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所在地:広島県広島市中区基町 地図 事業者:建設省中国地方建設局太田川工事事務所(当時) |
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・本作品は、1980年代前半に施工された、画期的な河川景観設計の例である。応募タイトルは「護岸設計」となっているが、実際は河道と背後地を含めた空間の設計である。その秀逸性は歴史的評価を既に十分受けているので、ここで改めて論評を加えることは返って作品を矮小化することになるかもしれない。 本作品の優れた点を列挙するスペースはないので、護岸設計の要点をごく概括的に述べると、遠景と近景それぞれにおいて、触覚を刺激する視覚的設計がなされていることである。水面変動の大きな干潮域の水際をシャープに映す直立河岸を基本に、幅の変化するテラスと小階段、水制や高水敷切込のような大きな造作と、玉石と切り石の統一の取れた使い分けなどの細部の造作が丁寧になされている。このような護岸設計の効果は、高水敷および背後地土地利用等の適切な計画があってはじめて可能なものであり、非常に広い範囲の方達の協力と努力の成果であるといえる。(石川) ・川は都市空間の中で、余分なものがない文字通り完全なオープンスペースである。にもかかわらず、このような空間が周辺の環境、景観と一体となって、その一部として存在しているときにこそ美しいと私は考えている。都市内の河川はこうしたのびやかな美しさをなかなか獲得できないでいる。太田川のこの区間は船上や河川区域内の低い視点からは、護岸やその上の緑地が遠景と極めて連続的に捉えられ、また、近景においては川沿いの規模の大きい建築物の外構や公園等の空間や緑地と一体となった景観が造り出されている。殊に、干潮時に現れる川底の一部と石積みの護岸が造り出す景観はこのような一体性を強めている。 25年も前になされたデザインであるが、今日でも河川景観整備の手本として学ぶべき点は多く、特別賞とするに論をまたない。ただ、都市内の河川空間として人びとの多様な活動、行動を誘う視点にもう少し配慮がなされてもよかったのではとの思いは25年後の今日的な考えであろうか。(加藤) ・この事業は、河川と都市の一体的な設計が実現した稀少な作品である。大きく見ると二つの水辺の風景を創造した。空鞘橋の上流は、背後の中央公園との一体感を持たせるため、堤防天端から護岸までを緩い勾配のスロープで結んで広大な緑地広場を創出した。花崗岩の深いテクスチュアをもつこの護岸は、伸びやかな汀線を描き、広々とした芝生の河川敷と大きな立木、遠景の山並みが重なる雄大な風景の舞台を演出している。また、下流は文化施設との一体的な設計を行うと共に、水制工、船着き場の跡、階段など都市の古い記憶を呼び戻す要素を与え、水際部、水制工、入隅出隅など空間の分節化とともに、人々の意識へ心地良い居間と都市の意味性を与えたデザインである。この事業は、わが国の景観設計、シビックデザインの先駆的な役割を果たし、多くの事業の規範として大きな貢献をしてきたことから、その功績を讃えて特別賞を授与することになった。(川崎) |
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