Civil Engineering Design Prize 2003, JSCE
Waterside in Nogata, Onga River
所在地:福岡県直方市溝掘地区  地図
事業者:国土交通省九州地方整備局遠賀川河川事務所
授賞対象者
氏名
所属(当時)
役割
樋口明彦
九州大学大学院工学研究院准教授 ・市民部会のファシリテート
・デザイン指導(基本設計、実施設計)
・デザイン監理
松木洋忠
国土交通省九州地方整備局遠賀川河川事務所所長 ・プロジェクトの事業化
・直方市との調整
田上敏博
国土交通省九州地方整備局遠賀川河川事務所技術副所長 ・市民参加の仕組みづくり
・関係機関との調整
竹下真治
国土交通省 九州地方整備局遠賀川河川事務所調査課長 ・市民参加での取り組みの実践
・関係機関との調整
古賀 満
国土交通省 九州地方整備局遠賀川河川事務所調査課計画係長 ・市民参加での取り組みの実践
・関係機関との調整
和田 淳
(株)東京建設コンサルタント地域環境本部部長代理 ・市民部会のファシリテート
宮崎正和
(株)東京建設コンサルタント九州支店 技術第一部次長 ・実施設計全般・設計管理
野見山ミチ子
遠賀川水辺館ゼネラルマネージャー
NPO法人直方川づくりの会理事長
市民部会メンバー
・コンセプトのアイデア提示・川づくりに関する取り組み
国土交通省 九州地方整備局 遠賀川河川事務所
・プロジェクトの事業化
・協議会、市民部会立ち上げ
・事業の調整、実施
九州大学 建設設計工学研究室 景観グループ
・デザイン検討
・デザイン監理
・水辺空間のあり方検討
(株)東京建設コンサルタント
・市民部会の運営、ファシリテート
・住民意見のとりまとめ
・実施設計
遠賀川を利活用してまちを元気にする協議会および同市民部会
・コンセプトのアイデア提示
・利活用に関する検討、実施
直方川づくり交流会
・川づくりの提案
・市民主体の取り組み
直方市
・河川敷の利用
・管理についての調整
講評

 近代には、石炭の生産によって黒い水の流れる川であったという遠賀川で、直方の水辺づくりでは、「ひろびろとして、気持ちのいい」空間を作りだした。そこには、水辺で暮らし、散歩し、「気持ちよく」「大きなひろがり」を眺める喜びが演出されている。緩い傾斜と川のもつ曲線が大きな広がりをもつ空間をつくり、その空間に身を置く者に河川空間がもつ「のびやかさ」を体感させてくれる。
 実際にこの空間を歩いてみると、広々とした川辺を歩く楽しみが実感される。護岸の緩やかな傾斜によってつくられる広い視野に、遊ぶ鳥、沈下橋で釣りをする若者たちが点景となる。
 水際に残された砂地には、黒い筋が浮かんでいる。遠賀川河口部には、中世に生産された芦屋釜の足跡も残る。遠賀川から供給される砂鉄を使う人々が大陸からやってきて製鉄の技術を発展させたそうである。
 そうした履歴を秘めた空間を歩き、土木のデザインは、目で見るデザインというよりも、居住・活動する人間の身体的時空間デザインともいうべきであるという思いが浮かんだ。デザインされた時空間に身を置いた者は、その感性をどのように刺激され、その触発によって何を感じ、何を考え、また何を経験として蓄積するのだろうか。そうであるならば、デザイナーは、多様な人々( 関心・懸念とその背景にある意見の理由の来歴を異にする人々)の感性的多様性にどれほど配慮できるかということを課題とするであろう。
 直方の水辺の、いわば「虚な」空間は、そのことによって感性の刺激を受けるのに十分な「のびやかさ」を感じさせてくれた。( 桑子)

 遠賀川に架かる橋から下流を見た時、眼前にひろがる河道と左岸側の高水敷の風景は、筑豊の河川に対する先入観をみごとなまでにくつがえしてくれた。水深の浅い河道の水面はキラキラと太陽光を反射させながらゆっくりと流下し、広々とした高水敷の草地はなだらかな勾配で汀へと続いている。汀にそって護岸の立ち上がりがなく、上流から運ばれた砂が堆積した上に繁茂した草本の群落が、水辺に柔らかなエッジをつくりだしていて、高い親水性が感じられる。広々とした高水敷の横断方向では、ほんのわずかに勾配が感じられる程度で、歩いていても心地よい変化があるだろう。一方、右岸側では同様に緩やかな横断勾配の高水敷がひろがるが、こちら側の汀はハードなエッジがたちあがっていて、両岸で明快なコントラストが認められる。
 階段状に設えられた護岸の一部には緩勾配のスロープがあり、ここからカヌーが水面にアクセスできるようになっていて、アクティブな親水レクリエーションへの配慮もゆきとどいている。上流部と下流部、2 カ所に設けられた沈下橋も、景観的なアクセントとなるだけではなく、河道を隔てた両岸の回遊性を高めるうえで極めて効果的であった。欲を言えば、右岸下流側の未着手となっている部分の整備をまって完成度を高めたうえでの評価をしたいところである。いずれにしても、このような川辺の街に生まれ育った人々、特に子供たちにとっては、生涯忘れることのないふるさとの風景となるにちがいない。( 宮城)

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