建設コンサルタント委員会

第11回 建設コンサルタント シンポジウム

時;1997年1月28日(水)
場;土木学会図書館講堂


テーマ; 「情報化時代における業務プロセスの変革と展望

研究報告     「建設コンサルタント技術者の情報化に対する現状認識」

                中世古 篤之  日本技術開発(株)

特別講演     「情報とは何か、情報の活用と問題点」

                石塚 英弘   図書館情報大学

事例紹介    「海外の現状」  
                澤  秀樹  (株)ニュージェック


パネルディスカッション    「情報化時代における今後の展望と夢」

 

座 長  :   安江     北海道開発コンサルタント(株)

パネラー :   石塚 英弘   図書館情報大学

          川端 郁子   (株)ニュージェック

          木村 和夫   (株)オリエンタルコンサルタン

         林  健二    中央復建コンサルタンツ(株

 

パネルディスカッションの要旨

 今、建設事業は国民のニーズに的確に応えるべく、社会資本のライフサイクルを通してその機能、コストについて改革を求められている。すなわち「建設工事コスト縮減に関する行動指針」が策定され、3年後に実効ある取り組みが求められている。このため、企業を超えた業務プロセスの見直しや改革が急速に進み、情報化の推進が極めて重要な意義を持つものと考えられる。情報化の目的は「情報を活用して付加価値を創造すること」であり、情報をいかに活用していくかが、今後重要な課題となる。

 そこで、本シンポジウムでは、情報化の進展と問題点、今後の展望について議論した。

 

石塚 英弘 :「21世紀の展望を拓くのは誰か、個人の役割が問われる」

○情報化時代はコンサルタントの時代

 建設コンサルタントは、建設事業のライフサイクルの中で、必要となる情報、受け渡すべき情報、共用すべき情報、状況を管理するための情報等、ほとんど全ての重要な情報を扱っている。この意味から、建設業界ではインターネット等情報化の整備が急速に進んでおり、個人の意識改革、技術革新が必要である。

 縦割りから横割りへと発想の転換を促され、自由参入に伴う競争原理が働いて、共同作業から個人への競争時代となる。その前提となるのが情報公開に伴う情報の共有化であり、それが進展すると本質的な意味での費用の削減とか整備効果が期待できるようになる。

 また、情報インフラ整備のための技術革新も進展するであろう。今後は、専門家としての役割、経営者の役割、「産、官、学、政」の役割、そして国民の役割等、各人の役割を明確にしていくことが大切である。

 

川端 邦子 :「情報化時代における建設コンサルタントの労働環境の変化について」

○情報化時代の在宅勤務、サテライトオフィス化

 少子時代では、女性も貴重な労働力である。今後は、在宅、サテライト化によって女性も安心して働ける環境となる。また総体的に余暇時間、活動範囲の拡大等、生活の充実が期待できる。

○課題

 経験の浅い技術者は、経験のある技術者と業務を行うことにメリットがあるため、どの企業も、このような訓練、教育、研修の基盤整備が重要である。

 誰もがシステムを使いこなせるように教育・研修を充実すること、在宅勤務の場合の実績評価の仕組みつくりが今後の課題であろう。

 

木村 和夫 :「情報化によるコンサルタントの変化」

 計画、設計を進める上で、地域住民の要望が何処にあるかを明確に把握すること、いわゆる、地域住民との合意の形成が重要なテーマとなりつつある。住民からの要望等をいかに集約・統合して活用するか、プレゼンテーションするか等情報加工技術が重要な鍵となる。

 また、情報化時代における国家的取り組みとして、GISITSはコンサルタント業だけではなく、関連業界全体を含めた国家プロジェクトとして研究が進んでいる。さらに建設CALS/ECは、コスト縮減等の有効な手段として建設業界全体が取り組んでいる。

 このように、情報利用を行うためには、コンサルタント1社だけの情報だけでなく、業界全体として情報の公開が重要である、中小のコンサルタントでもネットワークの一員となることで品質、コスト縮減、ひいては、生産性の拡大等、効率的・効果的に社会資本に投資できる。

 

林 健二 :「情報時代における今後の展望」

 現在、建設業界は、低成長の時代に突入しているが、その中でも建設CALSについては、いろいろ研究が進められており、21世紀には土木分野でも情報化時代がやってくる。

○建設コンサルタントに有用な情報ネットワーク

・イントラネットや電子メールは社内的にも、社外的にも非常に有効な情報伝達手段である。

・情報収集手段としては、データベースがもっとも有効であり活用範囲が広く、今後ますます建設コンサルタントの中で強く求められる。

・情報ネットワークに関わる問題としては、一人一人がパソコンに取り組む姿勢と普及が大事ではないか。これらは、個人と会社の姿勢でもある。

・今後の情報ネットワーク構築に関しては、近い将来1人で23つとホームページを持つ時代が来る。

○情報ネットワーク化における建設コンサルタントの役割

 コンサルタントの役割の中では、まず緊急災害時における防災ネットワークの充実が挙げられる。これは、緊急時も遮断されることなく安定した情報を提供することである。次に、建設時おける住民のコンセンサスを一層密にするための環境情報の提供、教育等土木の分野から見つめていけるような情報提供が要求されるようになる。


以上、 第11回 建設コンサルタント シンポジウム報告

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