提言:コンサルタントの環境行動指針

 

平成113

コンサルタント委員会第5小委員会

 

コンサルタントの使命

地球と人々と環境にやさしい、未来の国土づくりに貢献する。

 

コンサルタントと環境配慮

コンサルタントは、業務活動を通じて、プロジェクトの初期の段階から参加できる立場にある。したがって、その構想・調査・計画・設計等を十分に環境に配慮した内容とすることにより、持続的発展が可能な社会を構築していくための国土の開発と保全に大きく貢献することができる。

国土の開発と保全のためのプロジェクトは、本来、国民の生活水準の向上と美しく持続可能な環境を保持し続けるためのものであるが、その実施に当たっては環境に大きな負荷を与えることもある。そのため、その構想・調査・計画・設計等に携わるコンサルタントの責任は重大である。

また、コンサルタントは、独立・中立の立場でプロジェクトに関与することができ、国土の開発と保全のためのプロジェクトにおいて環境配慮を行う上で適任であることから、その能力を十分に発揮して、こうした活動に従事すべきである。

 

基本理念

コンサルタントは、国土の開発と保全のためのプロジェクトを実施するに当たり、次に述べる基本理念に沿って、環境配慮の活動を行うものとする。

(1)環境に与える負荷が少なく、かつ持続可能な開発を提案していくことを目標とする。

(2)地域レベルの環境問題、地球レベルの環境問題の双方を広く見据えて行動する。

(3)国際的視野を持って環境問題に取組み、環境の改善及び保全に関する技術の国際的な移転に協力する。

(4)環境に配慮した最新の技術の適用に努めるとともに、常に実現可能かつ適切な対応策を提案する。

(5)独立性・中立性を堅持し、環境倫理の観点から対処する。

(6)自己啓発と、発注者、同僚等関係する全ての人々の環境教育を推進する。

 

行動規範

  コンサルタントは、上記の基本理念に則り、以下の規範に基づいて行動する。

 

(1)環境に与える負荷が少なく、かつ持続可能な開発を提案していくことを目標とする。

(a) 国土の開発と保全のためのプロジェクトにおいて、構想から建設に至る全ての段階で、環境の保護に配慮し、また持続可能な開発を目指す。

(b) 国土の開発と保全のためのプロジェクトが環境に与える影響を、計画・建設段階から維持管理あるいは廃棄に至る全ての段階にわたって評価し、その影響の大きさを業務推進の重要な判断基準にする。このため、LCA(ライフサイクルアセスメント)を積極的に取り入れ、環境負荷量の評価を行うとともに、その低減を図る。

(c) 持続可能な開発及び環境の保護について、自社の組織をあげて取り組む。また各段階毎の政府の各機関のこうした活動に積極的に協力する。

 

(2)地域レベルの環境問題、地球レベルの環境問題の双方を広く見据えて行動する。

(d) 国土の開発と保全のためのプロジェクトにおける環境配慮は、水質・大気・土壌の保全や自然環境の保護などの地域レベルの環境問題にとどまらず、地球の温暖化防止・オゾン層の保全・酸性雨の防止・熱帯林の保護・砂漠化の防止・野生生物種の保全・海洋汚染の防止・有害廃棄物の越境移動の防止などの地球規模的な環境問題も視野に入れたものでなければならない。

(e) 社内における業務の遂行及びプロジェクトの実施に当たり、炭酸ガスや廃棄物の排出量の削減目標を定めて遵守する。

 

(3)国際的視野を持って環境問題に取組み、環境の改善及び保全に関する技術の国際的な移転に協力する。

(f) プロジェクトにおける環境対策や省資源・省エネルギー対策技術など、環境関連技術の発展途上国への移転を積極的に推進する。

(g) 政府開発援助の適正かつ計画的な実施を通じて、発展途上国の環境問題対処能力の向上に貢献する。

(h) 発展途上国の環境技術者の人材育成を図る。

 

(4)環境に配慮した最新の技術の適用に努めるとともに、常に実現可能かつ適切な対応策を提案する。

(i) 全てのプロジェクトの構想・調査・計画・設計等の各段階の実施に当たり、環境に配慮した最新の技術を適用するように努める。この技術は、また、実現可能かつ経済的な対応策を提起するものでなければならない。

(j) プロジェクトの計画・設計においては、一回限りの使い捨て方式のものよりは、繰り返し使用できるような資源の利用・加工・輸送及び消費を考慮すべきである。またそのため、プロジェクトで使用する資材・製品の規格化、材料の統一化などが図られるよう推進する。

(k) プロジェクトで使用する資材・製品の選定にあたり、環境負荷の少ないものの優先購入(グリーン調達)を推進する。

(l) 建設に伴う副産物は最小限にすべきであり、できる限りリサイクルし、回収された資源として役立てるように配慮すべきである。

(m) エネルギー利用が少なく、環境負荷の少ない社会資本整備のあり方について研究する。この際、そのコスト面にも十分配慮し、費用対効果の高いものを優先する。

(n) プロジェクトの環境負荷を軽減するべく、現存するガイドラインや技術的手法の改善に向けて持続的な努力を行う。

(o) プロジェクトの計画・実施に当たっては、常に最善の配慮を以って、環境影響評価に従事する。

(p) 最新の環境問題の動向と課題について速やかに把握するため、環境情報ネットワークやデータベースの構築等を働きかける。

 

(5)独立性・中立性を堅持し、環境倫理の観点から対処する。

(q) プロジェクトで予想される環境への負の影響が、業務委託契約書などに適切に記載されているかどうか評価し、適切に取り扱われていない場合には、発注者と協議する。

(r) 業務委託契約書等には、プロジェクトの環境への影響を評価する際の適切なチェックリスト、または方法論を明記する。

(s) また、開発プロジェクトに伴う環境への影響を発注者に通知する。

(t) 負の環境影響を減少させることはできても、それを常に完全に取り除くことは不可能であることを認識し、また発注者に通知する。

(u) 施設の維持管理と運転の状況が不備であったり、住民と環境にリスクを負わせる可能性のある地域においては、特に慎重に配慮する。

(v) コンサルタント各社は、環境マネジメントシステムを確立して遵守する。さらに環境会計についても、その導入の可能性について検討する。

(w) コンサルタントは、環境情報の伝達能力を強化し、発注者に理解できる方法で提示できるように努める。

 

(6)自己啓発と、発注者、同僚等関係する全ての人々の環境教育を推進する。

(x) 発注者に対し、環境技術・環境負荷などの情報を広く提供し、環境配慮事項について積極的に提案する。

(y) 高等教育においては、環境に関わる総合的な知見、特に生態学や環境倫理あるいは環境マネジメントなどを含むよう、そのカリキュラムを拡大するよう働きかける。

(z) プロジェクトの環境配慮の専門家を育成するよう努める。

(aa) 地域のボランタリーな環境活動や市民の環境教育に対し、コンサルタントとして積極的な協力を行う。

以 上


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