告 −足利工業大学と足利工業高校の連携教育−


末武 義崇


足利工業大学都市環境工学科

 足利工業大学では、地元の足利工業高校の要請を受け、平成19 年度より高校の課題研究を支援することを目的とした、高大連携教育プログラムをスタートさせている。今年度で3 年目を迎えており、土木だけでなく、機械・電気・情報・建築など、様々な分野の支援プログラムが用意されている。

連携教育プログラムの初年度は、10 テーマの講義に対し、14 名の生徒が参加した。2 年目に当る平成20年度は9 テーマ・12 名、今年度は4 テーマ・8 名でプログラムを実施している。開講期間は4 月〜6 月であり、全10 回(1 9:0015:00)の講義および自己学習(実験・実習を含む)を標準としている。

筆者も、この連携教育プログラム実施担当者の一人として、初年度から3 年間に亘って合計5 名の生徒を受け入れ、課題研究支援を行ってきた。プログラムのテーマは、「アーチ橋の歴史探訪と模型作成」である。まず、第1 回目の講義で橋の起源やアーチ橋の歴史について概説する。さらに、アーチ橋内部における力の伝達メカニズムを体感してもらった後、プログラム全体の概要を説明して、高校生に課題研究の流れを把握してもらう。第2 回目以降は、高校生が自己学習する形で、歴史的なアーチ橋の調査とアクリルブロックを用いた模型実験を平行して実施する。最終的には、レポートとプレゼンテーション資料を作成の上、提出してもらっている。模型実験では、アーチ構造の起源である尖頭アーチの実験も併せて実施している。また、曲線アーチの模型実験では、適切なアクリルブロックの形状を決定するための、簡単なアーチ曲線の計算も行っている。プレゼンテーションそのものは、高校側で実施している。

本報告では、こうした足利工業大学と足利工業高校との高大連携教育の事例を紹介するとともに、教育における大学と高校との連携の意義や問題点について、筆者の意見を述べさせていただくつもりである。併せて、当日は、アクリルブロックのアーチ橋模型を持参し、模型実験の様子を簡単にデモンストレーションする予定である。

 

キーワード:高大連携、課題研究、アーチ橋

 


●口頭発表ID1-2-4

土木系工業高校で使用している自作メディア教材の紹介と問題点について


春日川 孝


仙台市立仙台第二工業高等学校

 教科「土木施工」及び「2 級土木施工管理技士」受験対策用に制作したメディア教材を実演しながら紹介する。さらにメディア教材を作成する上で画像や動画及び出版物などの著作権や資料収集の問題点を提示し、意見を求めながら打開策を探る。また、土木系工業高校の現状と問題点等も報告する。

 

キーワード:メディア教材、工業高校資格取得、著作権