所在地:埼玉県秩父市大滝字廿六木地先~廿六木向地先 地図
事業者:独立行政法人 水資源機構
氏名 |
所属(当時) |
役割 |
野村孝芳 | 水資源開発公団 滝沢ダム建設所 (現:独立行政法人 水資源機構) |
・プロジェクト統括 ・デザイン推進役 |
小島幸康 | 水資源開発公団 滝沢ダム建設所 (現:独立行政法人 水資源機構) |
・プロジェクト推進 ・JV間調整 |
関文夫 | 大成建設株式会社 土木本部 土木設計部 | ・全体デザイン提案 |
窪田雅雄 | 大成建設株式会社 関東支店 土木部 | ・施工照査 ・JV間調整 |
窪田陽一 | 埼玉大学 工学部 建設工学科 | ・デザイン助言 |
水資源開発公団(現:独立行政法人 水資源機構) | ・景観設計の推進 ・関係機関との調整 |
|
大成建設株式会社 | ・景観設計の提案 ・施工者間の調整 |
雷電廿六木橋は、廿六木大橋(最大スパン75m、橋長270m)、大滝大橋(最大スパン125m、橋長345m)の二つの橋梁と、その間の145mの土工区間を合わせてループ形状を形成している一体の構造である。約125mの高低差をループで登るため、道路の勾配は5%から7%であり、秩父の方から登っていくと、道路の曲がり具合が良くわかり、気持ちが高揚しながら高低差を登っていく様で、実に快適である。ループの形状も一定の曲率の円形ではなく、それ故、単調に感じない。
この橋梁の最大の特徴は、コンクリートのエイジングをテーマとした造形デザインである。ひとつには、高さが30m~50mに及ぶ、幅6.5mの橋脚4基にほどこされたエッジをきかせた下見板風の表面の造形である。施工が丁寧に行われたと感じさせる。完成後12年を経ているが、橋脚表面の汚れも目立たず、すっきりとした外観を保っている。また、断面を「く」の字型とし、天端に水切りを考慮したアルミ製高欄を設置し、縦溝に雨水を集約している壁高欄にも配慮のあとがみられる。この壁高欄は、向きに応じて風化の度合いが異なってきている。
この雷電廿六木橋には、橋梁の完成後に整備された滝沢ダム提体の通路も含めて多数の視点場、駐車場施設がある。特に、ダム提体の上から見下ろすループ全体の形状、下流側の駐車場からダムに向かって見上げた時の橋脚を中心とした景観は、すばらしい。(猪熊)
曲がりくねった道を2時間ほど走ると美しい深い渓谷沿いの道になる。数件の民家が見えて、そろそろかなと思った時、山と山の間のかなり上の方にとそれは見えた。坂を登るにつれ形が変わり、徐々に大きくはなるが全体の形はつかめない。ちょっと驚いた。雄大な秩父山渓に対して一見無関係のように、繊細でしなやかな曲線を描き、フワッと揺らぐように架かっている。その姿はセクシーでさえあった。背後のどちらかというと少し無骨なダムとのバランスがそれをより引き立てているのかも知れない。
ループ橋と聞いてイメージしていたものとはかなり違ったものだった。両端が土工部になっており、山の傾斜に刺さるように支持されているため、ループを感じさせず、むしろ平面形状は不定形のようにさえ感じる。対照的に真っ直ぐ伸びた橋脚は単純な正方形断面であるが、陰影を作り出すためのテクスチャーが施され、適度なエージングが感じられる。全体としてシンプルなラーメン構造でありながら絶妙な造形バランスを与えている。
大自然に敬意を表しつつ、橋梁としての人工物として、控えめでありながらもきちんと風景として成立させる。これだけの規模の橋梁をつくるのに高い技術力が必要な事は容易に想像できるが、根本に心地よいセンスというものがとても大切であり。それがなるほど〜という必然性と心地よさを与えてくれる。これはデザインの力である。刻々と移り変わる風景に見とれているうちに辺りは闇に覆われた。(南雲)
この橋梁の最大の特徴は、コンクリートのエイジングをテーマとした造形デザインである。ひとつには、高さが30m~50mに及ぶ、幅6.5mの橋脚4基にほどこされたエッジをきかせた下見板風の表面の造形である。施工が丁寧に行われたと感じさせる。完成後12年を経ているが、橋脚表面の汚れも目立たず、すっきりとした外観を保っている。また、断面を「く」の字型とし、天端に水切りを考慮したアルミ製高欄を設置し、縦溝に雨水を集約している壁高欄にも配慮のあとがみられる。この壁高欄は、向きに応じて風化の度合いが異なってきている。
この雷電廿六木橋には、橋梁の完成後に整備された滝沢ダム提体の通路も含めて多数の視点場、駐車場施設がある。特に、ダム提体の上から見下ろすループ全体の形状、下流側の駐車場からダムに向かって見上げた時の橋脚を中心とした景観は、すばらしい。(猪熊)
現地に行く前は少し気が重かった。埼玉県の山奥、東京から車で3時間は掛かる。ダム湖の横のループ橋と聞いても余り期待を抱かなかった。加えて当日は天候も悪く雨模様である。
曲がりくねった道を2時間ほど走ると美しい深い渓谷沿いの道になる。数件の民家が見えて、そろそろかなと思った時、山と山の間のかなり上の方にとそれは見えた。坂を登るにつれ形が変わり、徐々に大きくはなるが全体の形はつかめない。ちょっと驚いた。雄大な秩父山渓に対して一見無関係のように、繊細でしなやかな曲線を描き、フワッと揺らぐように架かっている。その姿はセクシーでさえあった。背後のどちらかというと少し無骨なダムとのバランスがそれをより引き立てているのかも知れない。
ループ橋と聞いてイメージしていたものとはかなり違ったものだった。両端が土工部になっており、山の傾斜に刺さるように支持されているため、ループを感じさせず、むしろ平面形状は不定形のようにさえ感じる。対照的に真っ直ぐ伸びた橋脚は単純な正方形断面であるが、陰影を作り出すためのテクスチャーが施され、適度なエージングが感じられる。全体としてシンプルなラーメン構造でありながら絶妙な造形バランスを与えている。
大自然に敬意を表しつつ、橋梁としての人工物として、控えめでありながらもきちんと風景として成立させる。これだけの規模の橋梁をつくるのに高い技術力が必要な事は容易に想像できるが、根本に心地よいセンスというものがとても大切であり。それがなるほど〜という必然性と心地よさを与えてくれる。これはデザインの力である。刻々と移り変わる風景に見とれているうちに辺りは闇に覆われた。(南雲)