*** 第8期 第11回環境問題研究小委員会議事録 ***
日 時:2003年4月21日(月) 13:30〜15:30
場 所:土木学会 D会議室
出席者:荒岡邦明、有馬聡三、石川一、黒木浩則、高松治、松尾幸徳、真鍋章良、柳沢満夫、
岡本憲一、船附晃夫、劉正凱
1.一般議題
@ 本年度の研究テーマは、前年度に続いて「循環型社会を目指した社会資本整備」とする。活動は委員会における研究報告を主体とし、その結果をまとめて報告書を作成する。なお、第11回地球環境シンポジゥム(7月)において「鉄道建設事業における環境負荷の低減と環境アセスメント」を発表する。
A コンサルタント委員会ホームページの更新は、4月(平成14年度下期議事録)及び10月(平成15
年度上期議事録)の2回とする。
2.研究報告:アジアの環境アセスメント事例
報告者:三井共同建設コンサルタント梶@岡本憲一
1)火力発電所の環境アセスメント
火力発電所におけるCombined Cycle
Power Plant(CCPP)の増設計画であり、燃料は重油から天然ガスへ転換されるので、大気環境は改善されることが前提の事業である。環境影響評価書は、@序論、A調査手法、B事業の概要、C環境の現状、D環境影響の予測、E影響影響評価の全6章で構成されており、海外プロジェクトのEIAとしては標準的構成である。報告書の特徴として、近傍の湾に対する温排水の影響に係る予測と評価が重要視されていること、社会環境に関する記述量が多いこと等が挙げられる。選定された環境要素は次のとおりである。
a) 現況調査:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、社会環境
b) 予測・評価:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、廃棄物、社会環境
c) モニタリング:大気、水質、動植物・生態系、社会環境
2)橋梁建設の環境アセスメント
橋梁が建設される湾は首都の東方約130qに位置し、世界遺産に指定された風光明媚な海域である。この橋梁建設事業は、橋梁を建設すると共にフェリーを廃止するものであり、船舶による水質汚濁の改善が期待される計画である。環境影響評価書は、@序論、A事業の概要、B重要な環境問題、C環境の現状、D生活環境の評価、E生物資源に対する影響、F社会環境・経済環境の影響評価、G代替案の影響評価、H環境保全対策、I総合評価の全10章で構成されている。報告書の特徴として、交通騒音は対象とするが交通振動は扱っていないこと、世界遺産の指定地域なので景観について現況調査・予測・評価が行われていること等が挙げられる。また、湾には貴重な水生生物が生息しているので動植物と生態系について重要視されている。代替案の章では、主橋・取付け道路・取付け部の橋梁・接続する道路の構造やルートについて比較検討が行われている。なお、自動車交通による二酸化炭素の排出量に関する記述はない。選定された環境要素は次のとおりである。
a) 現況調査:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、景観、社会環境
b) 予測・評価:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、廃棄物、景観、社会環境
c) モニタリング:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、社会環境
3)下水道終末処理場の環境アセスメント
当該国の環境影響評価法が制定される以前の事例なので内容的には多少不足している。環境影響評価書は、@事業の概要、A地域の概況、B環境要素の選定、C調査手法と予測手法、D重要な環境影響(保全対策前)、E総合評価と結論、F附録の全7章で構成されている。報告書の特徴として、事業特性に基づき悪臭が選定されていること、モニタリングの記述が省略されていること等が挙げられる。選定された環境要素は次のとおりである。
