視察は最悪の天候で行われた。冬前に行かねばと決めた行程は、皮肉にもピンポイントで例年より早い大雪にぶち当たった。しかし北海道にある以上、それもまた主要な光景である筈だ。覚悟して訪れたその眼前、やはり風景は薄雪に覆われ、文字通り凍り付いていた。にも係わらず、基盤風景としての「強さ」が浮かび上がっていた。これは受賞するだろうなという予感がすでにあった。薄氷を手袋で削りながら、整備意図を示したサインを読んだ。かつてコンクリートで整えられた護岸風景も決して見苦しいものではないことが分かった。それが一度壊され、撤去素材の一部が高木の根巻きとして手作業で積み上げられ、川は全く新しいコンセプトで再創造された。英断であったと思う。だが川はともかく、公園としてのスペックはお世辞にも十分とはいいがたい。ベンチは安っぽく、照明設備も寂しく、パーゴラは唐突に思えた。願わくばここに更なる洗練が欲しい。さほど予算を使わずとも、それは可能なはずである。(小野寺)
この計画は、既存のコンクリート積み護岸を破壊し、親水性のある近自然型空間として川を再生したものである。この意味においては、昨年最優秀賞となった木野部海岸の計画の川版ともいえる。しかし、この場は市街地の中にあり、隣接する住宅街から容易にアクセスできる空間となっている。そのため、数多くの市民に、豊かな自然体験を提供しており、地域の子ども達の遊び場ともなっている。このように、都市内の河川を近自然型工法で緻密に再生した点が高く評価されるだろう。
しかし、都市内であるが故の問題も存在する。それは、ゴミの投棄などへの管理を怠ると、忽ちネガティブな場へと転落しかねないということである。事実、同様の整備をおこなった下流地区ではこうした問題が発生しているように見受けられた。また、公園内のベンチや歩行者照明、周辺のフェンス類が、耐用年数を過ぎたまま放置されており問題を残した。こうした点は、今回の受賞を契機に、今後の改善が望まれるところである。(田中)
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