土木建設システムにおける
環境パフォーマンス評価研究小委員会の平成9年度活動概要


環境パフォ−マンス評価研究小委員会
(株)エックス都市研究所  斉藤  修



 本小委員会は、株式会社竹内良夫事務所からの委託研究として、平成9年度から10年度までの2年間の予定で、土木建設及び基盤システムにおける環境パフォーマンスを評価する方法論とその活用方法等について調査研究を行うことを目的としている。調査研究の初年度にあたる平成9年度は主に下記に示す検討課題に取り組んだ。

(1) 環境パフォーマンス評価に係る予備的検討
 小委員会設置当初、環境パフォーマンス評価については、ISOにおいて評価のためのガイドラインの規格化作業が進めれているものの、環境管理・監査やLCA等と比較すると、関連資料が少なく、環境パフォーマンスの定義、評価対象の範囲、環境管理システムとの関係等について共通認識が不足していた。このため、予備的検討として、文献調査、講師を招いての話題提供及びISOガイドラインの和訳作業を通じて共通認識の形成を図った。
 平成9年度報告書に掲載したガイドラインの和訳は、1997年11月現在のガイドライン案を小委員会内に設置したワーキンググループで分担して和訳したものであり、ガイドラインの最終的なものは1999年中に発行される予定である。和訳にあたっては、基本的には、既に正式に発行されている環境管理システムの和訳との整合を図った。


(2) 土木建設業における環境パフォーマンス評価
 ISOのガイドラインにおいて環境パフォーマンス評価をマネジメント・パフォーマンス、オペレイショナル・パフォーマンス評価及び環境(状態)評価と3つに分類していることから、土木建設業への環境パフォーマンス評価の適用検討にあたってもこの分類に従って検討を進めた。具体的には、各パフォーマンスごとに土木建設業での特徴、評価の方法、評価指標の事例等について整理した。
 実際のパファーマンス評価にあたっては、報告書で事例として掲げた評価指標等から、各事業所の環境方針・目的、指標選定のアプローチの方法等に応じて限られた数の指標で評価を行っていくことが考えられるが、土木建設システムに係る評価指標の体系及び基本的な評価方法について、概ねその全体像を示すことができたと考えている。



今後の課題

 平成9年度は、調査研究の一環として、ISOにおいて規格化が進められている環境パフォーマンス評価ガイドラインの和訳を行ったが、用語の統一、訳の見直し等を適宜行うとともに、今後は、土木建設界において通常用いられる用語との整合性を考慮して修正していくこととしたい。
 環境パフォーマンス評価の土木建設システムへの適用の基本的な考え方(総論)及び考えられうる評価指標の事例等を本年度は整理したが、ここで掲げた指標による実際の評価までは行っていない。従って、土木建設システムの現場(設計から施工、管理まで)を想定した指標の選択、評価のためのデータ収集、分析及び評価を行い、どのような課題・問題点があるのかなどの各論について検討を深めていくことが必要である。
 環境パフォーマンス評価は、ある事業所の時系列的なパフォーマンスの評価のためのツールとして有効であるが、現状では、環境パフォーマンス及びその評価指標について共通認識が形成されていないことから、その事業者が設定した指標及び評価基準の適正さや水準の判断、同業他社との相対的な比較等が困難な状況にある。従って、環境パフォーマンス評価に係る共通認識の形成、評価の信頼性確保等の観点から、業界や学会として標準的な指標及び評価方法を開発し、外部に示していくことは意義あることである。また、土木建設業は施工請負が中心であるため、事業者が自ら指標、評価基準、目標等を設定するのが難しいのが現状であるが、将来的に施工者の立場から発注者への提言活動も視野に入れて、業界や業界がパフォーマンス評価の標準化、共通目標の設定等を行っていくことは重要である。
 このほか、今後の課題としては、社会基盤システムの環境インパクトの評価及びインパクトのマネジメント(管理)システムの検討など、社会基盤システムという視点から検討を進めていくことも重要である。

HOME 前のページに戻る