a) 現況調査:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、廃棄物、悪臭、社会環境
b) 予測・評価:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、廃棄物、悪臭、社会環境
c) モニタリング:記述なし
4)国道の環境アセスメント
地方に建設される国道の環境アセスメントである。環境影響報告書は、@序論、A事業の概要、B地域の概況、C環境影響評価、D環境影響の予測、E影響保全対策、F代替案、G環境に係る経済的損益の分析、H環境保全管理とモニタリング計画、I結論と提案の全10章で構成されており、地域の概況では環境の現状・環境要素の選定・スクリーニングについて記述されている。報告書の特徴として、交通騒音は対象とするが交通振動は扱われていないこと、動植物・生態系の技術レベルが低いこと、景観が省略されていること、附録としてモニタリング地点図が添付されていること等が挙げられる。なお、自動車交通による二酸化炭素の排出量に関する記述はない。選定された環境要素は次のとおりである。
a) 現況調査:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、社会環境
b) 予測・評価:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、社会環境
c) モニタリング:騒音振動、大気、水質
5)高速道路の環境アセスメント
主要幹線国道のうち、地方における高速道路の環境アセスメントである。環境影響報告書は、@序論、A事業の概要、B環境の概況、C環境影響予測と環境保全、D代替案、E環境に係る経済的損益の分析、F環境管理とモニタリング計画、G住民参加、H評価の結論の全9章で構成されている。報告書の特徴として、交通騒音は対象とするが交通振動は扱われていないこと、動植物・生態系の技術レベルが低いこと、景観が省略されていること等が挙げられる。なお、自動車交通による二酸化炭素の排出量に関する記述はない。選定された環境要素は次のとおりである。
a) 現況調査:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、社会環境
b) 予測・評価:騒音振動、大気、水質、動植物・生態系、社会環境
c) モニタリング:騒音振動、大気、水質
6)まとめ
全事例についてまとめると次の問題点が指摘できる。
@ 景観と動物に対する評価が不足している。
A 技術者の工学的基礎知識を疑うようなケースが存在する。
B 環境基準は、単位や地域類型等の相違(日本、世銀、……)を理解し摘要しなければならない。
C 貴重動植物や文化財等のように定性的評価となる要素の評価が不満足である。また、環境基準を超過している場合の評価も難しい。
*** 第8期 第12回環境問題研究小委員会議事録 ***
日 時:2003年5月30日(金) 13:15〜16:00
場 所:土木学会 D会議室
出席者:荒岡邦明、石川一、泉浩二、大谷正太、松尾幸徳、真鍋章良、柳沢満夫、山田和人、
船附晃夫、小野正純
1.一般議題
1)コンサルタント委員会報告
5月7日(水)に開催された委員会の結果について小委員会の活動報告と自由討議に関する報告が行われた。自由討議では通信総合研究所の行田弘一委員の話題提供に引続き自由討議が行われた。
2)地球環境委員会報告
5月19日(月)に開催された委員会の結果について、常置委員会(環境システム委員会・エネルギー土木委員会・コンサルタント委員会)の環境活動報告と第11回地球環境シンポジウムの準備状況について報告が行われた。
報告者:三井共同建設コンサルタント梶@船附晃夫
1)当該国における運輸分野の現状
@ 鉄道:線路延長は2001年現在では5.9万qであり、複線区間は2.3万q、電化区間は1.7万qである。地下鉄は首都を含む4都市で開業している。
A 道路:2000年の一般道路延長は140万qであり、高速道路延長は1.6万qである。2001年の自動車保有台数は1,802万台であり、このうち自家用車は770万台である。
