スーパー暗渠砂防堰堤という。下流への土砂供給を考慮したタイプである。見た目には眼鏡橋である。巨大な穴を抱え込んでいるので本体がとにかく大きい。河床からの堤高は10m もある。傾斜した本体壁の上にさらに垂直壁が立つ。一般的な砂防堰堤には水通し部( 天端が低い)と袖部( 高い)がある。ここでは垂直壁の天端をなめらかな曲線とした。その分、垂直壁が大きくなった。そもそも、堰堤上部に水通し部と袖部がいるのか、疑問に思った。本体壁のスーパー暗渠がこの場合水通しではないのか。河岸取り付け部が雑で、川へのアクセスが組み込まれていない。きれいな水と川原があるのに残念である。スリット型と比較すると、このタイプは橋として利用できる。しかし本体が巨大化する。自然景観へのインパクトを最小化したい。潜り橋的な構造が考えられないだろうか。蒲田川にはたから流路工やしのぶ堰堤など景観的にいいものがある。新しい工夫を期待したい。( 吉村)
奥飛騨温泉の旅館に宿泊した時に、テレビにライトアップされた川の中に黄色く浮かぶ地獄平砂防堰堤が映っているのを見た。薄暗い中に浮かぶ砂防堰堤の夜景は幻想的で、砂防堰堤が観光資源となっていることに驚いた。
5つの大きな円形の開口部をもった堰堤は、緩やかに湾曲し形態的に面白い。中小洪水の土砂は流下させ、大洪水や火砕流をブロックするための堰堤である。表面は現地の玉石を埋め込んだ亀甲ブロックで取り付け護岸も同じ素材で作られている。護岸と地山との端部の取付け部は埋め戻しが行われるなどデザイン上の注意がはらわれている。亀甲ブロックの素材感はなかなか好ましい。
しかしながら、対岸まで渡るための堰堤頂部に乗せられた歩道のデザインがうまくない。歩道としてかさ上げした部分の川側を現地の玉石ではなく中国産の御影石で貼っている。歩道部の違和感を強調している。歩道線形の折れ曲がり、歩道および歩道壁の素材も無機質でありバランスが取れていない。砂防堰堤の高さと護岸の高さが一致しないことに対するデザイン上の処理がなされていない。以上のように景観上の課題は認められるが、これまでの砂防堰堤と比べると形態自体を工夫している点など景観への意欲的な取り組みは評価できる。( 島谷)
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