中国山地の神戸川にかかる志津見大橋は、なかなか美しい橋である。右岸側が切り立ち、左岸側はなだらかな斜面から構成された非対称で凹んだ逆三角形状の地形と橋のスパン割り、桁厚がうまくフィットしている。地形と構造物をどう調和させればよいのかは、土木構造物のデザインの中でも難しく、重要な観点の一つであるが、志津見大橋は上手に地形の中に収まっている。橋の上部を水平にしたことも地形とのなじみをよくしている。橋脚のデザインは大変スッキリしており、落橋防止工の形状はシャープで橋脚の形をスマートにしている。柱のトラス材の色は緑であるが、特に気にならない。橋の袂に道の駅ができており、そこは志津見大橋の絶好のビューポイントである。派手さは無いが、よくデザインされた橋である。(島谷)
PC箱桁橋は、外ケーブル工法が導入されて以来、ウェブコンクリートの軽量化による経済性を追求しながら、波形ウェブを経て志津見大橋のトラスウェブへと進化してきた。こんなに早くデザイン賞の対象になるほど洗練されることになるとは、というのが第一印象。
実際に訪ねてみた志津見大橋は、山々が折り重なる中国山地を遠景に、ややゆったりとした谷を渡っていた。左岸の橋台に隣接する支点上を最大として、両岸に近づくほど桁高が直線的に小さくなる逆三角形の桁の側面形状はシャープな印象を与えるが、谷の地形とよく調和している。細かく見るとトラスの三角形のモチーフをうまく使った統一されたデザインが施されており、橋脚側面の処理や支点を隠すような天端の形状もすっきりとして嫌みがない。
本橋は建設が進む志津見ダムの上流にあり、谷間は将来ダム湖になる。ダムが完成した折りには、水面にその姿を映す橋をまた訪ねてみたい。(西川)
|