建設コンサルタント委員会
第9回 建設コンサルタント シンポジウム
日 時;1996年2月1日(木)
会 場;土木学会図書館講堂
テーマ 「地球環境問題に対する建設コンサルタントの役割」
第1部 基調講演 「地球環境問題の現状と対応課題」
松井 三郎 京都大学
第2部 研究報告 「地球環境問題に対する建設コンサルタントの取組み」
山田 和人 パシフィックコンサルタンツ(株)
第3部 パネルディスカッション
「地球環境問題と建設コンサルタント」
座 長 : 中島 幸房 基礎地盤コンサルタンツ(株)
パネラー: 松井 三郎 京都大学
木下 誠也 建設省
木下 俊夫 国際協力事業団
沢畑 浩 北海道開発コンサルタント(株)
山下 佳彦 (株)建設技術研究所
パネルディスカッションの要旨
地球環境問題は人類の活動と密接な関わりを持ち、長年にわたる開発プロジェクトの実施によって熱帯林の減少をはじめとする多くの環境問題が加速されたことは多くの人々が指摘しているところである。
この開発プロジェクトの企画・調査・運営に多くの建設コンサルタントが関わってきた。特に海外のプロジェクトでは、クライアント、コンサルタント、コントラクターという3つの独立した立場の中でコンサルタントがプロジェクトをリードしている。
土木学会は地球環境問題に積極的に取組み、すでに「アジェンダ21」をまとめるとともに、常設委員会に地球環境問題に関するワーキンググループあるいは小委員会を設け、それぞれの専門分野の立場から地球環境問題を掘り下げている。建設コンサルタントもこの問題に深く関わっており、しかも重要な役割を担っていることを鑑み、第5小委員会で地球環境問題を検討している。
本シンポジウムでは、各界(学識経験者,建設省,民間)から話題提供者を招き、建設コンサルタントの地球環境問題に対する取組みの現状を報告頂くとともに、建設コンサルタントが今後どう地球環境問題に取組むべきかその方向性について討議した。
松井 三郎 :「地球環境問題に関しては、誰でもコンサルタントになれる」
○建設コンサルタントの役割として
予算の適正化という観点から無駄な投資をやめ、どのようにして魅力的な対象を見つけ予算を充てるかが重要である。またその事業がいかに国民に受け入れられるか、言い方を変えれば国民のニーズを調査し、官側にフィードバックすることもコンサルティングサービスの一環である。
建設工事において環境影響に関わる情報をいち早く収集し、問題を解決する技術を修得して現場で適用するなど、サポーター的な役割を果たすのもコンサルタントサービスの1つである。
地球環境問題では、シンクタンク系のコンサルタントの業務領域がますます広がり、自治体の「環境基本計画」づくりなどに業務の重心が移っていく。
今後は、地球環境問題と経済をめぐって社会の価値観が大きく変わる。この中でコンサルタントは、変わり身の速さを身につける必要がある。
木下 俊夫 :「JICAの地球問題に関するポリシーと取り組み」
JICAは、外部有識者を委員とする「環境分野援助研究会」を1988年に設立し、検討を開始した。中期的には、環境分野で約20〜30億円程度の援助金の増加を目指している。
○JICAによる具体的事業活動の内容は、以下の通りである。
・JICAによる環境協力のための各種体制の整備
・環境関連プロジェクトの発掘・形成
・開発プロジェクトへの環境配慮
・環境関連情報の体系的整備
○JICAの環境協力および環境配慮における基本的なポリシー
今後実施する技術協力および環境配慮の各スキームにおいて、環境案件が一層積極的に実施されていくよう努める。
開発プロジェクトに対しては、プロジェクト・サイクルの出来るだけ早い段階から環境に配慮(住民移転など社会配慮を含む)する。
途上国で問題が深刻化しつつある産業公害の防止と、森林の保全の2分野で質・量とも充実する。その過程で環境分野の人づくりに協力する。
協力の拡充には、環境専門家を活用するための専門家制度の整備、専門家養成研修の実施、専門家に関する情報の管理等を強化する。
「JICAプロジェクト」におけるコンサルティングサービスのうち、開発調査事業では、首都圏大気汚染対策、生活排水処理、廃棄物処理、そして水力ダム、港湾、空港、工業団地等の開発に力を注ぐ。また、無償資金協力案件への関与として、環境事前調査、放射性有害廃棄物など保険医療にも力を入れる。
沢畑 浩 :「地球環境問題は、社会環境、自然環境等多岐にわたり、複雑になっている。
建設コンサルタントが直接関連した業務を地域別に見ると、アジア、アフリカで80%を占めており、社会、生活環境の両面で問題を多く抱える地域である。
建設コンサルタントが環境問題へ取り組む上での課題として、環境科学技術だけでなく、幅広い能力を持った人材の確保と養成、語学力、そして業務を遂行するための組織体制の整備が挙げられる。環境破壊は、水資源関連プロジェクトで多く起こっている。たとえば、森林破壊を例に挙げれば、森林は水源涵養機能があり、人間生活における重要な生存条件となっている。
一度破壊した環境を復元するには、技術の体系化を図るとともに、技術優先の考えから生物系機能を主体とした考えに改める必要がある。すなわち、地球環境問題の解決にあたって、まず問題の構造を把握し、技術を工学から文化のレベルへと移行する必要がある。
山下 佳彦:「FIDICでの地球環境問題への取り組み」
FIDICは、1988年に環境作業部会を設立し、環境問題におけるコンサルティングエンジニアの役割を検討してきたが、ENVTCは、1990年のオスロ会議で「コンサルティングエンジニアと環境に関するFIDIC基本政策」を発表し、承認を得た。この基本政策はコンサルティングエンジニアが「持続可能な開発」の理念に立ち、環境問題に取り組むための基本的枠組みが整理された。
しかし、具体に向けた作業は残された形となっている。1995年の会議では、人口の都市集中化の問題が取り上げられ、環境政策の欠如、経済力の弱さに起因するインフラ整備の遅れ、都市開発整備計画の欠如、文化遺産と都市開発への制約等、発展途上国の共通問題が指摘された。
以上、 第9回 建設コンサルタント シンポジウム報告