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環境水理部会 動的総合土砂管理に関するWG in 耳川の報告
動的総合土砂管理に関するWG in 耳川
動的総合土砂管理に関するWGの第1回現地見学会につきましては、宮崎県にて予定通り実施されました。見学した耳川水系は、国内で初めて3つのダムが連携して通砂を実施する事業を計画しており、また事業内容や環境モニタリング調査においても日本で最も先進的な事例です。ダム通砂のために既存ダムの切り欠き工事を行う山須原ダムと西郷ダムの工事現場、また最下流の大内原ダム貯水池および河川環境の変化が想定される地点などの視察を行い、有意義な議論や意見交換ができました。今回の見学会開催にあたり全面的にご協力いただいた、九州電力耳川水力整備事務所の方々に感謝いたします。
1.日 時
平成27年6月23日(火)
2.場 所
宮崎県日向市、美郷町、諸塚村 耳川流域
3.参加者
総数12名(部会委員6名、一般参加 6名)
4.内 容
(1) 山須原ダム(ダム改造工事)
耳川水系の下流から3つ目のダムです。現在、通砂運用時に使用する新設ゲートを設置するための切り欠き工事中です。台風により土砂だけでなく流木が流入し、ダム堤体付近に大量の流木が堆積していた影響により仮締切を設置するまでの工事が非常に困難だったとのことでした。このことからもダムは、近年治水・利水上の課題となっている流木を大量に捕捉する施設の一つであることが推察されます。 当日は梅雨の影響により上流からの流入量が多く、ダムゲートからの放流を行っており、大迫力のゲート放流を間近で見学することができました。 (2) 西郷ダム(ダム改造工事)
耳川水系の下流から2つ目のダムです。こちらのダムは、新設ゲートを設置するための切欠き工事が終了し、すでに大型ゲートが据え付けられています。日本でも最大級のローラーゲートであり、写真に納まりきらないほどの迫力があります。チャペルの鐘のような形をした構造物に角落としの巻き上げ機が収納されています。ゲートの大きさに比例して、こちらもかなりの大きさです。 (3) 大内原ダム貯水池(覆砂工事、護岸工事)
耳川水系の最下流ダムの貯水池です。こちらのダムについては、他のダムと異なり改造を実施しないダムとなっています。しかし、山須原ダム、西郷ダムと比較して貯水池が広く、特に石峠レイクランドの前面付近は、河道幅が広く細粒分が堆積しやすい傾向にあります。そのため、細粒分の巻き上げを抑制させることを目的とした覆砂工事を事前に実施しています。また、貯水池が広いことからダム通砂の十分な効果を得るためには、水位を通常よりも大きく低下させなければなりません。水位を大きく下げることで護岸がそのものが不安定になる可能性や掃流力により浸食される可能性があるため護岸を補強する必要があります。そこで、ネットの中に大きな礫を入れた土嚢のような構造物を腹付けし強度を高めています。 (4) 鹿瀬地区
大内原ダムの下流数km地点です。一見何の変哲もないところですが、大内原ダムの建設から約60年間土砂の流下が不足し粗粒化の傾向がある地点です。現在はツルヨシが生えていますが、将来のダム通砂の実施により、これまであった土砂に比べてが小粒径の土砂が堆積することで、植生にどのような変化が起きるのか注視する必要があると考えられています。また、当地点より上流の生物モニタリングの地点における結果から、これまで不足していた粒径の土砂が流下することでカマツカやボウズハゼといった河床材料によってハビタットが決定される魚類の応答が想定されています。 (※ 写真はゲート放流のため平水時よりも流量が多い状態となっています。) (5) アユ産卵床造成場
河口からの8km程度上流の地点です。ダム通砂によるアユ産卵床への影響を把握することを目的に、現在はダムで留められている土砂を当該地点まで運搬し、毎年、漁業共同組合と九州電力の方々が協力して産卵床の造成工事を実施しています。当該地点については、毎年アユの産卵が確認され天然アユの再生産に寄与しています。また、大内原ダム下流のすべての瀬について産卵の有無と物理環境を調査しており、その結果を整理することで、アユの産卵に適した河床条件も明らかとなっています。ダム通砂を実施することで将来的に、当該地点にもアユの産卵に適した土砂が供給され、安定的なアユの再生産に寄与する可能性があると考えられます。 (※ 写真はゲート放流のため平水時よりも流量が多い状態となっています。) Copyright(c) 2012 Japan Society of Civil Engineers. All Rights Reserved.
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