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利根かもめ大橋におけるヒヌマイトトンボ保護対策の事後評価

 

宮下 衛・染谷 保

 

1 正会員 独立行政法人国立環境研究所(〒305-0053茨城県つくば市小野川16-2)

2 正会員 ヒヌマイトトンボ研究会(〒310-0905 茨城県水戸市石川2-4313-9)

 

ヒヌマイトトンボは河川改修や開発により生息地が減少したため,環境庁により1991年に絶滅危惧種に指定されている汽水性のイトトンボである.2000年3月に開通した利根かもめ大橋建設地においてヒヌマイトトンボ生息地の事前・事後の環境影響調査を行なった.1997年の建設前にはヒヌマイトトンボは同橋下のヨシ原に多数生息していたが,2001年10月〜2002年7月に幼虫および成虫の生息状況を調査した結果,ヒヌマイトトンボは全く確認されなかった.ヒヌマイトトンボが利根かもめ大橋橋梁下の生息地から消滅した主な原因として,中央排水路の川幅を拡げ,板張りの水路の替えるという工法を採用したために,水路や湧水からヨシ原に流入する淡水量が激減し,@ヨシ原が乾燥化したこと,A幼虫が集中して分布する窪地が土砂の堆積により消滅したこと,B生息地の塩分濃度が上昇したこと,が考えられる.

 

Key Words: Tone Kamome Ohashi bridge,  environmental impact assessment, Mortonagrion hirosei,  endangered species,  mitigation