所在地:宮崎県日南市油津 地図
事業者:宮崎県油津港湾事務所, 日南市
氏名 |
所属(当時) |
役割 |
小野寺康 | 小野寺康都市設計事務所 | ・デザインコンセプト立案 ・上部工詳細設計検討 ・現場監理(デザイン監修) |
緒方稔泰 | 小野寺康都市設計事務所 | ・上部工詳細設計担当 ・現場監理デザイン監修 |
南雲勝志 | ナグモデザイン事務所 | ・照明、ストリートファニチュア設計 ・現場監理(デザイン監修) |
矢野和之 | (株)文化財保存計画協会 | ・歴史護岸修復設計 ・現場監理(文化財修復監修) |
佐々木政雄 | (株)アトリエ74建築都市計画研究所 | ・デザイン検討体制の確立 ・関係機関との調整 |
腰原幹雄 | 東京大学 生産技術研究所 | ・「夢見橋」構造設計 ・現場監理(「夢見橋」監修) |
岡村仁 | 空間工学研究所 | ・「夢見橋」構造設計 ・現場監理(「夢見橋」監修) |
萩生田秀之 | 空間工学研究所 | ・「夢見橋」構造設計 ・現場監理(「夢見橋」監修) |
熊田原正一 | (株)熊田原工務店 | ・「夢見橋」構造検討、試作品製作 ・「夢見橋」施工 |
萩原岳 | 社団法人 日本交通計画協会 | ・関係機関調整 ・街路デザイン設計マネジメント |
篠原修 | 東京大学大学院 教授 | ・景観委員会「日南市油津地区・歴史を生かしたまちづくり計画策定委員会」委員長 ・設計監修 |
宮崎県 油津港湾事務所 | ・事業主体 ・住民会議取りまとめ |
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日南市 | ・事業主体 ・景観委員会「日南市油津地区・歴史を生かしたまちづくり計画策定委員会」運営 ・住民会議取りまとめ ・「飫肥杉を核としたまちづくり推進プロジェクトチーム(飫肥杉課)」設立・運営 |
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宮崎県木材利用技術センター | ・「夢見橋」構造検討・設計協力 ・ボードデッキ設計協力 |
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南那珂森林組合 | ・「夢見橋」構造検討協力、試作品製作協力 ・「夢見橋」施工協力 ・ボードデッキ設計・施工協力 |
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堀川に屋根付き橋をかくっかい実行委員会 | ・堀川運河整備に関連したイベント企画・運営 ・利活用に関する検討・実施 |
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日南市まちづくり市民協議会 | ・堀川運河周辺の景観保全形成へ向けた市民への啓発活動 |
このプロジェクトは、よく知られているように、進められていた設計を一旦止めて再検討するという、宮崎県の“逆転のプロジェクト・デザイン”シリーズの一つである。当然ではあるが、既製の計画・設計にはない独自のデザインが実現されている。デザインの質は高く、デザインを生み出すプロセスも最優秀賞にふさわしい空間デザインであると思う。
プロジェクトが地域に与えたインパクト、さらには地域住民にとっての“場”を作りだした力(チカラ)、地域の住民や大工さんを巻き込んでまちづくり議論やデザインの方向性を描き出したということもこのプロジェクトの特徴である。飫肥杉による夢見橋はすでに住民が愛着を持つ居場所になっていて、いつも人が絶えない。これ自身が大きな成果であり、地域の活性化のきっかけでもある。
なお、デザイン自体には、ディテイルの巧みさと遊び心が混在している感もあり、これはこれで面白いものである。植栽についてはこれで十分なのかとも思ったが、将来計画の拡張部分に樹木が加わるようである。樹木の成長とともに場の感覚も変化する可能性があのので、その点に期待したい。