B 港湾:2001年の港湾の状況は海港が1,772バース(1万トン級以上527)、河川港が7,070バース(1万トン級以上59)である。2000年の保有船舶は1万隻であり、このうち国際航路用は3,000隻である。なお、内航河川の航路は119,325qである。
C 航空:2001年の民用空港は143個所、民間定期空路は1,143ルート、保有機数は1,031機である。
2)二酸化炭素排出量の予測
全国全部門における2000年のCO2排出量は、8.31〜11.03 C-億トンである。運輸部門における2000年のCO2排出量は1.2 C-億トンであり、その他、2010年は1.9 C-億トン、2020年は3.4 C-億トン、2030年は5.2 C-億トンと予測されている。
3.研究報告(2):交通インフラ整備とCDM
報告者:パシフィック・コンサルタント梶@山田和人
1)京都メカニズム
京都議定書では@クリーン開発メカニズム(CDM)、A共同実施(JI)、B排出量取引について定められている。国土交通省では、運輸部門の申請・相談窓口を環境・海洋課/国土環境・調整課に設置している。CDMプロジェクトは電力・エネルギー・植林事業において進行しているが、運輸部門では遅れている。ただし、例えば、ディーゼル・バスから天然ガス・バスへの転換はCDMが可能と考えられている。
2)運輸部門のCDM/JIの事例
2003年3月27日に開催された運輸部門のCDM/JIに関するワークショップでは、次の事例が報告された。@CNGバスの導入(ハンガリー)、Aトロリーバス計画(カトマンズ)、B交差点改良計画(バンコク)、C土地利用の変更(チリ)、D車検・整備プログラム(オンタリオ)、E車検・整備システム(ジャカルタ、マニラ)、Fエタノール自動車計画(ブラジル)、Gその他。このように運輸部門でも今後の増加が期待出来るので、ワークショップの結果に基づきCOPの下部組織であるCDM理事会(20名で構成)に今後の活動方針を提案する予定である。なお、現段階ではCDM理事会は交通に関する関心が低い。
3)CDMの問題点
温暖化ガスの削減方法には、技術的削減方法と土地利用・政策・生活様式の変更による削減方法が考えられるが効率はどちらが良いか、いずれにせよ現在の法体制のもとで可能な削減方法を考えることが必要である。CDMで解決すべき第一の問題は、データの収集と排出係数の設定であるが、誘発交通量の考え方が明白でないことである。第二の問題はベースラインを基準として、その効果を評価するのでモニタリングが重要なことである。
4)技術的課題
対象地域の問題:交通プロジェクトでは対象地域を、どのように設定するかが難しい。即ち交通渋滞解消のためにバイパス道路を建設した場合には、誘発交通量により既設道路とバイパス道路の合計交通量が事業前よりも増加することになる。従って、対象地域の設定の仕方によって、見かけ上の二酸化炭素排出量は増加または減少する。
ベースライン:エネルギー部門や植林部門に比べて運輸部門のベースライン設定は不明確である。交通量と機関分担はベースライン設定の主要因であるが、これらは経済発展・政策・人口動態等の影響を強く受ける要因である。
モニタリング:運輸部門におけるCDMではモニタリングは困難な問題である。エネルギー部門における排出量の削減状況や林業における伐採量は、直接モニタリング可能である。しかし、運輸部門における排出量の削減状況を測定するためには、何らかの方法が開発されねばならない。
バンコク・バンナ交差点改良プロジェクト:事業実施前の交差点は交通混雑が激しく、渋滞長の最大は前の交差点まで続くことがあり、平均旅行速度は8.9 km/hであった。新しい信号機を設置すると共に現示サイクルを短縮(時刻毎に変化)することにより、事業後の平均旅行速度は6.7 km/h向上し、旅行時間は6分短縮された。その結果、温暖化ガスは16.1%削減された。
*** 第8期 第13回環境問題研究小委員会議事録 ***
日 時:2003年6月27日(金) 13:30〜15:30
