大江戸線は、コンペティションによって建築家にデザインを任せた土木施設として衆目を集めたが、残念ながらインフラストラクチュアは標準的なままで、建築家はその内面表皮的な表層部をデザインしたに過ぎない。それに比すればこの「みなとみらい線」は、さすがに都市デザイン先進の横浜らしく、インフラ部にまで空間性の配慮を与えているところが画期的である。わが国の地下インフラ施設のデザインとして、現段階における最高レベルに到達しているといっていい。授賞の対象として異論のないところである。問題は、なぜ最優秀としなかったか。欧州ではロンドンにジュビリーライン延伸線を完成させ、ビルバオもまた大胆な空間構造を都市及びインフラ空間に具現化しているという事実がある。インフラストラクチュアの計画段階からコンセプチュアルな都市デザインの構築が図られ、強い一貫性を持ってダイレクトにこれを具現化することが、わが国でも当然のように主流にならなければならないという「願い」が、最優秀とすることをためらわせた。(小野寺)
以前から日本の鉄道環境はどうしてよくならないものかと思っていました。土木構築物の中でも地下鉄や高架鉄道の駅舎は、地域や国の環境イメージをつくる大切な対象のひとつであります。地下鉄大江戸線の計画時には、大掛かりなコンペティションが行われ、かなり期待したものですが、残念ながら結果はご存知の通りです。みなとみらい線は、特徴的な地域と個性ある地区に設定された5駅で、各駅の担当設計者の選定など恵まれた状況があったにせよ、日本では初めてと言えるような、理想的な形での路線全体の駅舎景観が出来た事例だと思います。なかでも私は、応募説明にもあるように、計画当初から議論された駅設計のコンセプトにもとづいて土木設計が行われたことを評価したいと思います。既存の地下鉄断面に比べて格段の断面の違いは、建設費の壁を越えても駅舎デザインのコンセプトが尊重された証だと思います。言い換えれば経済価値と文化価値が社会的価値として逆転した瞬間なのです。言ってしまえば当たり前ですが、地域の背景にあるプロジェクトの特徴から導き出されたコンセプトに対し、かけるべきコスト、土木、建築、プロダクト、グラフィックス、照明のデザインコラボレーション、そして行政の判断が素直に設計に反映された結果であると思います。(宮沢)
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