道路や港湾、そのほかのいろいろな土木構造物・公共的な建築物などを通して社会基盤整備の意義を学ぶ社会資本学習は、大人でも難しい側面を有している学習である。その第一は力学的な構造に関する内容、その第二は社会資本整備に必要な費用や便益に関係する内容、その第三には建造に必要な技術や工法に関する内容などである。これらをまともに扱っていては高等学校の土木や建築学科の内容と似たようなものになってしまう。
小学校や中学校段階に社会資本学習を下していくためには、「楽しさ」が不可欠である。児童生徒が興味を覚えて学習対象として捉えてもらうための工夫が必要になってくるのである。発表者は、平成15年ごろより、中部地方整備局や中部建設協会からの要請で教員のための社会資本学習指導研修会を夏季に実施してきた。そこで研修会参加の対象としたのは一般公立小中学校の先生方である。この方々に関心を持ってもらわなくてはこの種の教育は一歩も進展しない。小中学校の教員に対してどういった研修内容を用意すればよいか、それは児童生徒が楽しく学習するための教材とその指導方法を獲得することにつきる。この要望に対して発表者は、児童生徒の身体を使った学びと地図帳を活用した学びの二つを教員に向けて推進している。
●体を使う学習法
アメリカの建築学界で紹介された「建築と子どもたち」(ニューメキシコ大学アン・テーラー博士考案)を取り入れて学習する方法がある。これは子ども自身の身体を駆使し、建築物の構造を体感させるもので、参加型の学習と言える。そのため、子どもたちが楽しく学び、実感できるメリットがある。柱と梁、トンネル、ドーム、トラス構造などを数人の子ども同士の関わりのもとで構築する学びである。一見、運動会で実演する組み体操のようにも見えるが、きちんと解説しながら進めることで子どもたちに構造物の力学を実感させることができる。
●地図を使う学習法
これは発表者が考案したワークである。小学4年以上に配布される地図帳を社会資本学習に活用する方法である。例えば、地図帳に掲載されている高速道路を指でなぞり、大きな河川と交差する地点に着目させ、その地点に必ず高架橋が設けられていることに気付かせる指導や、埋立地の土地利用を地図帳で判読し、埋立地は何のためにあるのか、発電場や工場の立地に寄与している事実に注目させる指導、空港の数を都道府県ごとに調べさせてカウントさせ、空港が地域の発展にいかに大切であるかを考えさせる学習、また架橋されていない橋梁の必要箇所はないか、トンネルなどの建設で地域が発展するのではと計画立案者になって建設を考える学習などがある。
当日は、参加者と共に体験的にこの学習法を学んで頂き、社会資本学習の楽しさを追体験してもらえればと願っている。
|