場 所:土木学会 B会議室
出席者:荒岡邦明、石川一、泉浩二、大谷正太郎、篠文明、田山宏二、真鍋章良、柳沢満夫
1.一般議題
1)地球環境委員会の研究テーマ
地球環境委員会に提案する研究テーマについて討議しキーワードを抽出した:千年学、スーパーコンピュータによる地球環境のシミュレーション、生物多様性、政治(戦略)と技術の関係、自然再生、土木遺産、自然エネルギー、廃棄物処理、中国における自動車のCO2排出原単位。
2)外部講師による勉強会
倉阪秀史(千葉大学)による「インフラストラクチャーの設計者の責任」を9月に予定している。
2.研究報告:自然再生型公共事業
報告者:潟hーコン 石川一
1)「自然再生」の背景
自然再生推進法の施行にいたる経過は次のとおりである。
平成13年5月:総理所信表明、「自然と共生する社会」の実現
平成13年7月:「環の国」づくり会議報告、「自然再生型公共事業の推進」の提言
平成13年12月:総合規制改革会議答申、「多様な主体の参画による自然再生事業を推進すべき」
平成14年3月:地球環境保全に関する関係閣僚会議、新しい生物多様性国家戦略の決定
平成14年12月:自然再生推進法成立、平成15年1月1日施行
2)新しい生物多様性国家戦略
生物多様性国家戦略は1995年に作成されたが、2002年には新しい生物多様性国家戦略として改訂版が作成された。ここでは、@絶滅防止と生態系の保全、A里地里山の保全、B自然再生、C移入種対策、Dモニタリングサイト1,000、E市民参加・環境学習、F国際協力の7項目が提案されている。本日のテーマは、B自然再生に係るものであり、生物多様性の危機に対応するものである。
3)自然再生推進法
自然再生推進法は、生物多様性の確保、自然と共生する社会の実現と地球環境の保全を目的として2002年に成立し、2003年1月1日に施行された。同法の定義では、「自然再生」は自然環境の保全・再生・創出や維持管理を行うこととし、これらを目的として実施される事業を「自然再生事業」としている。
4)自然再生事業の実施候補個所
生物多様性の観点から下記の14箇所が選定されている。湿地の多いのが特徴である。
@ 湿地(8箇所):釧路川、標津川など
A 干潟(3箇所):鵡川、荒川、木曽川三川
B 湖沼(3箇所):霞ヶ浦、宍道湖・中海、琵琶湖
5)湿原再生事業
湿原の概要:湿原面積は18,000haである。タンチョウ・キタサンショウウオ・イトウ・セチボウズが代表的な動植物であるが、乾燥化の進行に伴いハンノキ林が増加している。
湿原の河川環境の保全:長期保全目標は1980年への回復とし、当面の目標は2000年現在の状況の維持・保全とする。この目標を達成するため、ハード的施策として@水辺林・土砂調整池による土砂流入の防止、A植林などによる保水・土砂流入防止機能の向上、B湿原の再生、C湿原植生の制御、D蛇行する河川への復元、E水環境の保全を実施する。また。ソフト的施策としてF湿原景観の保全、G湿原の調査と管理に関する市民参加、H保全と利用の共通認識、I環境教育の推進及びJ地域連携・地域振興の推進を実施する。
6)河川の蛇行復元事業
事業の背景:当該地域は昭和7年から国営開拓地として改修をはじめ、昭和20〜21年には下流部における蛇行の切り替えと幹線排水工事が行われ、治水安全度の向上・耕地の拡大・地域の発展は達成された。平成9年の河川法改正後は、地元からの自然復元型川づくりが要望されてきた。
事業の概要:昭和40年頃の環境復元を目標とし、治水安全度を確保した蛇行河川の復元及び河畔林の保全と育成を行う。全国で初めての大規模な自然復元のモデルケースと位置付けられており、工事区間は約10kmを河川法に基づき整備する。平成12年度には流域懇談会が設置された。
河川蛇行の復元:旧河川への通水試験のための生物環境事前調査を行い、その後に掘削工事を行った。平成14年度には事後調査を実施し、蛇行復元部におけるサケの存在を確認した。今後の技術的課題として土砂移動の問題が残されている。
