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所在地:島根県松江市袖師町 地図 事業者:国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所工務課 |
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・河川管理の対象となっている湖では、通常は計画高水位(HWL)によって空間を「水」か「陸」かに区分した上で湖岸の設計を行う。この二分的設計思想は生態的にも景観的にも不自然な湖岸設計のもとになっている。 宍道湖は、全体がフラットな地形・風景の場所で、二分的設計には特にそぐわない所である。そこで本作品では、HWL以下の空間に極緩傾斜の芝生面を広く用意し、背後にある県立美術館の形状や水面および対岸の風景に馴染む穏やかな景観を造るとともに、人々の湖水へのアプローチを容易にしている。HWL際に植林された松が成長すれば、至近にある嫁ヶ島と一対の優れた風景を生み出すであろう。平水時の湖岸線に沿って設置された管理道路兼遊歩道は、悪天候時には波を被るが、風速5m/s程度までは前面の波消用捨石小段が十分消波している。また意図的と思われる前面の杭だしにカモメが整列する風景は、親水性を特に高めている。(石川) ・対象地が湖水にじかに面している。美術館が屋外に彫刻作品を展示する。となれば、水面になめらかにすりつくプレーンな空間をつくり、それをキャンバスにして彫刻作品を浮き上がらせようと構想するのはまず自然な選択である。だが、水面と陸地部分との落差は、治水上からふつう大きくなり、無骨な護岸と転落防止柵によって、構想は潰え去るのである。ところがこの作品はこの障害を乗り越えている。敷地は全体に薄く水面に擦り付いているのである。伸びやかな芝地部分は、図面によれば高水時には冠水する。これには驚いたが、この芝地はじつは河川でいう高水敷であり、水際の遊歩道は低水護岸の天端なのだと理解して、合点がいった。水際で転落防止柵が極力省かれているのも、低水護岸だからという解釈によるのだろう。その上で、高水護岸天端と「堤内地」たる公園、さらにはそれに続く美術館敷地とのなめらかな接続が、わが国では稀有なのびやかな「親水」空間を創出した。この場所が湖水に面してエプロン状に張り出した敷地だったということも成功の要因だろう。美術館を控え、嫁ヶ島に面した一等地という幸運と、関係者の協力体制、設計者の有能によってはじめて結実した一級の水辺だと思う。(齋藤) ・岸公園は、島根県松江の宍道湖畔に作られた県立美術館の湖側を、大きく弧を描くように取り巻いています。普通なら、美術館の前庭と湖との関係は護岸で区切られるところですが、この公園では美術館の前庭がなだらかな斜面になっていて、遊歩道から湖まで連続的に処理されています。このことによって、水辺はより開放的に、より親しみやすいものになっていることは誰しも感じ取ることができるでしょう。ただ、一般市民や来訪者は、このことが幾つものテクニカルな配慮がなければ実現できないことは知りません。設計者や許認可を与えた官庁の隠れた努力は、専門家によってしか評価しえないのは残念なことです。むしろ、こうした作品こそ、この賞で称揚すべき対象なのではないでしょうか。それにしても、岸公園の何気ないデザイン処理は、控えめですが美しい。ここを年間二百万人の人が訪れるといいます。松江の新しい名所が出来たといっても過言ではないでしょう。(内藤) |
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