土木計画学研究発表会年2回開催について


土木計画学研究委員長所感 土木計画学研究発表会年2回開催骨子


土木計画学研究委員会委員長所感
(2001.3.16付IPメールより)


土木計画学研究委員会委員長
稲村 肇(東北大学教授)


 先般の土木計画学研究委員会で土木計画学研究発表会を春秋の2回開催するという案が決定され、計画学委員会活動報告として発表会2日目に報告された。これは本年7月以降、土木計画学研究委員会幹事会、土木計画学研究編集小委員会での検討結果を受けて計画学研究委員会で決定したものである。 しかし、この決定は5ヶ月間の集中的な検討がなされたといえども、土木計画学研究発表会に参加されている多くの研究者、学生、官庁、民間の方々にとっては唐突な印象を与えたという感想を私の周辺数名の方々からご指摘を受けた。
 我々委員会のメンバーは、それらの指摘が妥当なものであると受け止めたが、計画学委員会として正式に会員各位に報告する手段・機会が無いため、幹事会の判断で「委員長の所感」という形でIPメールを通して追加説明をすることとした。
 従って、この文章は幹事会の検討を受けたとは言え、計画学委員会としての正式な報告でないため「委員長の所感」という形を取っており、文責は委員長個人にあることを明記する。

[改革の必要性]

 研究発表会の現状評価、改革の必要性ならびに利点、問題点については活動報告にある通り、以下にまとめられる。十分に吟味されたい。これらの必要性は事実である。
 しかし、私自身が考えている改革が必要である理由は他にもある。

1.最大の理由は土木技術者専門資格の導入に伴い予想される、民間部門からの論文投稿の急増に対応すべく準備を進めることである。

 専門資格制度の基準策定は来年、2001年3月までに修了し、遅くとも2002年4月には制度が発足すると考えられる。専門資格は北米、欧州との相互認証が前提となっている。そのため、専門資格の取得、専門資格の更新には欧米で実施されている基準/すなわち、学会への参加、セミナー・講習会への参加、査読付論文集への登載本数などが点数化されて導入されることは確定的である。土木計画学の分野で専門資格を取ると予想される分野は以下の通りである。
  1.コンサルタント技術者
  2.ジェネコンー企画調査部門技術者
  3.自治体を含む官庁技術者
  4.海外経済援助担当者
このうち1.と4.の技術者にとって専門資格は死活問題となると予想され、2.3.を含め2003年位から、急速に参加者、投稿論文数が増加すると予想される。予断を恐れず言えば5割増、600編程度の発表希望が集まると予想している。これに現在の体制で対応することは不可能に近いし、発表を制限することは望ましくないと考える。

 現在資格制度に関する検討が進み,以下の資格が認定される予定である。ただし上級・・といった名称までは確定していない。
  上級技師 2001年度
  1級技師 2002年度
  2級技師、技師補 2003年度

2.第二の理由は危機的状況にある土木学会論文集の建て直しである。

 土木学会論文集第4部門に対する投稿が減少の一途を辿り、危機的状況であることは皆様、ご存じのことと思う。このことは土木学会論文集の全体委員会でもしばしば問題とされ、第4部門の存亡の危機とも言える。
 もちろん論文集は組織的には計画学研究委員会とは無関係で論文集編集委員会のマターであることは十分承知している。しかし、第4部門の投稿者の大半が土木計画学研究委員会を主たる活動の場としていることを考慮すれば座視はできない事は皆様にも同意いただけるだろう。
 計画学研究・論文集が電話帳となり、第4部門の論文集がパンフレットの様になってしまった。答えは一つであろう。
 しかし、性格の違う組織、制度、論文集を融合することは容易ではないし、私にも現在、定まった案があるわけではない。ただ、第4部門が年4回の発行であるかぎりは計画学が1回ではどうにもならない。計画学が年2回となれば何らかの形で良好な関係を築く事ができる可能性が飛躍的に高まることは理解できるであろう。
 編集委員会同士の協力関係ができればそれは両論文集にとって望ましい結果をもたらすと考えている。


2001.3.13

土木計画学研究委員会
幹事会・編集小委員会

『土木計画学研究発表会の年2回開催実施案骨子』

 土木計画学研究委員会では、これまで土木計画研究発表会を年1回開催してきたが、現行計画学発表会に関する問題点ならびにその改革の必要性の観点から、2002年(平成14年)より年2回開催することとした。ここでは、現在検討中の年2回開催実施案の骨子を以下に示す。

1. 現行計画学発表会に関する評価・問題点:
   現行計画学発表会は、第17回の改革以降における発表論文数の増加が著しく、最大14教室の会場確保といった物理的制約が大きくなるなど行事運営上の困難さが増している。またこのパラレルセッション数が多いことは、参加者が多くの研究討議に参加できないこと、そしてプログラム編成(セッション構成、コメンテーター割付など)における調整作業量も増大させている。