河畔林の保全と育成:自然河川の河畔林はハルニレ・ヤチダモ・ケヤマハンノキ・オノエヤナギが150本/haである。それに反し、人工河川の河畔林ではヤナギ類が1,125本/haであるが多様性が損なわれている。その対策として、小氾濫原(自然堤防と後背湿地)の造成試験と母樹林の造成によるタネの自然散布の回復試験を行った。また、住民参加による自然林の再生法として生態学的混播法による緑化を行っている。
*** 第8期 第14回環境問題研究小委員会議事録 ***
日 時:2003年7月25日(金) 13:30〜15:30
場 所:弘済会館 葵東室
出席者:石川一、田山宏二、真鍋章良、柳沢満夫、三角健芳、恒屋冬彦
1.一般議題
1)地球環境委員会の報告
軽井沢において7月4日〜5日の両日、地球環境委員会新規企画検討会議が開催された。新規小委員会研究テーマとして、コンサルタント委員会環境問題研究小委員会は「中国のCO2排出量」と「千年学会」について提案した。なお、コンサルタント委員会から選出された委員と幹事の役割は、次のように決定された。
柳沢委員:委員会のなすべきこと・テーマ選定担当
泉 幹事:レファランスブック担当
2)今後の作業方針
@ アンケート調査を計画していたが中止する。その替わりに「総合討議」を2月に開催する。ここでは2年間の全研究報告を総括し併せて参加者全員で討議を行う。討議の結果を整理して報告書の「総括」または「結論」の章を記述する。
A 現在、報告書は交通・都市/地域・産業の3部門構成を予定しているが、総合討議の結果によっては交通部門に限定し、都市/地域と産業部門は第9期の新テーマの一部としてまとめることも考えられる。なお、最終方針は総合討議によって決定する。
B 総合討議は、分りやすいサブテーマをつけた資料を事前に配付し参加者の目的意識を明白にする。
C 総合討議は、小委員以外の過去の研究報告者や代理・特別参加者を含めるものとする。
2.研究報告:環境共生都市(エコシテイ)
報告者:潟Iリエンタルコンサルタンツ 田山宏二
1)「環境共生都市」とは
新アテネ憲章(EU都市計画協会):21世紀における都市づくりの基本方針は、持続可能な都市が目的であり、1998年に次のような多面的環境領域に着目することが提唱された。それらは@質の高い都市環境、A都市の魅力、B小さなビジネス群を生み出す環境、C活気のある昔からの都市が持っている特質、D市民が交流できる環境、E街区・近隣といった身近な環境の6領域である。
エコタウン(環境省、経済産業省):「エコタウン事業」は、ゼロエミッション構想を地域の環境調和型経済社会形成のための基本構想と位置付け、環境調和型の地域経済形成の観点から先進的な街づくりを推進することを目的として平成9年度に創設された。
エコシテイ(国土交通省):エコシテイとは@環境負荷の低減、A人と自然の共生及びBアメニテイ(ゆとりと快適さ)の創出を目指した質の高い都市環境を保有する都市を意味する。平成5年度から「環境共生モデル都市」の指定が開始されている。
2)エコタウン(環境省、経済産業省)
都道府県または政令指定都市が、地域特性に応じて作成したプランをエコタウン事業として承認を受けた場合、中核的な事業について地方公共団体及び民間団体に対して総合的で多面的な支援が実施される。なお、プランの承認は環境省と経済産業省の共同承認となる。平成9年度の北九州市・川崎市・岐阜県・飯田市をはじめとして、平成15年度までに15地域が承認されている。
支援助成(補助率1/2以内)には、環境省のハード支援(ゴミ処理再生施設)とソフト支援(ゴミ減量の推進に係る啓発・普及など)及び経済産業省のハード支援(リサイクル関連施設)、ソフトハード支援(調査事業・マーケッティング事業など)に4区分されている。
3)エコシテイ(国土交通省)
国土交通省によって指定された「環境モデル都市」の市町村長は、「都市環境計画」を策定し都道府県・国土交通省と協議する。この都市環境計画に基づき@次世代都市整備事業による補助、A下水道・都市緑化等所管公共事業の重点的実施、B融資税制、C都市計画等による規制誘導の都市環境施策が実施される。モデル都市は「環境共生モデル都市整備要綱」に定められた指定要件を満たす市町村のなかから指定される。要綱では人口増加や業務機能等の集中が進行しており、早急に都市環境施策を講ずることにより高い環境改善が見込まれる三大都市圏または人口25万人以上の都市圏に存在する市町村または県庁所在都市が指定要件とされている。
