公益社団法人土木学会  地盤工学委員会
斜面工学研究小委員会 

 活動主旨

平成30年7月に西日本を中心に北海道や中部地方を含む広域に発生した土砂災害のように、豪雨による被害が全国各地で突発する状況にあります。また、平成28年4月の熊本地震や平成30年9月の北海道胆振東部地震のように、日本列島あるいはその周辺の地震活動は依然として活発で、首都直下地震や南海トラフを震源域とする巨大地震での発生が危惧されています。他方、最近では熱海市での土石流災害や大阪市西成区の石 積み擁壁の倒壊事故など人工構造物が起因した崩壊事例が多発しており、適切な維持管理や状態把握に加えて、居住地域の自然災害リスクを含めて検討する必要が指摘されています。
国土の約七割を山地が占めるわが国には無数の自然・人工斜面が存在することから、大雨や地震の際に斜面 災害から生命を護る行動や日頃の備えが重要であることは言うまでもありません。しかし、昨今の災害が無くならない状況をみると、被災事例から得られた課題や教訓をもとに既存の知識や技術を見直し、防災・減災対策に反映すること、地域の関係各所に避難の重要性を分かりやすく伝えていくことが求められていると考えます。
そこで、この度、斜面工学研究小委員会をリニューアルし、このような課題に対応していくことに致しました。この小委員会では、斜面工学に関わる新しい課題を抽出・整理し、解決する方策を検討し、その成果を他分野と融合した総合科学として体系化するとともに、学会員のみならず、広く社会に対して成果を還元する活動を行うことを目的とします。具体的な活動項目は、以下のとおりです。

1.  斜面工学に関わる新しい課題の抽出・整理と解決への取り組み:宅地地盤の耐震化、火山地帯の土砂災害、斜面の維持管理・補強
2.  斜面災害の調査研究:突発災害に対する緊急調査、既往災害(新潟県中越地震、熊本地震等)の継続的な調査研究
3.  斜面・地盤調査に関する知識・技術の向上と伝承:年齢・所属を越えた技術者同士の交流による技術力 の向上と伝承
4.  防災教育の推進:児童生徒や市民向けの防災啓発活動
5.  斜面工学の普及活動:7期で刊行した総合的な一般向け書籍「斜面のはなしQ&A②」関連の普及活動
6.  他分野と融合した新たな研究領域の模索:災害関連の法律・制度、リスク評価、災害保険など