2.将来展望を通じた改革の必要性:
   土木計画学研究発表会を取巻く諸環境の変化によって、以下に示すような視点からの積極的な改革が必要である。
 (1)土木計画学研究委員会活動の活発化:発表会の質的充実化の必要
    ・現行発表会運営における物理的制約増大による内容的質的レベルの充足度の低下回避
    ・情報公開法の実施や研究評価など委員会活動を取り巻く周辺環境の変化への対応
    ・計画学研究の分野拡大化と細分化への対応
 (2)技術者資格制度の整備に伴う実務技術者の発表会参加および投稿論文数の増加への対応
 (3)国際化への対応;留学生・大学院生の増加,技術移転,国際ジャーナルとの連携

   したがって、委員会活動の中で、この研究発表会の位置付けが今後一層重要といえ、その発展的拡充が緊急課題として考えられる。

3.年2回開催案検討の前提:

  (1)目的:上記の改革の必要性(とくに,計画学研究委員会活動の活発化)に整合させながら,現行発表会の問題点の解消や将来予想される新たな問題点への対応をはかる。
  (2)前提条件:
      1) 単純な量的拡大をさけるため,春期と秋期の発表会の差別化を明確にする。
       そのために、行事区分を通じたメリハリのつけ方を工夫する。
      2) 計画学発表会としての現状との継続性(とくに秋期大会に対して)を考慮する。
        論文発表・研究討議の重視→プレゼン時間の確保,コメンテータ制
        一般論文講演集・審査付き論文集の2段階選抜
                   →発表機会創出(発表数の規制無し),論文集発行
        計画学研究・活動の普及 →地方都市開催を原則,特別講演会

4.提案する実施案の利点と特徴:

   ■2回開催の一般的利点について:
    研究討議への参加機会が増加するとともに、プレゼンや討論の重視によって発表会の質の向上がはかられる。また、特色あるセッション/行事への参加が可能となり、研究分野拡大への対応も期待できる。発表会の運営面において、開催校(1校あたり)の負担減になるとともに、発表論文の分散化による発表会の円滑的な運営ができる。

   ■春・秋大会のそれぞれの特徴について:
   <秋期大会>:現状の計画学発表会の継続性を維持
      ■論文発表(一般)+特別講演+招待論文を中心とする構成
      ■論文発表の形式は従来通り(コメンテーター制)
      ■地方都市開催を原則
      ■講演集発行+事後に審査付き論文集発行
   <春期大会>:従来にない企画型論文発表の導入を柱に新規性をアピール
      ■論文発表(企画)+スペシャルセッション+小委員会主催SSを中心の構成
      ■論文発表(企画)で従来の一般論文の吸収を意図/企画セッションのテーマの明確化
      ■開催地は,2巡目あるいは全国大会開催地も許容
      ■講演集は,当日のhand-out資料(持ち込み資料)を含めて事後に簡易オフセット印刷
■秋期大会に対応する審査付き論文への投稿は許容
■春期大会発表論文の土木学会論文集への投稿推奨

5.実施案の概略:

(1) 開催時期
      春期大会(3月申込→ 6月発表会) 当日持ち込み論文と事後の講演集発行
                     
      秋期大会(7月投稿→11月発表会) 発表会講演集の事前発行と事後の審査付き論文集発行
 

表1 発表会開催時期と講演集・論文集投稿時期
講演集申込・〆切 発表会開催 論文集投稿〆切 論文集発行
春開催 3月上旬
企画論文・SS申込
6月上旬
事後講演集発行
翌年3月下旬 翌年9月下旬
秋開催 7月下旬 11月下旬 翌年3月下旬 翌年9月下旬



(2)行事区分

表2 実施案における行事区分
行事 現行 2回開催(秋期大会) 2回開催(春期大会)
論文発表(一般)
論文発表(企画) - -
スペシャルセッション
小委員会主催SS -
特別講演会 -
招待論文 -
懇親会 -
ランチオン - -
委員会

注)表中の●と○との両方併記の場合は,●印が中心(8割-9割)を占めることを表す.



6.編集体制:

(1)編集小委員会の構成
1) 秋期発表会は,現状のものとほぼ同体制で行う.
ただし、審査分野数やカテゴリー設定などのマイナーな変更はある.
2) 春期発表会は,編集小委員会の中に,6名の「春期分野」担当を新たに設置.
  (従来のA分野担当,B分野担当,…と同規模のイメージ.)
3)「春期分野」担当委員は、3年間任期で2名ずつ交代とし、その主な任務は,春期発表会のプログラム編成・管理,企画型論文・SSの公募と企画,および,それらに伴う事務作業に関して土木学会職員を補佐する.

(2)講演集および審査付き論文集の発行
講演集:
1)秋期大会の講演集は、現時点では従来通りとする(ただし、CD-ROM化など検討を開始)
2)春期大会の講演集は、当日持ち込み方式とするが、事後に講演集を発行する。具体的な発行方法(例えば簡易オフセット版など)はこれから検討する。

審査付き論文集:
1)従来通り,秋期発表会に合わせて審査付き論文集の編集,発行を行う。
2)春期発表会での発表論文も投稿を許容する。また、土木学会論文集への投稿を奨励する。
3)H13年度発行予定と同様に,分冊化する.


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