環境共生モデル都市(20都市):帯広市(帯広の森整備事業)、北見市、盛岡市、山形市、いわき市、船橋市(ゴミ焼却灰の再生製品の利用)、大宮市、越谷市(ゴミを燃料とした火力発電所)、所沢市(東川流域総合治水計画)、横浜市(駐車場案内システムによる交通渋滞の緩和)、長岡市、魚津市、富士市(ペーパースラッジ灰の有効利用プロジェクト)、浜松市(中心市街地活性化事業とゾーンシステム)、名古屋市、木津町、大阪市、福山市(芦田川再生事業)、高松市、北九州市(新都市交通システムの導入による環境負荷の低減)
4)環境と共生する都市づくり(神奈川県)
神奈川県は「かながわ新総合計画21」において「環境共生モデル都市圏の形成」を目指しており、各種プロジェクトを推進している。そのため、地域環境・地球環境・自然環境・都市環境の4視点から環境と共生する都市づくりに関する4つの目標を下記のように体系化している。
@自然が有する機能・魅力を生かした都市づくり
A環境への負荷を低減する都市づくり
B環境とのバランスのとれた交通計画による都市づくり
C地域アメニティを創出する都市づくり
神奈川県は、これらの目標の達成度を評価する手法として代表指標と個別指標で構成される「環境共生指標」を制定し、その要請レベルを設定している。ここに代表指標とは環境共生の取組みの度合いを定量的に示す指標であり、個別指標は個別の環境共生の取組みを実施の有無によって示す指標である。
*** 第8期 第15回環境問題研究小委員会議事録 ***
日 時:2003年9月26日(金) 13:30〜16:15
場 所:土木学会 A会議室
出席者:荒岡邦明、伊藤道弘、泉浩二、大谷正太、篠文明、松尾幸徳、真鍋章良、柳沢満夫、打木弘一、
中野優、大林篤史、貞森一範、安田直樹
1.講 演:インフラストラクチャーの設計者の責任
講師:千葉大学法経学部総合政策学科 倉阪秀史助教授
1)直面する課題
現在直面する課題は化石燃料消費と人口増加により、人間社会の持続可能性を脅かされていることである。自然のもつ資源供給能力及び不要物の吸収能力という恵みには限界が存在する。これまでの経済活動の中で設計者は設計された人工物の効用という側面を主に考え、人工物の環境影響の側面を見過ごしてきた。
2)設計者の責任
従来からの環境政策の原則である汚染者支払い原則では、生産者が汚染者かどうか、消費者が汚染者かどうか不明確であったが、人工物の生産から消費後の段階まで生産者に責任を負わせる拡大生産者責任の考え方が循環型社会形成推進基本法に盛り込まれた。この拡大生産者責任原則を一歩進めた考え方が設計者責任である。設計者責任とは、拡大生産者責任の一般形として、設計者に対して人工物のライフサイクルにわたる環境影響の少ない設計とする責任を負わせることである。
このような汚染者支払い原則から拡大生産者責任を経て設計者責任という考え方が導かれた理由は、設計者は、人工物が築造される前に「人工物のライフサイクルにわたる環境影響を少なくするよう設計または設計変更をできる立場にある」ということにある。設計者責任は@情報を把握すること、A把握した情報を関係者に伝達すること、B関係者の意向を踏まえ、環境負荷を可能な限り回避し低減するよう設計を検討し変更する責任からなる。
環境影響評価法は、事業実施前に設計段階での環境配慮を求める制度であり設計者責任を規定した法律と考えられる。また、戦略的環境アセスメントは、より自由度の高い段階で環境配慮検討することが適切であるとする考え方から生まれたものである。
2.一般議題
1)平成15年度上期議事録のHP掲載は10月中旬を目標とする。
2)来年2月開催の総合討論では、過去の研究報告を1事例当り2〜3コマ(写真や図表)のパワーポイントに整理して説明する。近日中に各報告者に資料の提供を求める。
以 上