さて、最優秀賞に対していうこともないのだが、日南市にとって飫肥城下に加えて油津というまちづくりの拠点ができた。将来計画を含めると相当の規模の空間であり、日南市がこの空間をどう使いこなすかは、これからという部分が残されていると思う。(小出)
12m幅の運河に架かる木造の屋根付き橋(夢見橋)。屋根の延長はなんと45m。金物は釘1本使わない。地元の飫肥杉を使った橋だ。12mの橋だったら単に渡る橋。長大な屋根にしたことによって、人と川、人と人が出会う、たたずむ、眺める、新しい空間価値を生み出した。運河縁を歩いていて、視線が、足が夢見橋に向かう。
印象に残ったことは、構造物の形と配置、レベル処理である。夢ひろばは、運河沿いに煉瓦擁壁を立ち上げている。運河側から見ると壁だが、広場側からは緩やかな傾斜でつながった広場の一部である。広場から煉瓦の斜面を上がっていくと視界が広がる。道路から広場への動線は、シャープな形の煉瓦舗装からボードウォークに代わり、運河合流部で数十cmの段差を持ったまま突然消える。シーンが陸から運河水面に切り替わる。分節デザインが見事だ。運河プロムナードを対岸から眺めると、護岸天端に配置された土羽(芝生面)が構造物の硬さを和らげている。飫肥杉のボードウォーク、柵や照明灯のデザイン・色彩も良い。メリハリのきいた、開放感のある空間デザインである。
夢見橋のベンチに座る。川風が心地よい。屋根のトップライトからは木漏れ日のような柔らかい光が差し込む。子どもたちが、「こんにちは」と声をかけてくれる。温かい気持ちになる。(吉村)
プロジェクトが地域に与えたインパクト、さらには地域住民にとっての“場”を作りだした力(チカラ)、地域の住民や大工さんを巻き込んでまちづくり議論やデザインの方向性を描き出したということもこのプロジェクトの特徴である。飫肥杉による夢見橋はすでに住民が愛着を持つ居場所になっていて、いつも人が絶えない。これ自身が大きな成果であり、地域の活性化のきっかけでもある。
なお、デザイン自体には、ディテイルの巧みさと遊び心が混在している感もあり、これはこれで面白いものである。植栽についてはこれで十分なのかとも思ったが、将来計画の拡張部分に樹木が加わるようである。樹木の成長とともに場の感覚も変化する可能性があのので、その点に期待したい。
さて、最優秀賞に対していうこともないのだが、日南市にとって飫肥城下に加えて油津というまちづくりの拠点ができた。将来計画を含めると相当の規模の空間であり、日南市がこの空間をどう使いこなすかは、これからという部分が残されていると思う。(小出)
300年以上の歴史を持つ堀川運河。当初は、既設護岸をコンクリートで補強し石を貼るという安易な工事。設計をやり直し、伝統的石積工法で復元整備した。現地を見るとその違いは明白である。
12m幅の運河に架かる木造の屋根付き橋(夢見橋)。屋根の延長はなんと45m。金物は釘1本使わない。地元の飫肥杉を使った橋だ。12mの橋だったら単に渡る橋。長大な屋根にしたことによって、人と川、人と人が出会う、たたずむ、眺める、新しい空間価値を生み出した。運河縁を歩いていて、視線が、足が夢見橋に向かう。
印象に残ったことは、構造物の形と配置、レベル処理である。夢ひろばは、運河沿いに煉瓦擁壁を立ち上げている。運河側から見ると壁だが、広場側からは緩やかな傾斜でつながった広場の一部である。広場から煉瓦の斜面を上がっていくと視界が広がる。道路から広場への動線は、シャープな形の煉瓦舗装からボードウォークに代わり、運河合流部で数十cmの段差を持ったまま突然消える。シーンが陸から運河水面に切り替わる。分節デザインが見事だ。運河プロムナードを対岸から眺めると、護岸天端に配置された土羽(芝生面)が構造物の硬さを和らげている。飫肥杉のボードウォーク、柵や照明灯のデザイン・色彩も良い。メリハリのきいた、開放感のある空間デザインである。
夢見橋のベンチに座る。川風が心地よい。屋根のトップライトからは木漏れ日のような柔らかい光が差し込む。子どもたちが、「こんにちは」と声をかけてくれる。温かい気持ちになる。(吉村)