各務原市 各務野自然遺産の森

所在地:岐阜県各務原市各務字車洞 地図
事業者:各務原市 都市建設部 水と緑推進課

 

受賞者

氏名
所属(当時)
役割
石川幹子 慶應義塾大学 環境情報学部 教授 ・公園計画の立案・基本計画
・設計の立案
・実施設計および公園工事監理
森真 各務原市長 ・市の基本方針としての決定
・「水と緑の回廊計画」の重点プロジェクトとして採用
・市民協働の実施・事業化手法の検討と実施
山下英也 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 ・基本計画の立案
慶應義塾大学 石川幹子研究室 ・公園設計全体の設計方針提示
・設計監理
各務原市 都市建設部 水と緑推進課 ・プロジェクト推進体制の確立
・設計監理

 

講評
 今回の実見は天気の良い土曜日であった。多くの人が集まって楽しんでいた。適度に人のいる楽しげな公園風景は大変好しい風景となにっていた。ただ、イベント(マウンテンバイクの大会)の前日という特別の日にあたったのかも知れない。おそらく普段のウィークデイは、ほぼ人のいない場所であるのだろう。
 自然遺産の森は、昨年最優秀賞を受賞した「学びの森」と比較すると、田園地域の中の公園事業、ランドスケープの作品という性格が強いと思う。それでも、土木デザインの要素は巧みに扱われ、あまり表には顔を出していない。自然体験塾の石積みやひすい池をポイントにおいた水路のデザインなども目立たないが、この広場が中心の公園であり、配置も含めてうまく処理されている。日本の美の要素として重要と考えられている里山の風景を残すことは、各務原市だけの課題ではない。里山への取り組みとして評価に値するプロジェクトである。(小出)

 

  さほど面積が大きいわけでもなく、特徴のある施設が配置されているわけでもない。しかしそれでいて、実に心地よい風景が広がっているように感じるのは、既存の景観や環境に対してけして無理のない手の入れ方がなされているからであろう。敷地とその周辺をリスペクトすることから出発したデザインの所作をみてとることができるのである。特に、移築民家の配置とその前景となる土地のランドフォームは絶妙で、背景となっている里山の植生ともあいまって、あたかもはるか以前からこの地に存在していたかのようにすら感じられる。一方、背後の山間から続く流れでは、護岸のディテールについて、樹林の中、緩やかな芝生の斜面、溜池の水面近くなど、場所ごとに工夫がなされており、細やかな心配りを見てとることができる。ここでも、無理のない流れの線形や溜池の汀の処理によって、風景のおさまりがついている。訪れる人にとって、懐かしさと清々しさを感じさせてくれる小品である。(宮城)