周辺を取り巻く住宅のための小規模ではあるが気持ちの良い空間であった。取り巻く住居に面して街路が取り付き、その中心に公園が配置されている。公園を取り巻く街路は、建築に従属する擁壁と街路の舗装材を統一するなどのデザイン上の工夫によって周辺住宅と一体化した空間となっている。中心の公園部分は、若干の彫刻の要素はあるものの特に何があるというわけではないが、もともと傾斜のある地形を活用し、いかにも周辺住民のための空間であるということが了解されるデザインである。それほど規模が大きくないことをうまく利用したデザインといっても良いだろう。現地を訪れたのは冬の雨上がりの平日であったため、人気はなかったが、天気が良い休日であれば、お父さんやお母さんなどが、子供を遊ばせて本を読んでいる、子供とお昼を食べる、同じようなことをしているお隣さんと雑談をするといった光景が想像される。いわば、亭主も参加可能な、近隣関係の薄さを補完する現代の「井戸端空間」が創出されているといってよい。地区計画等の手法を用いるのではなく、周辺住民の努力で保持されている空間と聞いた。これも評価されて良いが、将来にわたっての継続性が若干心配ではある。再度、天気の良い休日に再訪し、そこで遊んでいる家族の話をきいてみたい。このような空間はおそらく子供たちにも良い影響を与えていると信じているから。(天野)
その魅力的な小空間は細長い路地を抜けると突然視界が開けた先に広がっていた。小雨の降る薄墨色の先に、柔らかく盛られた築山と樹林に囲まれ、全体が芝生で覆われた街区中央の公園(ナチュラルコモン)は21戸の住戸の中央に位置する。この20年の生活の豊かで静かな落ち着いた住宅地を見事なまでに表現し、主張している。
そもそも当住区は、「21世紀公園都市博覧会」の実物展示がその後一般分譲されたものである。当初の当プロジェクト企画者と20年後の有様を予見し丁寧できめ細かなデザインを実現した設計者とのコラボレーションの見事さが評価される。又、これら設計者達の意図を着実に自らのものとし、さらに磨きをかけて、今日の魅力的な共有庭園とこれらと一体となった住環境を創り上げてきた21戸の居住者の思いを評価したい。プロジェクトの企画者と良好な空間を実現した設計者と住みこなし新たに魅力的居住空間へと変質させた居住者の共有の目標が、見事に20年後の今日に至ったものである。(佐々木)
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