傑出して素晴らしいというよりは、嫌味なものがほとんどないことが評価を生んだ。そもそもは暗く重厚なシェルターの改装である。明るく軽快な形態へ転換が成功しており、主構造を生かしたことでローコストが可能になった。だが、コストパフォーマンスの良さだけでは受賞に値しない。評価されたのは、既存施設との「付け」の妙味である。周囲にある、地下に降りる階段やサンクンガーデン、吹き抜け広場のある地下道といった諸施設とよく調和が取れ、駅前地区が統一的な雰囲気にまとめ上がっていた。そのことが重要だった。都市施設は常に単独では成立しない。公共空間はなおさらにそうだ。だからこそ手堅くもディテールを積み上げ、洗練させ、主張しすぎず、風景のバランスに配慮するという姿勢が重要になってくる。主張するばかりがデザインではない。いやむしろ社会基盤たる土木デザインの本筋は、創り手の無私性の中にこそ、まず見出し得るだろう。この受賞を引き寄せたのは、社会性に対するエンジニアの誠実さなのである。(小野寺)
全国的にみて現在、優れた景観デザインといわれる駅前広場及び関連施設は驚くほど少ない。その中で当駅前広場は評価できる数少ない事例である。
鉄道駅及び関連施設は、事業主体、管理主体が複雑なため、全体の基本計画を策定する段階から多くの問題を解決することが求められる。この計画段階で優れたものであっても、これを実現する設計段階では、より複雑な調整事項が数多くあり、結果として、良質な景観デザインの実現に至っていない事例が多い。
当駅前広場は、整備後20年を経た改修事業である。単に交通結節点として乗り換え広場から、市民や来街者が集い・憩うという、出会いの駅前広場へと改善された空間は心地良い。
既存の花時計を移し、市民コンサート用のステージをつくり、イベントの賑わい空間が創出された。又、限られたコストの中で、既存シェルターの構造(柱・梁・基礎)を活用し、軽快で透明感あふれる新たなシェルターとして再生させたデザイン力は見事である。
このように小規模な事業ではあるが、限られた制約の中で智恵と工夫を出すとともに卓越したデザイン感覚と技術により、良質な空間へと再生できる具体例として、今後全国の駅前広場の再生の範となるものである。(佐々木)
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