土木学会・土木計画学研究委員会
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平成17年度第2回土木計画学研究委員会幹事会・議事録
日 時:2005年10月6日,13:00-17:00
場 所:土木学会,会議室
1. 出欠
- <出席>
- 委員長:岡田憲夫(京大),副委員長:加賀屋誠一(北大),宮本和明(武蔵工大),幹事長兼常任委員:朝倉康夫(神戸大),委員兼幹事:上田孝行(東大),片田 敏孝(群馬大),岡村寛明(パシフィックコンサルタンツ),張峻屹(広島大),奥村誠(広島大),内田賢悦(北大),長江剛志(神戸大)
- <欠席>
- 委員兼幹事:加藤浩徳(東大),出口近士(宮崎大),田中尚人(岐阜大),日野智(秋田工専),高橋勝美(計量計画研究所),土井健司(香川大),由利昌平(三菱総合研究所),加藤博和(名古屋大)
2. 17年度新規委員
- ・ 公募および推薦の委員候補者5名全員が承認された.
- 山本 晴夫 (株)長大
中野 雅弘 大阪産業大学
中井 秀信 東京電力株式会社
新谷 陽子 (社)北海道開発技術センター
市場 一好 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
3. 岡田委員長話題提供・ディスカッション
- 研究者として,為政者として,教育プログラムとして,個別に目標がある.
- 教育としてみるならば,システム科学的センスを持っている人を育てるべきであり,そのための入り口はどのようでも良い.システム科学的センスの優れた人は例えば交通計画からスタートしても,別の視座を与えられると伸びていく.システム科学的センスを再教育・再認識する戦略も考えられる.
- 研究者集団の中で閉じるインブリーディングは避けるべきである.土木学会の他分野のアジェンダを見ると,土木計画に似たものを出している.経済系やハード系の人との差別化と総合化の両方が必要.他分野との差別化には,土木以外の他分野と勝負になる研究成果が必要.総合化にも論理技術・システム科学的視点が必要である.それがなければ,何でもやるが成果がない,議論はあるが雑だ,ということになる.土木計画学が今までの領域に留まっているようでは,縮小生産を是とすることになってしまう.
- 研究者・研究者集団を運用していく上で必要なものは何か.研究にポピュリズムのようなものがある.時宜を得ていれば良い,ウケれば良い,現場に近ければ良い,など.現場に行って現地を見た体験を自己満足のような形で発表する人も多い.数式を使ったものは役所にも理解されないし,役にも立たないから要らない(と解釈できるような)意見もある.筋金が入っていようが居まいが,ニーズがあって目新しいアプローチだったら評価されるというのは良くないのではないか.例えば,他分野では新鮮味のない発表内容でも,土木計画では「新しい発見」のように発表されている.それを見た学生も楽な方へ引き寄せられてしまう.アマチュアの思いつきでできることと,プロフェッショナルにしかできないことをはっきり分けないと,プロの誇りも培われない.
- 我々自身がポピュリズムに媚びる必要はない.「参加(アプローチ)が重要」という人には,なぜ「参加か」ということを根源的に問うべき.逆に,「なんとなく参加が嫌い」という批判でなく,自らが「参加」に対する答えを持って論争するべきである.その論争の中から,暗黙知・体験知を引き出して定型知にするべきである.論理技術,システム科学というのが大事ではないかと考える.
- 従来のフィールド研究が調査論軽視,自己満足的に見えるのは,論理が足りないからである.しかし,(土木計画学の)研究者を科学と技術と社会とのコミュニケーターと考えると,社会の人には論理的でない方が判り易い,という評価があることは無視できない.きちんとしたものを作り,それをわかりやすく伝えるのは大切.論理の壁に阻まれて真実を伝えられないのは良くない.
- フィールド研究を科学にどう発展させるかというのは,一筋縄ではない.(フィールドに限らず)研究するなら異質でもいいが,真実あるいは論理として的確なコミュニケーションを取れる必要がある.土木計画学は純粋理論研究でなく,具体の事例があって研究しているのだから,実務的研究・工夫を評価するシステムが必要.
- フィールド研究を専門としない人にもフィールド科学が評価される仕組みを作る必要がある.そうすることで,立体的かつシステマティックな評価が可能となる.そういう評価で発見される実践知の種(たね)が土木計画学にはいくらでもあるだろう.
- 委員長としては,土木計画学をフィールド研究へ引っ張っていくつもりはない.問題提起(メッセージ)を発することで,それがフィードバックされ,結果として,相互のコミュニケーションが成り立てばよいと考える.
4. 加賀屋副委員長話題提供・ディスカッション
- 「工学」という意味は,何らかの解答を見つけるもの.「工学」は他に自然科学技術(science-techno)という意味も含む.
- 土木計画としては,政策と計画を繋ぐだけでは不十分で,事業プログラムまでも含まないといけない.土木計画の持つ論理技術を活用した政策立案・実行が必須.
- 教育現場・プログラムとして,現場から何かを掴み取ってくるようケース・フィールドが必要である.同時に,論理学の鍛錬を行う場も必要である.
- 計画→政策(ソフト・インフラ),計画→事業プログラム(ハード・インフラ)の各局面でどのように情報を蓄積・整理・体系化・提供するかが大切であろう.
5. 土木計画学として取るべきアクション
- 実践・フィールド科学としての土木計画学の具体化.方法論,知識の共有化についての具体的アクションを考えよう.
- 2006年1月に,地域経営塾の仕事とも関連した議論を開催することも検討中.
- 計画学の春大会に,それまで培った知見を広く報告し,他の研究者からも意見を伺うという方針で進めたい.
- 「計画学に必要なフィールド・実践科学」を考え,提案し,その議論に乗ってくれそうな方を探していくという方法が良いのでは.医学に例えれば,土木計画学はこれまで病理の視点を中心としてきたが,臨床的視点としてのフィールド研究が必要である.
- フィールド研究の成果として,論理の連鎖として論文を書き上げたかどうかは疑問だし,たった一つのケース・スタディを持ってきて,実証研究と呼んできたことも気になる.若手のためにも,土木計画学の中に行動論や行動観測というフィールド研究を評価し,堂々と仕事できるような土壌が欲しい.
- フィールドから新しいファクト・ファインディングがあれば,そのファクトは高く評価されるべきであるし,そのファクトを発見するための考え方・見つけ方が新しいならば,それも評価されるべきである.そして,問題解決に繋がったならば,その点も評価されるべきである.それら全部がなければ評価されない,ということはない.どこを見て評価するべきかについて議論する必要がある.
- 論文集の査読内容にも,新規性,将来性,有用性などがある.これをフィールド研究にあてはめたとき,どのように評価するべきか.あるいは,その軸で評価しても良いのか.評価項目を追加するべきであれば,どのような項目が必要なのか.フィールド研究をも含む立体的かつシステマティックな評価の仕組みを議論する健全な場を設けよう.
- そのためにも,試論としての論文があり,そこのどこを評価するべきか,何を付け足せばさらに評価できるのか,というプロセスとその情報を共有することが必要.単なる批判ではなく,常に対案を出す.査読の領域を超えているが,まずはトライアルとしてやりたい.その経緯については公開する.
- 試論としては,群馬大学・片田先生の既出論文をご提供していただく.議論には片田先生のところの若い方にも参加していただきたい.
- ● 片田先生論文をモデルケースとしたワークショップ
- 日時: 2005年12月19日(月曜)13:00-16:00
場所: 土木学会(予定)
<議事録文責: 朝倉・長江>
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